
こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。
これから新しいお住まいを探されている方や、ご自宅のリフォームを検討されている方にとって、「建物の構造と防音性」は切っても切り離せない重要なテーマですよね。特に、不動産物件の案内図面で見かける「ALC造」という言葉。
不動産会社の担当者からは「コンクリートの一種なので、木造よりしっかりしていて防音性も高いですよ」と説明を受けることが多いかと思います。
しかし、ご自身でインターネット検索をしてみると、知恵袋やSNSでは「ALC造はやめとけ」「隣の音が丸聞こえでうるさい」「後悔した」といった、かなりネガティブな評判を目にして不安になられている方も多いのではないでしょうか。
「コンクリートって言われたのに、どうしてそんなに評判が悪いの?」「実際のところ、どれくらい音が聞こえるものなの?」
そんな疑問を持たれるのは当然のことです。実は、ALC造は「気泡コンクリート」という名前の通りコンクリートの仲間ではありますが、一般的にイメージされる鉄筋コンクリート造(RC造)とは、音の伝わり方や構造的な特性が異なります。
この記事では、普段から塗装や内装リフォームの現場で多くの建物の「中身」を見てきた私の視点から、ALC造の防音性に関する真実を包み隠さず解説します。
話し声や足音がどの程度聞こえるのかの目安や、構造上のメリット・デメリット、そして賃貸物件でも実践できる具体的な防音対策まで、プロの知識を分かりやすくお伝えします。
記事のポイント
- ALC造とRC造・木造・鉄骨造の決定的な構造と防音性能の違い
- ALC造で話し声、テレビ音、足音が実際にどのように聞こえるかの目安
- ネットで「やめとけ」と言われてしまう理由と構造上のデメリット
- 賃貸でも可能な隙間対策や防音DIYの効果的な方法
- 1. ALC造の防音性と構造の仕組み
- 1.1. RC造の違いや遮音性の真実
- 1.1.1. 構造差と防音の考え方
- 1.2. 気泡コンは話し声やピアノが聞こえるか
- 1.2.1. 話し声やテレビの音(空気伝搬音)
- 1.2.2. 楽器の音(ピアノなど)
- 1.3. 軽量鉄骨や木造とALCの聞こえ方比較
- 1.4. 旭化成など大手メーカーの壁の厚み
- 1.4.1. 【重要】落とし穴は「窓」や「隣との壁(界壁)」にあり
- 1.5. 知恵袋にあるALC造はやめとけの評判
- 1.5.1. よくある誤解と失望のパターン
- 2. ALC造賃貸の防音対策と注意点
- 2.1. ゴキブリや通気口の隙間というデメリット
- 2.1.1. 【対策】隙間をパテで埋める
- 2.2. 隣の音が気になるドアや窓への対策
- 2.2.1. 窓の防音:隙間テープとカーテンの合わせ技
- 2.2.2. 玄関ドアと換気口の「穴」を塞ぐ
- 2.3. 床の足音を防ぐマットやシートの効果
- 2.3.1. 足音対策の決定版「多層敷き」テクニック
- 2.3.2. 敷くべき場所と「防音スリッパ」の併用
- 2.4. 賃貸DIYやリフォームでの吸音材活用
- 2.4.1. 遮音と吸音のサンドイッチ構造
- 2.5. ALC造の防音性能を理解して快適に住む
- 2.5.1. 横浜市・川崎市・東京都で外壁塗装や防水工事をお考えの方へ
ALC造の防音性と構造の仕組み
まずは、ALC造という建物が一体どのような構造で成り立っているのか、そしてなぜ防音性についてこれほど議論になることが多いのか、その仕組みを紐解いていきましょう。
私たちが普段、塗装やリフォームで扱う現場の感覚を交えて、専門的な話を噛み砕いてお話しします。
RC造の違いや遮音性の真実
現場でお客様とお話ししていると、「ALC造=鉄筋コンクリート造(RC造)」と混同されている方が非常に多い印象を受けます。しかし、防音性を語る上でこの2つは区別して考える必要があります。
不動産の表記でいう「ALC造」は、一般に「鉄骨造(S造)などの躯体に、外壁などとしてALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)を用いた建物」を指します。
