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外壁のメンテナンスコラム

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長尺シートの剥がし方|DIYの手順と剥がし機や費用の相場

マンションの廊下やペランダに使われる「長尺シート」。古くなったシートの張り替えは、強力な接着剤との戦いであり、見た目以上に過酷な作業です。自分で挑戦する「DIY」と「専門業者」に依する方法、それぞれのポイントを比較します。

こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。

マンションの共用廊下やご自宅のベランダなどで、床材として長尺シートが使われているのを目にすることは多いと思います。

耐久性が高く滑りにくい優れた床材ですが、10年、15年と時間が経つにつれて、紫外線による変色や汚れ、あるいは端からのめくれが目立ってくるものです。

そろそろ張り替え時かなと考えたとき、最初に直面するのが「どうやって今のシートを剥がせばいいのか?」という壁ではないでしょうか。

DIYの動画などを見ると簡単に剥がしているように見えるかもしれませんが、実際には強力な接着剤でガチガチに固まっており、スクレーパーが全く入らないということも珍しくありません。

無理に剥がそうとしてコンクリートの下地をボコボコに傷つけてしまったり、途中で体力が尽きてしまったりするケースもよく耳にします。

また、業者に頼むとしても、剥がし作業だけでどれくらいの料金がかかるのか、処分費や新しいシートの施工費を含めた相場はいくらなのか、不安な点も多いはずです。

この記事では、現場で数々の改修工事に携わってきた私の経験をもとに、DIYで挑むための具体的な手順と道具の選び方、そしてプロに任せるべき判断基準について、包み隠さず詳しく解説していきます。

記事のポイント

  • DIYで長尺シートを剥がすための具体的な施工要領と必須道具
  • コンクリート床に残った頑固な接着剤をきれいに除去するプロの技
  • 専門業者に依頼した場合の剥がし単価や張り替え費用のリアルな相場
  • 古い床材に潜むアスベスト(石綿)の正しい知識と安全な対処法
目次

DIYで実践する長尺シートの剥がし方と道具

長尺シートの撤去作業は、一言で言えば「接着剤との戦い」です。

特に屋外の廊下や階段、ベランダなどに施工されているシートは、雨水や温度変化に耐えられるよう、耐水性の床用接着剤(例:ウレタン系・エポキシ系・アクリル系など)で強固に固定されていることが多く、経年で硬化していると手作業では歯が立ちにくくなります。

ここでは、ご家庭にある身近な道具を使った工夫から、効率を一気に上げる電動工具の使い方まで、現場の知恵を交えて詳しく解説します。

動画で解説!ドライヤーや熱湯で簡単な剥がし方

DIY系の動画やブログなどで「温めて剥がす」という方法を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

塩ビ系の床シートは熱を加えると柔らかくなりやすく、接着剤も種類や施工状況によっては温めることで一時的に剥がしやすくなる場合があります。

ただし、接着剤の種類によっては熱で十分に軟化しないこともあるため、「効く場合もある方法」として試すのが現実的です。

ドライヤーとヒートガンの活用

まずは、剥がし始めの「きっかけ」を作るために、シートの角や端部をドライヤーで温めてみてください。家庭用のヘアードライヤーでも最高温度設定で近づけて温めれば、ある程度の効果は期待できます。

しかし、廊下全体など広範囲を作業する場合、家庭用ドライヤーではパワー不足で時間がかかりますし、ドライヤー自体が過熱して故障する原因にもなります。

そこでおすすめなのが「ヒートガン(工業用ドライヤー)」です。

機種によっては数百度の熱風を出せるため、作業効率は上がります。ただし、長尺シート(塩ビ系)を一点に当て続けると焦げ・変質の原因になり、過熱時は刺激臭のあるガスが出ることもあります。

