
こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。
自宅の外壁塗装工事が始まると、普段は見上げることしかできない高い場所まで足場が組まれ、つい登って確認してみたくなるお気持ち、とてもよく分かります。
一生懸命働いて建てた大切なマイホームですし、塗装工事の進捗や、普段は見えない屋根や2階部分の仕上がりを自分の目で直接確かめたいと思うのは、施主様として当然の心理かもしれません。
しかし、プロの視点から正直に申し上げますと、一般の方が軽い気持ちで足場に登ることは、想像以上に大きな危険を伴います。
安易に立ち入ることで取り返しのつかない事故につながるリスクがあるだけでなく、法的な責任問題に発展する可能性さえあるのです。
この記事では、なぜ勝手に登ってはいけないのかという理由から、どうしてもご自身の目で確認したい場合に守るべき手順やルールについて、現場の実情を交えて具体的にお話しします。
記事のポイント
- 一般の方が足場に登ることで発生する具体的な危険性と法的なリスク
- プロの職人が行う安全管理と一般の方の感覚との決定的な違い
- 施主様が安全に現場確認を行うための正しい手順と事前の準備
- 足場利用時に特に注意すべき身体の動かし方や防犯上のポイント
- 1. 外壁塗装で足場に登る危険性と法的ルール
- 1.1. 一般人が勝手に登るべきでない理由
- 1.2. なぜ揺れる?強度と構造の真実
- 1.2.1. あえて「遊び」を持たせる理由
- 1.2.2. プロと一般の方の感覚差が生む危険
- 1.3. 法律上の義務と作業主任者の重要な役割
- 1.3.1. 作業主任者が担う重い責任と役割
- 1.4. 高さ4mや6mの恐怖と落下防止の実情
- 1.4.1. 高さの目安
- 1.5. 労災保険の適用外となる事故の基準
- 1.6. 足場作業に必要な資格と職人の技術
- 1.6.1. プロの職人が持つ「3つの身体技術」
- 1.6.2. DIY経験者の方へ
- 1.7. 安全な幅や距離の感覚に潜む危険な罠
- 1.7.1. 特に注意が必要な「隙間」
- 1.8. 適切な服装や靴とヘルメットの重要性
- 2. 外壁塗装の足場へ登る際の手順と注意点
- 2.1. 業者に依頼して確認する方法と良い時期
- 2.1.1. 確認に適したタイミング
- 2.2. 昇降に必要な道具や工具の準備リスト
- 2.3. 安全に下る・降りる際の手順とルール
- 2.4. 体の向きや位置取りのコツと事前の練習
- 2.5. 階段利用時は90度を意識する転落対策
- 2.6. 足場の音で気づく防犯上の危険な時間
- 2.7. 外壁塗装の足場に登るリスクのまとめ
- 2.7.1. 足場に登ることで発生する3つの重大リスク
- 2.7.2. 施主様が足場に上がる際の3つの絶対条件
外壁塗装で足場に登る危険性と法的ルール
私たち現場の人間にとって、足場は仕事場であり、安全を守るための命綱でもあります。しかし、普段高所作業に慣れていない一般の方にとっては、そこは一歩間違えれば命に関わる危険な場所です。
まずは、なぜ「勝手に登ってはいけない」と言われるのか、その理由をプロの視点と法律の観点から詳しく解説します。
一般人が勝手に登るべきでない理由
結論から申し上げますと、一般の方が許可なく足場に登ることは絶対に避けてください。最大の理由は、シンプルですが「命に関わる転落事故のリスク」が極めて高いからです。
工事現場の足場は、あくまで「作業効率」と「プロの職人の安全」を両立させるために設計されています。
公園の遊具や観光地の展望台のように、老若男女誰でも安全に歩けるユニバーサルデザインで作られているわけではありません。
手すりが低い箇所や、頭をぶつけやすい梁(はり)、跨がないと通れない支柱、配管を避けるための段差など、歩行を妨げる障害物が無数にあります。
また、万が一事故が起きた場合、その責任の所在が非常に複雑になります。