(参考:軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)(JIS A 5416:2025)|日本規格協会(プレビューPDF))
音を遮る性能、すなわち「遮音性」において、物理学的に重要な要素の一つは「物質の重さ(質量)」です。壁が重ければ重いほど、音のエネルギーを跳ね返す力が強くなります。
構造差と防音の考え方
RC造(鉄筋コンクリート造)
現場で組んだ型枠の中に、液状のコンクリートを流し込んで固めます。
そのため、柱・梁・壁・床が隙間なく一体化しており、密度が高く非常に重たい構造になります。この「重さ」と「隙間のなさ」が高い遮音性を生み出すベースとなります。
ALC造(鉄骨造+ALCパネル)
鉄骨で骨組みを作り、その外壁や床に「ALCパネル」を取り付けます。
ALCパネルは普通コンクリートの約1/4程度の軽さとされ、断熱性に優れています。一方で、遮音性は「壁の重さ」「気密性(隙間の少なさ)」「隣の部屋との壁(界壁)の仕様」などの影響を強く受けます。
つまり、「ALCだからRCと同じくらい静か」と捉えるのは注意が必要です。
「コンクリートだから防音もしっかりしているはず」という期待を持って入居すると、壁の仕様や構造的な隙間により、予想以上に音が聞こえてしまい「話が違う」となってしまうことがあるのです。
(参考:一般社団法人 ALC協会)

気泡コンは話し声やピアノが聞こえるか
では、具体的に「気泡コン(ALC)」の壁で、隣の部屋からの音はどの程度聞こえてくるのでしょうか。生活実感に近いレベルで解説します。
ALCパネルは内部に多数の気泡を含むため、断熱性に優れ、軽量のわりに音を伝えにくい性質があるとされています。そのため、屋外からの音などはある程度やわらぐことが期待できます。
しかし、実際の遮音性能はパネル単体だけでなく、目地やサッシ周りの気密性、壁の構成(下地・ボード・充填材)、界壁の仕様などの影響を大きく受けます。そのため、特に以下のような音に関しては注意が必要です。
話し声やテレビの音(空気伝搬音)
通常の話し声なら気にならないことも多いですが、大きな笑い声、怒鳴り声などは、壁の仕様によっては内容まで分かってしまうことがあります。
また、「外の音がどの程度やわらぐか」「隣室の話し声がどこまで聞こえるか」は物件ごとの差が出やすい、と理解しておくと安心です。
(参考:8.音環境に関すること(1)概説|国土交通省(住宅性能表示制度関連PDF))
楽器の音(ピアノなど)
これは慎重になる必要があります。一般的な賃貸住宅では、ピアノの演奏は隣室・上下階へ音や振動が伝わりやすく、とくに防音仕様が明示されていない場合は騒音トラブルになりやすいです。
ピアノ可の物件であっても、構造や界壁・床の仕様によって伝わり方は変わるため、管理規約や演奏時間帯のルール、実際の遮音仕様を事前に確認しておくことが大切です。

軽量鉄骨や木造とALCの聞こえ方比較
構造の違いによって「どの程度の音なら許容できるか」を判断する材料として、各構造の防音性の目安を表にまとめました。あくまで一般的な施工品質を前提とした目安ですが、参考にしてみてください。
| 構造種別 | 防音性評価 | 聞こえ方の特徴・注意点 |
|---|---|---|
| RC造・SRC造 (鉄筋コンクリート) | ◎ 高い | 壁や床の密度が高く、生活音は聞こえにくい傾向。ただし、上階の足音などは床スラブ厚や仕上げにより聞こえるケースもある。 |
| ALC造 (重量鉄骨+ALC) | △〜○ 普通 | 話し声はある程度軽減されるが、鉄骨を伝って足音やドアの開閉音などの「振動」が響きやすいことがある。 |
| 軽量鉄骨造 (プレハブ系) | △ 低め | 壁や床が薄い仕様の場合、話し声、テレビ音、足音ともに聞こえやすい。隣人の生活リズムが分かるレベルのことも。 |
| 木造 (アパート) | × 低い | 通気性を重視した構造のため隙間が多くなりがちで、隣人の生活音、話し声がクリアに聞こえることが多い。 |
この表からも分かるように、ALC造は構造体としては「鉄骨造」に分類されます。骨組み自体は頑丈な鉄骨(重量鉄骨)が使われることが多いですが、壁や床のパネル自体は後から取り付ける工法です。