必ず換気し、熱風は動かしながら当て、焦げる温度まで上げないよう注意してください。

熱湯を使う際のアプローチ

ベランダや外部廊下など、水を使用しても問題ない場所であれば、熱湯をかけるのも有効な手段です。

やかんや電気ポットで沸かしたお湯を、剥がしたい部分に少しずつかけながら作業します。お湯の熱と水分が接着層に浸透し、ふやかすような効果で剥がれやすくなります。

熱湯使用時の注意点

コンクリート下地に大量の水分を含ませてしまうと、完全に乾燥するまで次の工程(新しいシートの貼り付け)に進めません。水分が残ったまま施工すると、後から膨れの原因になるため、工期を急ぐ場合には不向きな方法です。

スクレーパーなどの工具と、「DIYの道」「プロの道」という2つの選択肢を示したイラスト。手軽さと品質の対比。

100円ショップの工具で挑む基本の施工要領

「まずは低予算で試してみたい」という方のために、100円ショップやホームセンターの安価な道具で実践できる基本的な施工要領をご紹介します。

プロも実践している「短冊切り」というテクニックを使えば、非力な方でも少しずつ作業を進めることが可能です。

用意すべき最低限の道具

  • 大型カッターナイフ
    刃がしっかり固定できるL型以上のサイズを選びましょう。替刃も多めに用意してください。
  • スクレーパー(皮スキ)
    金属製のヘラです。グリップが握りやすく、刃先が鋭いものがベストです。
  • バール
    テコの原理で持ち上げるために使います。30cm~60cm程度の長さがあると便利です。
  • 厚手の軍手
    滑り止め付きで、刃物から手を守れるタイプが必須です。

「短冊切り」で剥離抵抗を減らす

一枚の大きなシートをそのまま剥がそうとすると、接着面積が広すぎて人の力では到底太刀打ちできません。そこで、以下の手順で作業を行います。

カッターで切り込みを入れる

シートに対して、20cm~30cm幅の短冊状(ストライプ状)になるよう、縦に切り込みを入れます。

この時、狙うのは「シートを確実に貫通させること」であり、下地のコンクリートまで深く傷つける必要はありません。刃は出しすぎず、数回に分けて切り込みを深くしていく方が安全で、下地の欠損も防げます。

端をめくる

切り込みを入れた短冊の端にスクレーパーやバールを打ち込み、きっかけを作ります。

引っ張りながら削ぐ

シートの端をペンチやクリップで掴んで引っ張り上げながら、シートと床の間にスクレーパーを滑り込ませ、接着剤を切るようにして剥がしていきます。

カッターの刃はこまめに折る

コンクリート床の上でカッターを使うと、すぐに刃先が丸くなり切れなくなります。切れ味の悪い刃物を使うと余計な力が入り、怪我のもとになります。

「少し切れなくなったな」と感じたらすぐに刃を折る習慣をつけましょう。

画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

コンクリート床に残った頑固な接着剤の除去方法

シートを剥がし終えて「やっと終わった!」と思いきや、本当の戦いはここからかもしれません。床を見ると、長尺シートの裏紙や、黄色や黒色の接着剤がコンクリートにべったりと残っているはずです。

この残留物をきれいに取り除かないと、新しいシートを貼っても凸凹になってしまったり、接着不良を起こしたりします。

スクレーパーと溶剤による手作業

残った接着剤が比較的薄い場合は、接着剤に対応した「接着剤リムーバー(剥離剤)」等で軟化させ、スクレーパーで削り取る方法があります(接着剤の種類によって効き方が大きく変わります)。

溶剤系を使う場合は引火性・刺激臭のリスクがあるため、換気火気厳禁は必須です。

さらに、通常の不織布マスクでは有機溶剤の蒸気を防げないため、使用するなら防毒マスク(有機ガス用吸収缶)など、用途に合う保護具を選んでください。

(参考:防毒マスクの規格(有機ガス用吸収缶など)|厚生労働省

ディスクグラインダー(サンダー)による研磨

手作業では歯が立たない厚みの接着剤や、広範囲の除去には電動工具が必須です。一般的には「ディスクグラインダー(サンダー)」を使用します。

  • カップワイヤーブラシ
    回転する金属ブラシで接着剤を掻き落とします。下地を比較的傷つけにくいですが、厚い接着剤には時間がかかります。
  • ダイヤモンドカップ(研削砥石)
    コンクリートごと表面を薄く削り取ります。接着剤除去能力は最強ですが、慣れていないと下地を削りすぎて凸凹にしてしまうリスクがあります。