もし施主様が勝手に登って怪我をされた場合、施工業者に安全管理責任が問われることもありますが、同時に「立ち入り禁止の場所に無断で入った」として、施主様自身の過失も大きく問われます。
厚生労働省が公表している労働災害の統計でも、「墜落・転落」は死亡災害の事故の型として件数が最も多く、建設業においては毎年100名以上もの尊い命が、高所からの転落によって失われています。
これは決して他人事ではなく、プロの職人でさえも一瞬の油断が命取りになるという現実を示しています。
せっかくのリフォーム工事が、悲しい事故や争いの種になってしまっては本末転倒です。
(参考:厚生労働省『令和6年の労働災害発生状況を公表』)

なぜ揺れる?強度と構造の真実
「頑丈そうに見えたのに、登ってみたらグラグラして足がすくんだ」――これは、初めて足場に登った施主様が口を揃えておっしゃる感想です。
施工不良や手抜き工事を疑う方もいらっしゃいますが、実はこの「揺れ」は欠陥ではなく、足場の構造上あえて持たせている「機能」なのです。
現在の戸建て住宅塗装で主流となっている「くさび緊結式足場(ビケ足場)」は、支柱のポケットに手すりや踏板の「くさび(爪)」をハンマーで打ち込んで固定します。
非常に高い強度を誇りますが、建物のように地面から屋根までコンクリートや柱で一体化しているわけではありません。
あえて「遊び」を持たせる理由
足場は、金属の部材を無数に組み合わせて作られた「仮設の塔」です。
もしこれを溶接のようにガチガチに固めてしまうと、強風や地震のエネルギーを逃がす場所がなくなり、一点に過度な負荷がかかって部材が破断(折れる)したり、足場全体が倒壊したりするリスクが高まります。
そのため、接合部にあえてわずかな「遊び(隙間や可動域)」を持たせることで、柳の木のように力を柔軟に受け流す「柔構造(じゅうこうぞう)」に近い設計になっているのです。
また、足場の揺れを制御するために最も重要なのが、建物の外壁と足場を連結する「壁つなぎ」という部材です。
これが適切に設置されていれば倒壊することはありませんが、あくまで転倒防止のためのアンカーであり、微細な振動まで完全に止めるものではありません。
さらに、塗装工事特有の事情として、足場の外周には飛散防止用の「メッシュシート」が張られます。
これが船の帆のように風を受けてしまうため、無風に近い日であっても、上層階に行けば行くほど、常にゆらゆらとした独特の横揺れが発生しやすくなります。
プロと一般の方の感覚差が生む危険
私たち現場の人間は、この「揺れ」を身体で理解し、無意識に膝や足首を使ってバランスを補正しながら作業を行います。しかし、慣れていない方の脳は、地面と同じような「不動の安定」を予測しています。
そこへ予期せぬ浮遊感や横揺れが加わると、三半規管が混乱し、乗り物酔いのような状態やパニックを引き起こします。
その結果、手すりを強く握りしめて動けなくなったり、咄嗟の揺れに対応できず転倒したりする事故につながるのです。
法律上の義務と作業主任者の重要な役割
建設現場における足場は、単に「登るための台」ではありません。そこは労働安全衛生法という法律によって、極めて厳格な管理と規制が敷かれている「法的な管理区域」です。
特に、吊り足場や高さ5メートル以上の構造を持つ足場の組立て、解体、または変更の作業を行う際には、技能講習を修了した国家資格者である「足場の組立て等作業主任者」を選任し、その者の指揮下で作業を行うことが義務付けられています(労働安全衛生法第14条、同施行令第6条第15号)。
作業主任者が担う重い責任と役割
作業主任者は、現場で以下のような重要な職務を遂行しています(労働安全衛生規則第566条)。
- 材料の欠点の有無を点検する
腐食や変形がある部材を排除します。 - 器具・工具の機能を点検する
安全帯や工具が正常かを確認します。 - 作業の方法と順序を決定し、指揮する
安全な手順で作業が進むよう指示を出します。 - 安全帯の使用状況を監視する
作業員が適切に命綱を使用しているかを常時チェックします。