RC造のようにコンクリートで建物全体がガッチリ一体化しているわけではないため、「壁は分厚いけれど、叩くとコンコンと軽い音がする」「骨組みの鉄骨を伝って、ドスンという振動音が遠くまで響く」という特徴があります。
これが、ALC造で足音トラブルが起きる原因の一つと言えます。

旭化成など大手メーカーの壁の厚み
ALCパネルといえば、旭化成建材の「ヘーベル」などが有名ですね。大手メーカーが手掛ける物件は、一定の品質基準が守られているため安心感があります。
実は外壁に使われるALCパネルには、50mm、75mm、100mm、125mm、150mmなど様々な規格があります。皆さんが検討される一般的な住宅やアパートでは、75mm〜100mm程度の厚みが使われることが多いです。
木造や軽量鉄骨造で使われる外壁材(サイディング等)は製品や工法により幅がありますが、だいたい14mm〜16mm程度が多いです。
これらと比べると、ALCパネル(75mm以上)には約5〜7倍近い厚みがあるため、単純な板の厚みで言えばALCの方が有利と言えるでしょう。
【重要】落とし穴は「窓」や「隣との壁(界壁)」にあり
ただし、外の騒音の感じ方は「外壁の厚み」だけで決まるものではありません。窓(ガラス・サッシ)、換気口、取り合い部の気密、室内側の仕上げなどの影響が大きい点に注意してください。
外壁が分厚いALCでも、開口部や隙間の条件によっては騒音が気になることがあります。
また、「室内の隣の部屋との境目にある壁(界壁)」についても確認が必要です。
ALC造の共同住宅では、界壁がALCパネルではなく、軽量鉄骨下地(LGS)+石膏ボード(複層)+充填材(グラスウール等)といった乾式の構成になっているケースもあります。
界壁の遮音は仕様差が大きいため、「石膏ボードだから弱い」と決めつけず、可能なら図面・重要事項説明・管理会社の資料などで界壁の仕様(ボード枚数、充填材の有無)を確認するのがおすすめです。
また、ALC住宅は構造やメンテナンスの状態によっても住み心地が左右されます。
ALCならではのメリット・デメリットや、後悔しないためのポイントについては、『ALC外壁の後悔はメンテ次第!現場担当が解説』の記事でも詳しく解説しています。
知恵袋にあるALC造はやめとけの評判
インターネットで物件情報を検索すると、サジェストキーワードや知恵袋で「ALC造 やめとけ」「ALC造 後悔」といった辛辣な言葉が出てくることがあります。これから住もうとしている方にとっては不安材料ですよね。
現場に携わる人間として、なぜこのような評判が立ってしまうのかを分析すると、最大の理由は「事前の期待値と現実のギャップ」にあると感じています。
よくある誤解と失望のパターン
- 不動産会社の担当者に「この物件は鉄骨ALC造です。気泡コンクリートを使っているので、木造とは違って防音性もバッチリですよ。ほぼマンション(RC)と同じです」と紹介される。
- 入居者は「コンクリート製なら、静かで快適な生活が送れるはずだ」と、分譲マンション並みの防音性を期待して契約する。
- 実際に住み始めると、上階の足音が意外と響いたり、静かな夜には隣の話し声が聞こえたりする。
- 「話が違う!コンクリートなのにうるさいじゃないか。ALCなんてやめとけ!」という口コミになる。
決してALC造が「悪い建物」というわけではありません。木造アパートに比べれば、耐火性、断熱性、耐久性は遥かに優れており、非常にコストパフォーマンスの良い構造です。
しかし、「RC造マンションとは別物である」という認識がないまま入居してしまうと、どうしても不満が出やすくなります。
特に、上階の足音が響きやすいというデメリットは、鉄骨造の構造上どうしても避けられない部分があるため、音に敏感な方は最上階を選ぶなどの自衛策が必要です。

ALC造賃貸の防音対策と注意点
ここまではALC造の構造的な特徴についてお話ししてきました。では、実際に「ALC造の物件に住むことになった」「今住んでいて音に悩んでいる」という場合、どうすれば快適に暮らせるのでしょうか。
ここからは、現場の知識を活かした、賃貸でも実践できる具体的な対策と注意点について詳しく解説していきます。
ゴキブリや通気口の隙間というデメリット
少しショッキングな話かもしれませんが、「ALC造のアパートはゴキブリが出やすい」という噂を聞いたことはありませんか?