DIYでのサンダー使用は要注意

サンダーを使って研磨すると大量の粉塵が舞い上がります。ご近所トラブルの原因になるだけでなく、呼吸器や目にも危険です。

保護メガネ防じんマスク耳栓(イヤーマフ)を基本装備にし、可能なら集塵機(掃除機)接続粉塵が広がらない養生を徹底してください。

なお、築年数が古く石綿の可能性がある場合は、自己判断で研磨・破砕せず、まず調査を優先してください。

シートを剥がした後に残る接着剤の汚れ。「本当の戦いはここから始まる」というキャッチコピーとスクレーパーのイラスト。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

マキタ等の床剥がし機を使い効率化する方法

「廊下全体を剥がしたい」「手作業では全く進まない」という場合は、プロが使う専用機材の導入を検討すべき段階です。

現場では、マキタやHIKOKI(ハイコーキ)といったメーカーの電動ハンマーに、専用のアタッチメントを取り付けて作業します。

電動スクレーパー(電動ケレン)の威力

電動ハンマーの先端に、幅広の刃(スクレーパー)を取り付けたものを「電動スクレーパー」「電動ケレン」と呼びます。この工具は、打撃・振動で刃先を効かせながら、強力に固着したシートや接着剤をコンクリートから剥離させます。

条件が合えば、手作業に比べて作業時間を大幅に短縮できることがあります(ただし、下地の状態や接着剤の種類によって効率は大きく変動します)。

レンタルの活用

これらの電動工具を全て購入すると数万円~十万円以上の出費になりますが、地域の建機レンタル会社(アクティオ、ニッケン、太陽建機など)でレンタルできる場合があります。

「電動ハンマー」や「床剥がし機」という名称で取り扱われており、1日数千円程度で借りられることもあります。DIYで広範囲に挑むなら、レンタルを利用することでコストを抑えつつ、身体への負担を大幅に減らすことができます。

ただし、電動工具は大きな騒音と振動が発生します。マンションなどの集合住宅で使用する場合は、近隣への事前挨拶や、作業時間帯(平日の日中など)への配慮が不可欠です。

特に集合住宅では、電動工具の音や振動は躯体(建物本体)を伝わって想像以上に響くものです。

ご近所トラブルを未然に防ぐために、どのような対策や心構えが必要かについては、以下の『工事中の「騒音・臭い」ストレスと近隣トラブルの避け方』の記事もぜひ参考にしてください。

マキタ製の電動ケレン機の写真。手作業と比較して効率的に剥がせることを示すプロ機材の紹介。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

古い床材のアスベストの見分け方とリスク

DIYで床の剥がし作業を行う前に、必ず確認していただきたいのが「アスベスト(石綿)」のリスクです。

かつては、Pタイル(塩ビタイル)や長尺シート、あるいはそれらを貼り付ける接着剤に、強度を高める目的でアスベストが使用されていました。

注意すべき年代と特徴

一般的に、2006年(平成18年)9月より前に施工された建物は、石綿(アスベスト)含有建材が使われている可能性をより慎重に見ておく必要があります。(参考:改修工事に対する石綿対策の規制が強化されています

また、規制強化には段階があり、時期によっては一部製品が猶予対象だった経緯もあるため、「2006年9月以降=絶対にゼロ」とは言い切れません。

床材などの石綿含有建材は、一般に「レベル3(非飛散性)」に分類されるものが多く、通常使用で直ちに飛散しやすい材料ではありません。しかし、撤去時に切断・破砕・研磨を行うと繊維が飛散するおそれがあります。

見分け方のポイント(目安)

  • 建物の竣工年・改修履歴(いつ貼られた床材か)を確認する
  • 床材の品番・製品名・メーカー名が分かる資料(図面、仕様書、納品書、端材の印字など)を探す
  • 不明な場合は「目視で決め打ちしない」(色・質感だけでは判断できません)

