
こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。
外壁塗装の工事が進む中で、「職人さんがお昼過ぎには帰ってしまった」「まだ明るいのに今日の作業は終わり?」と、少し不安に感じたことはありませんか。
工事を急いでほしいお客様からすると、「もっと作業できるのでは?」「もしかして手抜き?」と心配になってしまうお気持ち、とてもよく分かります。
でも実はそれ、職人がサボっているわけではなく、むしろ「塗料の性能を最大限に発揮させるために、あえて待っている時間」なんです。
塗装工事において、塗ることと同じくらい重要なのが、この「乾燥時間(インターバル)」です。
下塗り、中塗り、上塗りと層を重ねていく中で、それぞれの塗料がしっかりと乾き、化学反応で固まるのを待たずに次を塗ってしまうと、後々になって剥がれや膨れといった重大な不具合を引き起こしてしまいます。
私たち現場の人間は、ただ塗るだけでなく、その日の気温や湿度、風通しを見極めながら、メーカーが定めた厳格なルールに基づいて作業スケジュールを組んでいるんですよ。
この記事では、なぜその「待ち時間」が必要なのか、具体的な時間の目安や現場でのリアルな判断基準を交えて、プロの視点から分かりやすく解説します。
記事のポイント
- 下塗りから中塗りまで空けるべき具体的な時間の目安
- なぜ3回塗るのか、それぞれの工程が持つ重要な役割
- 乾燥時間を守らないと発生する恐ろしい施工不良のリスク
- 雨天時や工期が延びてしまった場合の現場での正しい対応
- 1. 外壁塗装の下塗りと中塗りの間隔目安と乾燥時間
- 1.1. 3回塗りの工程(下塗り 中塗り 上塗り)の役割
- 1.1.1. 塗装の3工程とそれぞれの重要な役割
- 1.1.1.1. ① 下塗り(1回目):最強の接着剤&下地調整
- 1.1.1.2. ② 中塗り(2回目):強靭な肉付け&厚みの確保
- 1.1.1.3. ③ 上塗り(3回目):美観と保護の最終仕上げ
- 1.2. 塗装の乾燥時間の目安と時間間隔
- 1.3. 「中塗りと上塗りでなぜ2度に分けて(2回塗り)するのですか?」工程の意味
- 1.3.1. 「1回での厚塗り」が引き起こす3つの不具合
- 1.3.1.1. ① ダレ(液垂れ)
- 1.3.1.2. ② 表面乾燥と内部未乾燥(チヂミ・ワキ)
- 1.3.1.3. ③ 塗り残し(塗り残しによる透け)のリスク
- 1.3.1.4. 中塗りと上塗りの色を変えるテクニック
- 1.4. 30分など短い乾燥時間は施工不良の原因
- 1.4.1. 知っておきたい塗料の乾燥3段階
- 1.4.2. 生乾きでの塗り重ねが引き起こす「2大トラブル」
- 1.4.2.1. 1. 膨れ(ブリスター)
- 1.4.2.2. 2. 縮み(リフティング)
- 1.5. 下塗り後雨が降った場合の対応と注意点
- 2. 外壁塗装の下塗りと中塗りの間隔に関するルール
- 2.1. 同日仕上げなど1日での無理な作業はNG
- 2.1.1. なぜ業者は急ごうとするのか?