さらに、足場に関する労働安全衛生規則の改正(令和5年厚生労働省令第22号)が令和5年10月1日に施行され、足場の点検ルールが一層厳格化されました。
この改正により、事業者が足場の点検を行う際には、あらかじめ点検者を指名すること、そして足場の組立て、一部解体、変更等の後の点検後に、点検者の氏名を記録・保存することが義務付けられています。
これは、「誰が責任を持って安全を確認したか」を明確にするためです。
(参考:足場からの墜落防止対策を強化します。~令和5年10月1日から順次施行~|厚生労働省)
このように、プロの現場では「いつ、誰が、どのように安全を確認したか」が法律で細かく定められ、管理されています。
そこに、安全教育を受けていない一般の方が無断で立ち入るということは、この精密な安全管理の指揮系統を根底から乱す行為に他なりません。
もし無断で立ち入った施主様が事故に遭われた場合、私たち事業者は「安全配慮義務違反」や「管理責任」を問われる可能性があります。
だからこそ、現場監督や作業主任者は、心を鬼にして「立ち入り禁止」を徹底しているのです。単なる意地悪や隠し事ではなく、皆様を守るための法的義務であることをご理解いただければ幸いです。

高さ4mや6mの恐怖と落下防止の実情
数字で見ると「4m」や「6m」は大したことないように思えるかもしれませんが、実際にその高さに立つと、視覚的な恐怖は想像を絶するものがあります。
高さの目安
一般的な2階建て住宅の場合、2階の窓付近で約3〜4m、屋根の軒先付近ではおよそ6m前後の高さになります。これはビルの2階〜3階相当の高さに匹敵します。
人間は高さ2mを超えると、転落した際に重篤な怪我や死亡のリスクが急激に跳ね上がります。
そのため、労働安全衛生法および関係法令では、高さ2m以上の場所で作業を行う場合には、作業床を設けること、もし作業床を設けることが困難な場合は防網(ネット)を張り、労働者に墜落制止用器具(旧称:安全帯)を使用させる等の墜落防止措置を講じることが義務付けられています。
しかし、見学に来られる施主様は、当然ながら専用のフルハーネス型安全帯などを持っていませんし、それをどこにどう引っ掛けるべきかという知識もありません。
つまり、プロなら命綱をつけて慎重に作業する危険な場所に、命綱なしの生身で立つことになります。これがどれほど無防備で危険な状態か、お分かりいただけるかと思います。
労災保険の適用外となる事故の基準
少し現実的なお金と保険の話をさせていただきます。
私たち施工業者の職人は、万が一現場で怪我をした場合、国の制度である労災保険(労働者災害補償保険)によって治療費や休業補償がカバーされます。これは業務中の事故だからです。
しかし、施主様やそのご家族は「労働者」ではないため、原則として労災保険は適用されません。
また、業者が加入している「工事賠償責任保険」であっても、施主様が無断で立ち入り禁止区域に入った場合の事故は、施主様側の「過失」が極めて大きいと判断されます。
その結果、保険金が大幅に減額されたり(過失相殺)、最悪の場合は免責事項として補償の対象外となったりするケースも少なくありません。
つまり、「自分の家だから大丈夫」と思って登った結果、怪我をして治療費の多くを自己負担せざるを得なくなったり、事故原因の調査や現場検証のために工事が一時中断したりする……
という最悪の事態になりかねません。これら金銭的、時間的なリスクも非常に大きいのです。

足場作業に必要な資格と職人の技術
現場で見かける職人たちが、まるで平地を歩くかのように足場の上をスイスイと移動している姿を見ると、「自分も簡単に歩けるのではないか」と錯覚してしまうかもしれません。
しかし、あの軽快な動きは、長年の経験によって培われた高度な身体能力と、法律に基づいた専門教育の賜物なのです。
まず、資格や教育の面からお話しします。
足場を組む鳶(とび)職人には「足場の組立て等作業主任者」という国家資格が必要ですが、その足場を使って作業をする塗装職人にも、実は専門の講習が義務付けられている作業があります。