正確に知るためには専門機関による分析調査が必要になります。

もしご自宅の床材が古いもので、石綿含有の可能性が少しでもある場合は、無理に自分で剥がそうとせず、専門業者や調査機関に相談してください。

石綿に関する工事では、事前調査や作業基準などのルールが定められており、適切な飛散防止措置なしに切断・破砕・研磨を行うのは危険で、法令上のリスクにもつながります。

現在、解体・改修工事を行う際は、規模の大小にかかわらずアスベスト(石綿)の使用有無を事前に調査することが法律で義務付けられています。

特に、2023年10月以降は、「建築物石綿含有建材調査者」という国家資格を持つ専門家による調査が必須となっています。

もしご自宅の床材が古いもので、石綿含有の可能性が少しでもある場合は、無理に自分で剥がそうとせず、資格を持った専門業者や調査機関に相談してください。

適切な飛散防止措置なしに切断・破砕・研磨を行うのは危険であり、法令違反になるリスクもあります。

アスベストに関する正確な情報や法規制については、以下の厚生労働省のポータルサイトも参考にしてください。(参考:厚生労働省『石綿総合情報ポータルサイト』

「2006年9月以前の建物は要注意」というアスベスト含有建材に関する注意喚起。

プロに依頼した場合の長尺シートの剥がし方と費用

ここまでDIYでの方法をご紹介してきましたが、読んでいただいて「やはり自分には難しそうだ」「道具を揃えるのが大変そう」と感じた方も多いのではないでしょうか。

実際、長尺シートの撤去はリフォーム工事の中でもトップクラスの重労働です。無理をして腰を痛めたり、下地を傷めてしまったりするリスクを考えれば、プロに依頼するのは賢明な選択と言えます。

ここでは、業者に依頼した際の費用相場や、信頼できる業者の選び方について解説します。

1.既存シート撤去費、2.下地処理費、3.廃材処分費の3つの項目とそれぞれの相場単価を示した図。

専門業者の剥がし料金と単価の相場

業者に見積もりを依頼した際、費用は主に「撤去費」「処分費」「下地処理費」の3つで構成されます。業者によって「一式」でまとめる場合もありますが、内訳を知っておくと適正価格かどうか判断しやすくなります。

1. 撤去費(剥がし手間)

既存のシートを剥がすための作業費用です。撤去費(剥がし手間)の相場は地域や条件により異なりますが、一般的に1㎡あたり1,500円~3,000円程度が目安とされています。

実際の見積もりは、接着剤の強固さ・下地状況・搬出条件などで上振れしやすいため、条件により上下することを念頭に置いておきましょう。

2. 廃材処分費

剥がしたシートや接着剤のカスを「産業廃棄物」として法令に従い適正に処分するための費用です。業者が排出するゴミは、一般の家庭ごみとは処理ルートが全く異なります。

処分費や運搬費は近年高騰傾向にあり、一式で数万円、あるいは重量・体積(㎏/㎥)ベースで計算されます。

特に注意が必要なのは、古いシートや接着剤にアスベスト(石綿)が含まれていた場合です。(参考:環境省:石綿含有廃棄物等(規制の概要)

この場合、「石綿含有産業廃棄物」として特別な処理が必要となるため、通常の処分費よりも割高になる可能性があります。安く済ませることが難しい項目ですが、法令遵守のために不可欠な費用です。

3. 下地処理費(ケレン・補修)

剥がした後のコンクリートに残った糊を除去(ケレン)し、穴やひび割れを埋める費用です。

相場は1㎡あたり1,000円~2,500円程度。下地の状態によって作業量が大きく変わるため、現地調査後の見積もりで確定します。

項目単価の目安備考
既存シート撤去費1,500円~3,000円/㎡機械使用の有無や難易度による
下地処理(ケレン・補修)1,000円~2,500円/㎡接着剤残りや不陸の状態による
廃材処分費数万円~/一式産業廃棄物処理費用・運搬費含む
諸経費・養生費10,000円~30,000円/一式現場管理費、駐車場代など

長尺シート貼りや張替え費用を含めた総額

剥がし作業単体で依頼することは稀で、通常は新しいシートへの張り替えまでセットで行います。では、全て含めた工事費用の総額はどれくらいになるのでしょうか。

例えば、一般的なマンションの開放廊下やベランダ(約15㎡程度と仮定)を張り替える場合、総額は15万円~25万円前後がひとつの目安になります。これには、以下の全ての工程が含まれます。