実は「虫が出やすいかどうか」はALC造に限らず、立地(周辺環境)、室内の衛生状態、配管まわり・貫通部の隙間、換気経路など複数の要因で決まります。
ただ、ALCパネルは鉄骨のフレームに対してパネルを取り付ける工法を取るため、構造上、パネルの継ぎ目やサッシ周りの納まりに配慮が必要です。
配管まわりや通気・換気の開口部、目地や取り合い部に小さな隙間があると、虫の侵入経路になり得るのは事実なので、隙間対策をしておくと安心です。
特に注意してチェック・対策したいのが以下の箇所です。
- 通気口(ガラリ)やエアコン配管の周り
壁を貫通している部分の隙間処理が甘いと、そこから外の音や虫が侵入します。 - キッチンや洗面台の下の排水管周り
収納扉を開けて、床から出ている排水管の周りを見てみてください。床板とパイプの間に隙間が空いていて、床下のコンクリートが見えていませんか? ここは床下空間と繋がっており、虫の侵入経路かつ、下階の音が上がってくる原因になります。
【対策】隙間をパテで埋める
対策としては、配管周りの隙間を「配管用パテ」で埋めることが非常に有効です。ホームセンターやネット通販で数百円で売っているエアコン配管用の粘土のようなパテで十分です。
誰でも簡単にできますし、退去時は取り除けばよいので、賃貸でも問題ありません。これだけで、虫の侵入と音漏れの両方を軽減できる可能性があります。
ちなみに、もし持ち家などで外壁側のコーキング(シーリング)をご自身で補修しようと考えている場合は、防水の観点から注意が必要です。
DIYで可能な範囲や正しい手順については、以下の『外壁のコーキングをDIYで!増し打ちのやり方とできない条件』を参考にしてください。
もし外壁の目地のコーキングがボロボロになっていたり、大きなひび割れ(クラック)がある場合は、そこから雨水が侵入している恐れもあります。

隣の音が気になるドアや窓への対策
「隣の人の話し声が聞こえる」「テレビの音が漏れてくる」といった悩みがある場合、多くの方は「壁が薄いせいだ」と考えがちです。
しかし、現場でリフォームに携わる私の体感として、音が侵入してくる原因として影響が大きいのは、壁そのものよりも「窓」や「ドア」、換気口などの開口部であるケースが多いです。
一般的な引き違い窓や玄関ドアには、構造上どうしても「隙間」が存在します。音は空気の振動ですから、わずかでも針の穴のような隙間があれば、そこから水が漏れるように音も室内へ流れ込んでくるのです。
外壁材ごとの防音性の違いや、音がどこから入ってくるのかというメカニズムについてさらに深く知りたい方は、以下の『外壁タイル張りの防音効果は?費用や素材の遮音性を現場プロが解説』もあわせてご覧ください。
一方で、界壁の仕様や天井裏の納まり、配管まわりの隙間によっては、壁側から音が気になることもあるため、開口部とあわせて「隙間」全般をチェックし、塞ぐことが賃貸でもできる効果的な防音対策になります。
窓の防音:隙間テープとカーテンの合わせ技
窓からの音漏れを防ぐには、「気密性を高めること」と「音を吸い取ること」の2段構えで対策を行います。
【ステップ1】隙間テープで気密性を高める
窓サッシのレール部分や、窓と窓が重なる「召し合わせ」部分は、実は隙間だらけです。ここに市販の「隙間テープ」を貼ります。
- ゴム製テープ:密閉性が高く、音を遮断する力が強いです。窓枠と窓が当たる部分におすすめです。
- モヘア(起毛)タイプ:摩擦が少ないので、窓の開け閉めをするレール部分や、網戸との隙間に適しています。
【ステップ2】「重い」防音カーテンで蓋をする
次に、窓全体を覆うようにカーテンを設置します。ここで重要なのは「重さ」と「サイズ」です。
- 重量のある生地を選ぶ
裏面に樹脂コーティング加工がされた「完全遮光」タイプの防音カーテンを選んでください。ペラペラのレースカーテンでは音は防げません。生地が重ければ重いほど、音を遮る効果が高まります。 - サイズは大きめに
窓枠ピッタリではなく、窓枠よりも上下左右に大きくはみ出すサイズを選びましょう。カーテンレールの上も覆う「カバートップ」や、裾を引きずるくらいの長さがあれば、隙間からの音漏れを最小限に抑えられます。
玄関ドアと換気口の「穴」を塞ぐ
窓と同じくらい重要なのが、玄関ドアと給気口(換気口)です。ここは外と直接つながっている「穴」そのものですので、無防備だと音が素通りしてしまいます。
玄関ドアの郵便受け(ポスト口)