- 2.2. どのくらい時間を置くべきか図面指示を確認
- 2.2.1. 仕様書に記載されている重要な数値の例
- 2.3. 間隔のルールを守り工期が延びるケース
- 2.3.1. 品質確保のために「あえて作業しない」判断をするケース
- 2.3.1.1. 冬場の「15時以降」のストップ
- 2.3.1.2. 梅雨や夏場の高湿度
- 2.4. 放置期間が長い場合
- 2.4.1. 下塗り放置期間が長すぎると発生する3つのリスク
- 2.4.2. 期間が空いてしまった場合のリカバリー方法
- 2.5. 外壁塗装の下塗りと中塗りの間隔についてのまとめ
- 2.5.1. 記事の要点
- 2.5.2. 横浜市・川崎市・東京都で外壁塗装や防水工事をお考えの方へ
外壁塗装の下塗りと中塗りの間隔目安と乾燥時間
塗装工事における「乾燥時間」は、料理でいうところの「煮込み時間」や「寝かせる時間」に似ています。
見た目は変わらなくても、その間に塗膜の中で重要な変化が起きているのです。ここでは、各工程の意味と、具体的な待ち時間の目安について深掘りしていきましょう。
3回塗りの工程(下塗り 中塗り 上塗り)の役割
外壁塗装の世界では、「下塗り」「中塗り」「上塗り」の計3回塗りで仕上げるのが絶対の鉄則です(※一部の特殊なデザイン塗装やクリア塗装などを除く)。
「3回も塗るんですか? 1回で厚く塗ればいいんじゃないの?」と驚かれることもありますが、実はこれ、女性のお化粧に例えるとすごく分かりやすいんです。
洗顔後の肌にいきなりファンデーションを塗っても、うまく乗らないしすぐに崩れてしまいますよね? 「化粧下地」で肌を整え、「ファンデーション」を塗り、最後に「パウダー」で仕上げる……。
外壁塗装もこれと全く同じで、それぞれに明確な役割を持った層を重ねることで、初めて建物を守る強固な鎧(よろい)が完成するのです。
塗装の3工程とそれぞれの重要な役割
① 下塗り(1回目):最強の接着剤&下地調整
今の外壁材と新しい塗料を強力にくっつける「両面テープ」のような役割です。
さらに、長年の紫外線で傷んでスカスカになった外壁が、上塗り塗料をスポンジのように吸い込んでしまうのを防ぐ「吸い込み止め」の役目も果たします。
外壁の状態に合わせて、水っぽい「シーラー」や、厚みをつけてひび割れを埋める「フィラー」などを使い分けます。ここが不十分だと、上にどんな高級塗料を塗っても、数年でペラペラと剥がれてしまいます。
② 中塗り(2回目):強靭な肉付け&厚みの確保
塗膜としての「厚み(肉付き)」を作るメインの工程です。塗料はメーカーが定めた規定の厚さに達して初めて、防水性や遮熱性といったカタログ通りのスペックを発揮します。
通常は上塗りと同じ塗料を使いますが、下地の色を完全に覆い隠し、表面の凹凸を平滑にすることで、最後の上塗りが一番美しく映える土台を作ります。
③ 上塗り(3回目):美観と保護の最終仕上げ
建物の美観を整え、過酷な雨風や紫外線から家を守る「最終バリア」を形成します。 中塗りで厚みを確保した上に、さらにコーティングすることで、艶やかで汚れに強く、水を弾くピカピカの塗膜が完成します。
この3層目が、皆様の目に触れる仕上がりの色となります。
このように、3つの工程は「接着」「肉付け」「保護」という全く違う役割分担をしています。これらが適切な乾燥時間を経て化学的にガッチリと結合することで、初めて10年、15年と風雨に耐えうる耐久性が生まれるのです。

塗装の乾燥時間の目安と時間間隔
では、具体的にどのくらいの時間を空ければ良いのでしょうか。これは職人の勘で決めているわけではなく、塗料メーカーが製品ごとに定めている「施工仕様書」というルールブックに基づいています。
一般的な水性塗料(シリコンやラジカル制御形など)の場合、気温23℃前後で「3時間〜4時間以上」の乾燥時間を確保するのが標準的な目安です。
| 季節・環境 | 気温の目安 | 乾燥時間の目安(下塗り後) |
|---|---|---|
| 春・秋(標準) | 20℃〜25℃ | 3時間〜4時間以上 |
| 夏(高温時) | 30℃以上 | 2時間〜3時間以上 |
| 冬(低温時) | 5℃〜10℃ | 6時間〜翌日まで |
特に注意が必要なのは冬場です。気温が5℃〜10℃くらいまで下がると、塗料が乾くスピードは極端に遅くなります。