注意点として、施工面積が小さい場合でも、職人の人件費や運搬費は「最低一式料金」として計算されることが多いため、単純な「単価 × 面積」よりも割高になる傾向があります。この金額には、以下の全ての工程が含まれます。

  1. 既存シートの撤去・処分
  2. 下地調整(ケレン、パテ処理、樹脂モルタル補修)
  3. 新規長尺シート材料費(防滑性ビニル床シートなど)
  4. 張り付け施工費(接着剤、溶接棒含む)
  5. 端末シーリング処理

階段の場合は少し特殊で、段鼻(角の部分)に滑り止めがついた階段専用シート(タキステップなど)を使用するため、1段あたり数千円~1万円程度の単価設定になることが一般的です。

15平米のベランダを想定した工事総額(15〜25万円)と、そこに含まれる全工程のチェックリスト。

張り替え時にボコボコを防ぐ下地処理の重要性

私が現場で職人たちに常に口を酸っぱくして言っている言葉があります。それは、「仕上げの美しさは、下地の精度で9割決まる」ということです。

DIYで張り替えに挑戦された方が最も後悔される失敗パターンの一つが、古いシートを剥がした後の「ガタガタの糊跡」や「コンクリートの欠け」をそのままにして、新しいシートを貼ってしまうことです。

「シートには厚みがあるから、多少の凸凹は隠せるだろう」と思われがちですが、それは大きな誤解です。長尺シートは製品にもよりますが、全厚が2.0mm前後のものもあれば、衝撃吸収タイプなどで2.8mm程度の製品もあります。

それでもシートは下地の凹凸を拾いやすく、下地が荒れていると仕上がりにそのまま出やすい点は変わりません(業界用語で「下地を拾う」と言います)。

下地処理を怠ると、施工直後はきれいに見えても、夕方や照明の光が斜めから当たった時に表面が波打って見えたり、凸部分だけが靴底で擦れて摩耗が早まったりします。

さらに最悪の場合、残留した古い接着剤が新しい接着剤の硬化を阻害し、施工後わずか数ヶ月でシートが浮き上がってくる「剥離事故」に繋がることもあります。

下地処理が不十分なままシートを貼り、表面がボコボコと波打ってしまっている失敗例の写真。「仕上げの美しさは下地で決まる」の文字。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

プロが実践する「三段階」の下地処理工程

私たち専門業者が行う下地処理は、単に掃除をするだけではありません。新しいシートが10年、15年と長持ちするように、以下の3つのステップを徹底的に行います。

1. 研磨・ケレン(完全除去)

まずは、剥がしきれずに残った古い接着剤や裏紙を、スクレーパーやディスクサンダーを使って完全に削り落とします。ここで手を抜いて古い糊を残すと、それが層となって段差の原因になります。

健全なコンクリートの肌が出るまで研磨することが、密着力を高める第一歩です。

2. 不陸調整(樹脂モルタル充填)

シートを剥がした際、一緒にコンクリートの一部が欠けてしまったり、元々の床に水たまりができるような「くぼみ(不陸)」があったりする場合は、補修を行います。

この時、一般的なセメントではなく、硬化が早く強度の高い「樹脂モルタル」を使用します。パテのように薄く塗りつけることができ、乾燥しても痩せにくい(収縮しにくい)ため、平滑な面を作るのに適しています。

3. カチオン系下地調整材の塗布

ここがプロとDIYの決定的な差が出るポイントです。研磨と補修が終わった後、仕上げとして「カチオン系下地調整材」を床全面に薄く塗り広げます。

カチオン材の役割とは?