特に2019年(平成31年)2月1日に施行された法改正により、高さ2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス型墜落制止用器具を用いて行う作業に係る業務に労働者を従事させる場合には、「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」の受講が事業者に義務付けられました。
実際の現場でも、高所でフルハーネスを使用する職人の多くが、この特別教育を修了したうえで作業にあたっています。
(参考:厚生労働省『安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!』『墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン』)
つまり、職人たちは単に慣れているだけでなく、万が一の落下リスクに備えた正しい装備の知識と訓練を受けて現場に出ているのです。
プロの職人が持つ「3つの身体技術」
- 足裏のセンサー機能
多くの職人が底の薄い「足袋靴(たびぐつ)」を履くのは、パイプの湾曲や滑りやすい箇所を足の裏で敏感に察知し、瞬時に重心を調整するためです。厚底のスニーカーではこの微調整ができません。 - 体幹による重心制御
揺れる足場の上で、塗料が入った一斗缶(約15kg以上)を片手に持ちながら、もう片方の手で繊細なハケ操作を行うには、強靭な体幹とバランス感覚が不可欠です。 - 周辺視野の広さ
手元の塗装面に集中しながらも、無意識レベルで頭上の障害物や足元の段差を把握し、接触事故を回避しています。
このように、職人は「移動する」ことと「作業する」ことを高度なレベルで同時に行っています。これは一朝一夕で身につくものではありません。
DIY経験者の方へ
「趣味のDIYで屋根に登ったことがあるから大丈夫」と過信するのは非常に危険です。固定された屋根と違い、足場は「揺れる」構造物であり、さらに塗料の飛散防止ネットによる閉塞感や視界の悪さが加わります。
プロのフィールドに対する敬意を持ち、「自分にはその装備と身体感覚がない」という認識を持つことが、ご自身の身を守るための安全への第一歩です。

安全な幅や距離の感覚に潜む危険な罠
足場の作業床(アンチ)の幅は、一般的に40cm〜50cm程度しかありません。
これは大人の男性の肩幅よりも狭い通路です。さらに、建物の形状に合わせて入り組んでいるため、外壁との距離(隙間)が大きく空いている箇所もどうしても存在します。
特に注意が必要な「隙間」
塗装作業をしやすくするために、あえて壁から少し離して足場を組むことがあります。職人はこの隙間を意識して動きますが、慣れていない方は足を踏み外してしまう「踏み抜き」のリスクが非常に高いのです。
また、足場の外側には飛散防止用のメッシュシートが張られているため、外の景色が見えにくく、平衡感覚や距離感が掴みづらくなるのも転倒の原因となります。
塗装工事中は、洗浄作業などで足場の床が濡れて滑りやすくなっていることもあります。特に高圧洗浄の日は足元が非常に悪くなります。
高圧洗浄の工程や注意点については、『外壁塗装工事で行う高圧洗浄作業の所用時間や当日の注意点を解説』の記事も参考にしてください。

適切な服装や靴とヘルメットの重要性
もし、業者の許可を得て登る場合でも、サンダルやスリッパ、スカートといった軽装は論外です。
足場には、パイプを固定するクランプ(金具)の突起や、結束に使われる番線(針金)の切れ端など、衣服が引っかかりやすい危険な突起物がたくさんあります。
職人は、引っかかりにくい作業着(ニッカポッカの裾が絞ってあるのも、足元の障害物に引っかからないためです)、滑りにくいソールを持った安全靴、そして頭を守るヘルメットを必ず着用しています。
「ちょっと見るだけだから」とノーヘル(ヘルメットなし)で登るのは、極めて危険な行為です。万が一転倒した際、硬い単管パイプに頭を強打すれば、低い場所であっても致命傷になりかねません。