夏場なら午前中に下塗りをして午後から中塗りができる場合でも、冬場は「朝一番で塗っても夕方までに乾ききらない」ということがよくあります。そのため、冬場は基本的に「1日1工程」で進めるのが安全策となります。
乾燥時間に関する公的な基準 大手塗料メーカーである日本ペイントなどの製品情報でも、気温ごとの詳細な乾燥時間が公開されています。これらは実験データに基づいた数値であり、これを無視することは施工不良に直結します。
(参考:公共建築改修工事標準仕様書対応 日本ペイント製品塗装仕様書(改修))
「中塗りと上塗りでなぜ2度に分けて(2回塗り)するのですか?」工程の意味
「中塗りと上塗りで同じ塗料を使うなら、一度にドバっと厚く塗れば手間も省けるし、工期も短くなるんじゃない?」
お客様から、そんな素朴なご質問をいただくことがよくあります。お気持ちはよく分かります。回数が増えればそれだけ手間がかかるわけですから、効率的に済ませたいと思いますよね。
しかし、私たちプロが頑なに「2回塗り(中塗り+上塗り)」のルールを守るのには、建物を守るための明確な理由があるんです。
実は塗料には、「一度に塗って良い厚さの限界(タレ限界)」というものが化学的に決まっています。これを無視して一度に厚く塗ろうとすると、以下のような深刻なトラブルが発生してしまいます。
「1回での厚塗り」が引き起こす3つの不具合
① ダレ(液垂れ)
塗料は液体なので、重力に逆らえません。一度に厚く塗りすぎると、乾燥する前にダラダラと垂れてきてしまい、波打ったような汚い仕上がりになってしまいます。
② 表面乾燥と内部未乾燥(チヂミ・ワキ)
厚塗りすると、表面だけが先に乾いて膜を張り、内部がいつまでも乾かない状態になります。
後から内部が乾燥して収縮する際に、表面が引っ張られて「シワ(チヂミ)」ができたり、内部の空気が抜けようとして「小さな穴(ピンホール・ワキ)」が開いたりします。これでは防水の役目を果たしません。
③ 塗り残し(塗り残しによる透け)のリスク
人間が手作業で塗る以上、どんなに腕の良い職人でも、1回塗りだけではミクロ単位の塗り残しや、下地が透けて見える「スケ」が発生する可能性があります。
だからこそ、「適正な厚みを2回に分けて塗り重ねる」という工程が絶対に必要なのです。
中塗りで下地をしっかりと覆い隠し、平滑なベースを作ります。そして乾燥させた後、上塗りで仕上げることで、塗り残しを完全に防ぎ、メーカーが設計した通りの「ムラのない均一で強固な塗膜」が完成するのです。
中塗りと上塗りの色を変えるテクニック
現場によっては、塗り残しをさらに防ぐために、あえて「中塗り」と「上塗り」の色を少しだけ変えることがあります(例:中塗りは少し薄いグレー、上塗りは濃いグレーなど)。
こうすれば、どこまで上塗りが終わっているかが一目瞭然になるので、お客様にも「ちゃんと2回塗ったんだな」と安心して確認していただけますよ。
「急がば回れ」という言葉がありますが、塗装工事においては、手間を惜しまず2回重ねることが、結果として家を一番長く守る近道になるんですね。

30分など短い乾燥時間は施工不良の原因
もし、業者が下塗りを終えてからわずか30分〜1時間程度で、まだ壁がしっとりと湿っているように見えるのに、次の中塗りを開始していたら……それは非常に危険なサインです。
「職人さんの手際が良いから早いんだな」と感心している場合ではありません。
塗料の乾燥には、大きく分けて3つの段階があります。ここを勘違いしていると、大変なことになります。
知っておきたい塗料の乾燥3段階
- 指触乾燥(ししょくかんそう)
表面だけが乾いて、指で触っても塗料が付かない状態。中はまだ生乾きです。 - 半硬化乾燥(はんこうかかんそう)
内部まである程度乾燥し、次の塗料を重ねても問題ない状態。★ここで初めて塗り重ねが可能になります。 - 完全乾燥(かんぜんかんそう)
完全に硬化し、塗料本来の強度が発揮される状態(数日〜数週間かかります)。
多くの手抜き工事では、1の「指触乾燥」の段階、つまり表面の皮一枚が乾いただけで「もう乾いた!」と判断して次を塗ってしまいます。
しかし、これは「中が半熟のオムレツ」の上に重い具材を乗せるようなもの。内部はまだぐずぐずの状態なのです。この状態で無理やり塗り重ねると、次のような恐ろしい不具合が発生します。