カチオン材は、プラスイオン(カチオン)とマイナスイオンの電気的な結合力を利用して、下地コンクリートと強力に一体化するセメント系の下地材です。

微細な凹凸を埋めて表面をツルツルにする「レベリング効果」と、次に塗る接着剤との食いつきを良くする「強力なプライマー(接着剤の仲介役)効果」の2つの役割を果たします。

「乾燥」という見えない下地処理

物理的な凸凹を直すだけでなく、「水分の管理」も極めて重要な下地処理の一つです。

DIYでよくあるのが、剥がした後に水を流してブラシでゴシゴシ洗い、コンクリートがまだ湿っている状態でシートを貼ってしまうケースです。

コンクリート内部に残った水分は、蒸発しようとして水蒸気となり、貼ったばかりのシートを下から押し上げます。これが、施工後の表面が水ぶくれのように膨らんでボコボコになる主な原因です。

この「水分による膨れ」という現象は、実は床シートだけでなく外壁塗装などの防水・塗装工事全般で最も注意すべきトラブルの一つです。

なぜ水分が残っているとダメなのか、もし施工後に膨れてしまったらどう対処すべきなのか。

メカニズムは共通していますので、『乾燥不足などが原因で起きる「膨れ」のメカニズムと補修方法』を解説した記事もあわせて読んでおくと、失敗を防ぐための「乾燥期間」の重要性がより深く理解できるはずです。

私たちは水分計を使って含水率をチェックし、基準値を下回るまでしっかりと乾燥期間を設けます。

このように、下地処理には「削る」「埋める」「整える」「乾かす」という多くの手間と時間が凝縮されています。防水工事においても、この下地処理の精度がすべての基礎となります。

詳しくは『ベランダ防水工事の日数は?工法別の目安と流れを解説』の記事でも触れていますが、適切な下地処理時間を確保できるかどうかが、工事全体の品質を左右します。

見積もりの金額だけでなく、こうした見えない工程にどれだけ情熱を注いでいるかが、良い業者を見極めるポイントと言えるでしょう。

プロの施工要領から学ぶ失敗しない業者選び

最後に、業者選びの極意をお伝えします。見積書を見たとき、どうしても総額の安さだけに目が行きがちですが、長尺シートの工事において「安さ」だけで業者を決めるのは非常に危険です。

なぜなら、安価な業者の多くは、最も手間と時間がかかる「見えない部分(下地処理や端部処理)」を削ることでコストを下げているケースが多いからです。

私が現場担当として、「この業者は信頼できる」と判断するためのチェックポイントを4つに絞ってご紹介します。

1. 見積書の解像度が「信頼の証」

まず、見積書の項目を見てください。「長尺シート張り替え工事 一式 ◯◯万円」としか書かれていない見積もりが出てきたら、その時点で警戒レベルを上げてください。

「一式」という言葉は便利ですが、裏を返せば「何が含まれていて、何が含まれていないのか」が曖昧だということです。

優良な業者の見積書には、以下のような項目が明確に分かれて記載されています。

  • 既存シート撤去費:剥がす手間の費用
  • 下地調整費(ケレン・清掃):接着剤を除去し、下地を磨く費用
  • 下地補修費(樹脂モルタル等):穴や不陸を埋める費用
  • 新規シート貼り手間:新しいシートを貼る職人の技術料
  • シーリング打設費:端部の防水処理費用
  • 廃材処分費:ゴミを捨てる費用

特に「下地処理」に関する項目が具体的であればあるほど、その業者は仕上がりの品質にこだわっていると言えます。逆にここが曖昧だと、剥がした後のボコボコした下地の上にそのまま貼られてしまうリスクがあります。

2. 廃材処理に見る「法令遵守」の姿勢

剥がした長尺シートや接着剤のカスは、法律上「産業廃棄物」として扱われます。

これらは家庭ゴミのように簡単には捨てられず、許可を持った業者が適正に処理し、「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」を発行して管理することが義務付けられています。

悪質な業者の中には、処分費を浮かせるために現場の見えない場所に廃材を埋めたり、山林に不法投棄したりするケースも残念ながら存在します。

もし不法投棄が発覚した場合、工事を依頼した施主様(発注者)も責任を問われる可能性があります。

見積もりに「産業廃棄物処分費」が適正に計上されているか、そして契約時に「マニフェストの写しをもらえますか?」と聞いてみてください。即答で「もちろんです」と答える業者は、コンプライアンス意識が高く信頼できます。