外壁塗装の足場へ登る際の手順と注意点
ここまで危険性を強調してきましたが、それでも「どうしても仕上がりを確認したい」「一生に一度の記念に見ておきたい」という施主様の想いも、私は大切にしたいと考えています。
基本的にはNGですが、施工業者との信頼関係のもと、安全対策を万全にした上での「同行確認」であれば可能なケースもあります。ここからは、その際の正しい手順と注意点をお伝えします。
業者に依頼して確認する方法と良い時期
まず大前提として、必ず事前に業者(現場監督や親方)に相談し、許可を得てください。
その際、「登ってもいいですか?」と聞くのではなく、「安全なタイミングで、一緒に登って仕上がりを確認させてもらえませんか?」と依頼するのがスムーズです。確認に適した時期は、工程によって異なります。
確認に適したタイミング
- 足場設置直後(非推奨)
まだメッシュシートが張られていない場合もあり、高さを一番感じやすく危険です。また、何も塗装されていないため確認の意味も薄いです。 - 中間検査(中塗り後など)
色味の確認などで行う場合がありますが、塗料が乾いていない場所もあるため注意が必要です。 - 完了検査(足場解体直前)
最も一般的なタイミングです。全ての塗装が終わり、養生も撤去された状態で、塗り残しやキズがないかを最終確認します。
作業中の職人の邪魔にならないよう、休憩時間(10時、15時、昼)や作業終了後のまだ明るい時間帯などを指定されることが多いでしょう。外壁塗装全体の流れを把握しておくと、相談するタイミングも掴みやすくなります。
外壁塗装工事の流れについては、『外壁塗装工事の期間や流れについて(よくある質問)』のページも参考にして下さい。
昇降に必要な道具や工具の準備リスト
施主様が足場に登る際、基本的に「手ぶら」が鉄則です。
カメラやスマホで撮影したい気持ちは分かりますが、片手が塞がるのはバランスを崩したときに対処できず、非常に危険です。撮影したい場合は必ずストラップ等を利用してください。
| 必須アイテム | 説明・理由 |
|---|---|
| ヘルメット | 業者から必ず借りてください。着用なしでの昇降は絶対に認められません。 |
| 滑りにくい靴 | 履き慣れたスニーカーや運動靴。底が平らすぎるものや、革靴、サンダルは厳禁です。 |
| 軍手 | 鉄パイプは冷たく、汚れやサビ、ささくれがある場合も。滑り止め付き(ゴム引き)がベストです。 |
| 汚れてもいい服 | 塗料やホコリがつきます。長袖長ズボンで肌の露出を抑え、怪我を防止しましょう。 |
| スマホ用ストラップ | 撮影したい場合は、首から下げられるストラップを使用し、落下防止と両手の自由を確保してください。 |

安全に下る・降りる際の手順とルール
実は、足場で一番事故が起きやすいのは「登る時」よりも「降りる時」です。
登りは体力を使いますが、視界が上に向いているため足元の確認がおろそかになりにくいです。しかし、下りは重力が加わる上、自分の体で足元の視界が遮られやすくなります。
最大のルールは「梯子(はしご)や階段は、必ず後ろ向きで降りる」ことです。建物や足場に対してお腹を向け、一歩一歩手と足で確認しながら降りてください。
前向き(進行方向向き)で降りると、踵(かかと)が階段のへりに引っかかったり、滑った時に支えがきかずそのまま前方に転落したりするリスクがあります。絶対に慌てず、一段ずつ確実に足を乗せてください。
体の向きや位置取りのコツと事前の練習
足場の上を歩くときは、常に「3点支持」を意識してください。これは、右足・左足・右手・左手の4点のうち、常に3点はどこか(手すりや床)に固定し、動かすのは1点だけにするという、登山やクライミングの基本技術です。
また、体の向きは基本的に壁側に向けるのが安全です。背中側に何があるか分からない状態(足場の外側を背にする状態)は恐怖心を煽り、バランスを崩しやすいので避けましょう。