生乾きでの塗り重ねが引き起こす「2大トラブル」
1. 膨れ(ブリスター)
内部に残った水分や溶剤が蒸発しようとしても、上から新しい塗膜でフタをされて逃げ場を失います。すると、行き場のないガスが気化して膨張し、塗膜を内側から風船のように押し上げます。これが「膨れ」です。
恐ろしいのは、これが施工直後ではなく、半年〜1年後の夏場など、気温が上がったタイミングで突然現れることです。「きれいに仕上がった」と思っていても、時限爆弾のように不具合が発生してしまうのです。
2. 縮み(リフティング)
特に溶剤系(油性)の塗料で起こりやすい現象です。下塗りが乾ききらないうちに上から塗料を塗ると、新しい塗料に含まれるシンナー成分が、下塗りの塗膜を再び溶かしてしまいます。
その結果、表面がミミズ腫れのようにシワシワになったり、縮れてきたりします。
「30分で乾く」というのは、真夏の炎天下で速乾性の塗料を使っているなど、よほど特殊な条件下でない限りあり得ません。
もし現場で見ていて「あまりにも早すぎるな」と感じたら、勇気を出して「仕様書では乾燥時間は何時間になっていますか?」と確認してみることをお勧めします。

下塗り後雨が降った場合の対応と注意点
外壁塗装は天気との戦いでもあります。下塗りが終わった直後、あるいは乾燥中に雨が降ってしまった場合、どう対応するのが正解でしょうか。
結論から言うと、雨が降ったら即座に作業を中止し、雨が上がった後も壁が完全に乾くまで作業は再開しません。
塗料は水と混ざると性能が著しく低下します。濡れた下塗りの上に中塗りをしても密着しませんし、水分を閉じ込めてしまえば先ほどの「膨れ」の原因になります。
プロの現場では、雨上がりの翌日でも、壁の含水率(水分量)が高いと判断すれば、あえて作業を見送ることもあります。
「晴れているのに作業しないの?」と思われるかもしれませんが、これは大切なお家を守るための勇気ある決断なのです。
雨天による工期の遅れや、その際の業者とのやり取りについては、『外壁塗装の工期遅れ!雨や職人不足の理由と対策・賠償の相場』の記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

外壁塗装の下塗りと中塗りの間隔に関するルール
ここまでお話しした通り、乾燥時間は職人の「勘」や「経験」だけで決めているわけではありません
実は塗料メーカーごとに科学的な根拠に基づいた細かいルールが決められており、それを守ることがメーカー保証を受けるための条件にもなっているんです。
同日仕上げなど1日での無理な作業はNG
「お客様、外壁の塗装が今日1日で全部終わりましたよ!早かったでしょう?」 もし業者からこんな報告を受けたら、喜ぶ前に「えっ、大丈夫?」と疑ってかかってください。
はっきり申し上げますが、一般的な戸建て住宅の外壁塗装において、朝から作業を始めて夕方までに「下塗り・中塗り・上塗り」の3工程すべてを完了させることは、物理的にほぼ不可能です。
なぜ「不可能」と言い切れるのか、標準的な乾燥時間(23℃で3〜4時間)を守った場合のタイムスケジュールをシミュレーションしてみましょう。
| 時刻 | 作業内容 | 状況判定 |
|---|---|---|
| 8:00〜10:00 | 下塗り施工 | ここまでは通常通りです。 |
| 10:00〜14:00 | 乾燥時間(4時間) | 塗料が乾くまで作業できません。 (お昼休憩を含めても長い待機時間) |
| 14:00〜16:00 | 中塗り施工 | 夕方に差し掛かります。 |
| 16:00〜20:00 | 乾燥時間(4時間) | 【問題発生】 次の工程に進めるのは夜の20時以降です。 |
| 20:00〜22:00 | 上塗り施工?? | 【施工不可】 真っ暗で手元も見えず、夜露のリスクもあるため塗装は不可能です。 |
いかがでしょうか。計算上、どうやっても日が暮れてしまいますよね。準備や片付けの時間を含めると、さらに時間は足りなくなります。
つまり、「1日で3回塗り終わりました」という報告は、裏を返せば「乾燥時間を無視して、生乾きのまま次々と塗り重ねました」と自白しているのと同じことなのです。
なぜ業者は急ごうとするのか?