(参考:産業廃棄物管理票・電子マニフェスト関連

3. 「端部」と「雨仕舞い」へのこだわりを質問する

業者の技術レベルを見抜くための「キラークエスチョン」があります。それは、「シートの端っこや、排水溝の周りはどうやって処理しますか?」と聞いてみることです。

長尺シートの剥がれは、9割以上が「端部(端末)」から始まります。また、端部の処理が甘いと、そこから雨水が侵入し、下の階への雨漏りの原因にもなります。

良い回答の例

「端部は専用の端末シール材でしっかり防水処理します」「排水ドレン周りは、シートを巻き込んでから専用の金物で固定します」といった具体的な施工方法を説明できる担当者は、施工後の耐久性まで考えてくれています。

4. 住人への配慮とコミュニケーション能力

マンションやアパートの改修工事では、居住者様への配慮が何よりも大切です。長尺シートの剥がし作業は、電動工具による騒音や振動が発生しますし、廊下が一時的に通行止めになることもあります。

  • 工事の何日前にお知らせを掲示してくれるか
  • 騒音が出る時間帯(例えば朝9時から夕方5時まで等)を明確に決めているか
  • 通行止め時の迂回路や、歩行可能になるまでの時間を案内できるか

こうした「工事中の生活への配慮」が見積もりの段階で伝わってくる業者は、現場管理能力が高く、トラブルなく工事を完了させてくれるでしょう。

見積書の詳細、廃材処分の透明性、端部処理への回答など、業者選定時に確認すべきポイントをまとめたイラスト。

まとめ:状況別に見る長尺シートの剥がし方

長尺シートの剥がし方は、現場の状況やご自身のスキルによって最適な選択肢が異なります。最後に、判断の目安をまとめました。

DIYにチャレンジしても良いケース

  • 施工面積が狭い(数㎡程度の玄関や小さなベランダ)
  • 端がめくれてきており、接着力が明らかに弱まっている
  • 騒音や粉塵が出ても問題ない環境である(近隣との距離がある)
  • 体力に自信があり、工具を揃える楽しみを感じられる
  • 多少の仕上がりの荒さ(下地の凹凸など)は許容できる

迷わずプロに依頼すべきケース

  • 広範囲である(マンションの廊下全体、広い屋上など)
  • 接着剤が強力で、手作業では全く剥がれない
  • 雨漏りの心配があり、防水処理も同時に行いたい
  • 築年数が古く、アスベスト含有の可能性がある
  • 廃材の処分方法に困る
  • 美しく平滑な仕上がりを求めている

長尺シートの剥がし作業は、リフォームの中でも特に根気と体力を要する工程です。DIYで達成感を味わうのも素晴らしいことですが、無理をして怪我をしたり、建物を傷めてしまっては本末転倒です。

まずは一部分だけ試してみて、「これは手ごわい」と感じたら、プロの力を借りることも検討してみてください。

「DIYにチャレンジしても良いケース」と「迷わずプロに依頼すべきケース」を比較したチェックリスト表。

横浜市・川崎市・東京都で外壁塗装や防水工事をお考えの方へ

自分で剥がすのが難しい…そう感じたら、無理せずご相談ください

最後までお読みいただきありがとうございます。 記事の中でもお伝えしましたが、長尺シートの剥がし作業は、見た目以上に過酷で、建物の寿命を左右する繊細な作業でもあります。

  • 「道具を揃えるのが大変そう」
  • 「剥がしてみたけれど、下のコンクリートが凸凹になってしまった」
  • 「アスベストが含まれているか不安で手が止まった」

もし、少しでもこのような不安を感じたり、作業の途中で行き詰まってしまったりした際は、私たちステップペイントにお声がけください。

私たちは「ただ剥がして貼る」だけではなく、「10年後も美しい床」を維持するための下地処理に何よりもこだわっています。

無理な作業で体を痛めたり、建物を傷つけてしまったりする前に。まずはプロの判断を聞いてみるだけでも、解決の糸口が見つかるはずです。

現場を知り尽くしたスタッフが、誠心誠意対応させていただきます。


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