賃貸アパートによくある、ドアに直接ついている郵便受けは、防音上の最大の弱点です。外の共用廊下の足音や会話がここから入ってきます。
内側からマグネットシートや厚手のゴム板で塞いでしまうか(郵便物は外のポストに入れてもらう前提)、内側に箱を取り付けて吸音材を詰めるといった対策が有効です。
ドアのパッキン劣化
築年数が経った物件では、ドア枠のゴムパッキンが潰れて隙間風が入ることがあります。これでは音も入り放題です。100円ショップの隙間テープでも良いので、ドアを閉めた時に隙間がなくなるよう補強してみてください。
室内の給気口(ガラリ)
壁に付いている丸や四角の換気口です。ここから外の音が聞こえる場合は、換気口の内部に詰める専用の「防音スリーブ」や「防音フィルター」を挿入しましょう。
これだけで、外からのロードノイズなどが驚くほど静かになることがあります。(※完全に塞ぐと換気不足になるので、通気性のある防音材を選んでください)
これらの対策は、一つひとつは地味な作業ですが、全て実施することで部屋の気密性が高まり、体感できるレベルで静かになります。同時に冷暖房の効きも良くなるので、ぜひ試してみてください。

床の足音を防ぐマットやシートの効果
ALC造の賃貸住宅で最もトラブルに発展しやすく、かつ深刻になりやすいのが「床の騒音問題」です。
特に、子供が飛び跳ねる音や大人の歩く音などの「ドスン、ドスン」という鈍い音(重量床衝撃音)は、ALCパネルや鉄骨を伝って、想像以上に遠くまで響いてしまいます。
(参考:木造建築物の重量床衝撃音遮断性能向上技術に関する検討|建築研究所(講演会資料PDF))
先ほどもお話しした通り、ALC造は骨組みが鉄骨でつながっており、床や天井のボードが太鼓の皮のように振動してしまう「太鼓現象」が起きやすい構造です。
この振動を止めるには、床の上で物理的に衝撃を吸収し、建物自体に振動を伝えないようにする以外に方法はありません。
足音対策の決定版「多層敷き」テクニック
ホームセンターで売っている薄いジョイントマットや、普通のカーペットを1枚敷いただけでは、残念ながら「ドスン」という重い衝撃音を防ぐことは困難です。
現場のプロとしておすすめするのは、異なる素材を重ねて敷く「多層敷き(サンドイッチ工法)」です。
音を防ぐには、「振動を吸収する柔らかさ」と「音を跳ね返す重さ」の両方が必要です。これを組み合わせることで、劇的に防音性能を高めることができます。
【推奨】最強の防音床を作る組み合わせ
以下の順序で重ねて敷くのが最も効果的です。
1層目(最下層):高密度遮音マット
床に直接敷くベース部分です。「P防振マット」や「足音マット」といった商品名で知られる、ゴムや特殊フェルト製のマットを使います。ポイントは「重さ」と「振動吸収性」です。これにより、床への衝撃伝達をシャットアウトします。
2層目(表層):防音タイルカーペット
仕上げとして、その上に「静床ライト」などの高性能防音カーペットを敷き詰めます。これらは裏地に分厚いバッキング材(ガラス繊維やPVCなど)が付いており、一般的なカーペットとは比べ物にならないほどの重量と吸音性を持っています。
この「遮音マット+防音カーペット」の2枚重ねは、防音専門のリフォーム工事でも採用される手法の簡易版と言えるほど効果的です。
費用は少しかかりますが、騒音トラブルで引っ越しを余儀なくされるコストや精神的ストレスを考えれば、十分に投資する価値があります。
敷くべき場所と「防音スリッパ」の併用
理想は部屋全体に敷き詰めることですが、予算的に難しい場合は、「生活動線」と「音源となる場所」に絞って敷くだけでも効果があります。
- 廊下
夜遅くに帰宅した際、革靴やヒールで歩く音、急いでトイレに行く足音が響きやすい場所です。 - リビングの中央
子供が遊んだり、大人がくつろいで移動したりするメインスペースです。 - ソファやベッドの下
飛び降りたり立ち上がったりする際の衝撃を受け止めるために重要です。
また、マットと合わせて必ず実践していただきたいのが、「防音スリッパ」の着用です。底が柔らかいフェルトや厚手のクッション素材でできたスリッパを履くだけで、かかとが直接床に当たる衝撃を緩和できます。
ALC造においては、あなたの足音はあなたが思っている以上に下階へ響いています。これらはマナーであると同時に、ご自身が「騒音主」としてトラブルの加害者にならないための、最良の保険でもあります。
賃貸DIYやリフォームでの吸音材活用