いきなり高いところに行くのではなく、まずは1階部分の低い足場で、手すりの掴み具合や床の感触を確かめる「練習」をさせてもらうのも一つの手です。
職人もいきなりスタスタ歩こうとする施主様より、慎重に確認する施主様の方が安心して案内できます。
階段利用時は90度を意識する転落対策
足場の昇降階段は、一般的な家の階段よりも急勾配で、踏み板の奥行きも狭いです。ここで転落事故を防ぐために重要なのが「90度(直角)」の意識です。
階段の踊り場やコーナー部分を曲がる際、斜めにショートカットしようとすると、足を踏み外して転落する危険があります。
面倒でも、角の突き当たりまでしっかり進んでから、直角に(90度)体の向きを変えて、次のステップに進むようにしてください。
特に降りる時は、この直角動作を確実に行うことが、踏み外し防止の鍵となります。「大回りする」くらいの感覚でちょうど良いです。
足場の音で気づく防犯上の危険な時間
少し視点を変えて、防犯のお話もさせてください。足場は作業員だけでなく、泥棒にとっても格好の侵入経路になり得ます。「足場に登る」という行為は、不審者にとっても容易なのです。
足場は鉄製なので、人が歩くと「カツーン、カツーン」という独特の金属音が響きます。私たち職人がいないはずの工事が終わった夜間や休日にこの音が聞こえたら、すぐに警戒してください。
施主様ご自身も、夜間に「ちょっと確認だけ」とこっそり登るのは絶対にやめてください。近隣の方に通報されたり、防犯センサーが作動したりして大騒ぎになる可能性があります。
また、足場の出入り口には鍵付きのゲートを設置したり、センサーライトをつけたりする対策も有効です。防犯面での不安がある場合は、遠慮なく私たちにご相談ください。

外壁塗装の足場に登るリスクのまとめ
ここまで、外壁塗装の現場における足場の危険性や、安易に登ることの法的リスクについて、現場担当としての本音を交えてお話しさせていただきました。
改めて強調させていただきますが、一般の方が足場に登ることは、ご自身の命を危険に晒すだけでなく、施工業者やご家族をも巻き込む重大なトラブルに発展する可能性があります。
基本的には「登らない」ことが、工事を無事に成功させるための最善の選択です。
足場に登ることで発生する3つの重大リスク
- 身体的リスク
転落による死亡や重傷、後遺症が残る怪我の危険性。 - 法的・金銭的リスク
労災保険や損害保険の適用外となり、多額の治療費や賠償責任が発生する可能性。 - 施工品質リスク
不慣れな歩行による塗装面の汚損や、職人の集中力を削ぐことによる作業遅延。
しかし、どうしても「自分の目で確認しないと納得できない」「高いお金を払う工事だからこそ、手抜きがないか心配だ」というお気持ちも痛いほど分かります。
もし、やむを得ない事情で確認が必要な場合は、決して独断で行動せず、以下の「絶対条件」を必ず守ってください。
施主様が足場に上がる際の3つの絶対条件
- 業者の許可と立ち会い
現場責任者(作業主任者)の許可を得て、必ずプロが同行・誘導できる日時を指定してもらうこと。 - 万全の安全装備
ヘルメットの着用はもちろん、滑りにくい靴や動きやすい服装を準備し、手ぶら(撮影はストラップ使用)の状態にすること。 - 自己責任の自覚
「お客様」ではなく「現場に入る一人の人間」として、事故のリスクを自分自身で負う覚悟を持つこと。
今の時代、無理に危険な足場に登らなくても、施工品質をチェックする方法はたくさんあります。
私たちステップペイントでは、施主様の「見えない場所への不安」を解消するために、高所カメラを使った鮮明な写真付きの完了報告書の作成や、最新のドローン技術を用いた屋根点検、そして日々の作業日報による進捗共有を徹底しています。
これらは、お客様に危険を冒させることなく、安心と納得をお届けするための私たちのこだわりです。
「登って確認したい」と思われたら、まずは一度、現場担当の私にご相談ください。登る以外の方法で、その不安を解消できる最良のご提案をさせていただきます。
安全第一で、最高の仕上がりを一緒に目指しましょう。