壁からの話し声を少しでも軽減したい場合、賃貸でも原状回復可能な範囲でできるDIYとして、「遮音シート」と「吸音材」を組み合わせた壁の対策があります。
遮音と吸音のサンドイッチ構造
音を防ぐには、「音を跳ね返す(遮音)」と「音を吸収する(吸音)」の2つのアプローチが必要です。
- 遮音シート
まず、ゴムやアスファルト基材の重たいシートを壁側に設置します。これが音を跳ね返します。(壁紙に直接貼ると剥がせなくなるので、マスキングテープを下地に貼ってから強力両面テープを使うなどの工夫が必要です) - 吸音材
遮音シートの上から、フェルトボードやウレタンスポンジ状の「吸音材」を貼ります。これが室内で反響する音を吸収し、隣への透過を減らします。
最近では、この「遮音シート」と「吸音材」が一体になった、壁に貼るだけの防音パネルも市販されています。デザイン性の高いものも多いので、インテリアを兼ねて設置するのも良いでしょう。
ただし、現場のプロとして正直にお伝えすると、こうしたDIY対策は本格的なリフォーム工事(壁の内側にグラスウールを充填したり、石膏ボードを二重張りにしたりする工事)に比べると、効果は限定的です。
「隣の音が全く聞こえなくなる」という劇的な変化までは期待できませんが、「話し声の内容が分からなくなった」「音が少し遠くなった」という程度の効果は十分に期待できます。
ALC造の防音性能を理解して快適に住む
ここまで、ALC造の少し厳しい現実や対策についてお話ししてきましたが、最後に現場のプロとしてどうしてもお伝えしたいことがあります。それは、「ALC造=ダメな物件」と決めつけるのは非常にもったいないということです。
確かに防音性能に関しては、分厚いコンクリートで囲まれたRC造には敵いません。しかし、ALCパネルには、気泡構造による高い断熱性や、不燃材料としての耐火性といった素晴らしいメリットがあります。
また、よく「湿気を吸放出する(調湿性)」という性質が語られることもありますが、これは条件によっては壁体内で湿気が問題になるケースもあるため、外壁の防水・通気、室内側の防湿、結露対策まで含めてしっかり計画・施工されている物件であれば、非常に快適に過ごせます。
「RC造ほどの家賃は出せないけれど、木造アパートの寒さやセキュリティの不安は避けたい」そう考える方にとって、ALC造は家賃と性能のバランスが取れた、非常にコストパフォーマンスの良い選択肢になり得ます。
重要なのは、「鉄骨造特有の音の響きやすさがある」という事実を事前に正しく理解し、過度な期待を持たずに物件を選ぶことです。
これから物件を探す方のために、失敗しないための「内見時の最終チェックリスト」をまとめました。現場担当者の視点で、本当に見るべきポイントを厳選しています。
【保存版】ALC造物件の内見チェックリスト
- 壁の打音検査
隣室との壁(界壁)を軽くノックしてください。「ペチペチ」「コンコン」という軽い乾いた音がする場合は、石膏ボードだけの薄い壁の可能性が高いです。「ゴツゴツ」と中身が詰まった鈍い音がすれば、遮音性が期待できます。 - 窓サッシの性能
窓枠を見て「ペアガラス(複層ガラス)」になっているか、サッシに「T-2」などの防音等級シールが貼ってあるかを確認しましょう。ALCの厚みがあっても、窓がペラペラでは音は筒抜けです。 - 共用部の掲示板
エントランスやポスト付近の掲示板を見てください。「騒音にご注意ください」「足音に気をつけて」といった張り紙がある場合、その物件は既に騒音トラブルを抱えている可能性が高いです。 - 収納内部の点検
クローゼットや押入れの天袋を開けて、天井板がしっかりあるか確認してください。古い物件では天井裏が隣と繋がっている(界壁が天井まで届いていない)ケースがあり、これでは音は防げません。 - 周辺環境の音
低音のロードノイズ(トラックの走行音など)は、構造種別にかかわらず遮りにくく、外壁だけでなく窓や隙間の影響も受けやすい音です。幹線道路や線路の近くでは、窓を閉めた状態での聞こえ方(できれば時間帯を変えて)を確認しておくと安心です。
完璧な防音室のような静寂を求めるのであれば、やはり家賃を上げてでも最上階の角部屋やRC造を選ぶべきでしょう。しかし、「ある程度の生活音はお互い様」と割り切れるのであれば、ALC造は快適な住まいになります。
浮いた家賃分で、高品質な防音マットやおしゃれな吸音パネルを買って工夫するのも、賢い住まい方の一つです。