乾燥時間を待たずに1日で終わらせてしまえば、職人の人件費を1日〜2日分カットでき、業者の利益が増えるからです。しかし、その利益の代償として、お客様の家には「数年後に剥がれるリスク」という大きな負債が残ることになります。
もちろん、真夏で気温が35℃を超える日や、超速乾性の特殊な塗料を使う場合など、条件によっては「下塗り+中塗り」まで、あるいは「中塗り+上塗り」までの2工程を1日で進めることは可能です。
しかし、それでも3工程すべてを1日に詰め込むのは、品質管理の観点から見てあまりにもリスクが高すぎます。
私たちステップペイントでは、「早さ」よりも「確実さ」を最優先しています。たとえ効率が悪く見えても、メーカーが定めた乾燥時間を遵守し、無理な同日仕上げは行わないことをお約束します。
それが、お客様に安心してお任せいただくための最低限のルールだと考えているからです。

どのくらい時間を置くべきか図面指示を確認
「このくらいの天気なら2時間で乾くだろう」 ベテラン職人の経験や勘は確かに頼りになりますが、私たちプロの現場では、それ以上に「データ(根拠)」を絶対的なルールとして扱います。
その拠り所となるのが、塗料メーカーが発行している「製品仕様書(施工要領書)」や、それに基づいて作成された「特記仕様書(図面指示)」です。
これらは単なる取扱説明書ではありません。メーカーが「この条件を守らなければ、塗料の性能や寿命を保証しません」と宣言している、いわば契約書のような重みを持つルールブックなのです。
仕様書に記載されている重要な数値の例
カタログや仕様書には、以下のような細かい数値が気温別(5℃・23℃・30℃など)に指定されています。
- 工程内乾燥時間
同じ塗料を重ねるまでに待つ時間(2回塗りなどの間隔)。 - 工程間乾燥時間
下塗りから中塗りへ進むために待つ時間。 - 最終養生時間
塗装完了後、雨に打たれても大丈夫になるまでの時間。 - 可使時間(ポットライフ)
2液型塗料を混ぜてから使い切るまでのリミット。
現場監督は、当日の気温や天候を計測し、この仕様書に照らし合わせて「今の気温は15℃だから、メーカー規定では4時間必要だ。だから次の工程は14時からしか始められない」といった具合に、論理的に作業指示を出しています。
これは、ご自身でDIY塗装に挑戦される場合も全く同じです。ホームセンターで買った塗料缶の裏面や、メーカーホームページのカタログを必ずチェックしてください。
「指で触って付かないからOK(指触乾燥)」という感覚だけで進めると、内部が乾いていない「半硬化」の状態を見落としがちです。
「メーカーが定めた数値を守る」ことこそが、プロ顔負けの耐久性を実現する一番の近道であり、失敗しないための最大の秘訣ですよ。
間隔のルールを守り工期が延びるケース
ルール通りに乾燥時間をしっかり守ろうとすると、どうしても天候や気温の影響を受けて、当初予定していた工期よりも数日、場合によっては一週間以上延びてしまうことがあります。
足場が組まれてシートで覆われた生活は、日当たりも悪く、洗濯物も自由に干せないため、お客様にとっては大きなストレスになることは私たちも痛いほど理解しています。
「早く足場を外してスッキリしたい」と思われるのは当然ですよね。
ですが、ここで現場担当者として正直にお伝えしたいのは、「工期が延びている=作業が遅い・段取りが悪い」とは限らないということです。
むしろ、以下のようなケースでの延長は、業者が品質を第一に考えている証拠だと言えます。
品質確保のために「あえて作業しない」判断をするケース
冬場の「15時以降」のストップ
冬は日没が早く、15時を過ぎると気温が急激に下がります。
無理に作業を進めると、夜露や結露が降りてきて、乾きかけの塗膜が白く濁ったり(白化現象)、艶が引けたりしてしまいます。これを防ぐため、まだ明るくても早めに切り上げることがあります。
梅雨や夏場の高湿度
雨が降っていなくても、湿度が85%を超えている日は塗料の水分が蒸発しません。無理に塗ると塗膜形成が不完全になるため、晴れ間が見えても「待機」を選択する勇気が必要です。
業者側の本音を言えば、工期が延びれば人件費もかさみますし、足場のレンタル期間も延びるため、できれば予定通りサクサク進めたいというのが正直なところです。
それでも「今日は塗りません」と判断するのは、「目先の利益や効率よりも、お客様の家の10年後の安心を選んでいる」からこそなんです。
焦って生乾きのまま進めてしまえば、数年後に剥がれてしまい、結果的にお客様を悲しませることになりますからね。また、塗装の工程だけでなく、工事の最初に行う「高圧洗浄」の後も、たっぷりと乾燥時間を取る必要があります。
『外壁塗装工事で行う高圧洗浄作業の所用時間や当日の注意点を解説』の記事で、水を吸った外壁にそのまま塗るのがどれほど危険か、高圧洗浄の乾燥時間についても詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

放置期間が長い場合
乾燥時間は「短すぎる」と不具合が起きるというのはイメージしやすいですが、実は「長すぎる」のも同じくらい危険だということは、あまり知られていません。
塗料メーカーの仕様書(カタログ)には、必ず「塗り重ね許容時間(間隔の上限)」という項目があり、一般的には「7日以内」や「10日以内」と定められています。
では、もし何らかのトラブルで工事がストップし、下塗りの状態で数週間、あるいは数ヶ月もの長期間放置されてしまった場合、現場ではどのようなリスクが想定されるのでしょうか。プロの視点で解説します。
下塗り放置期間が長すぎると発生する3つのリスク
- 異物の付着(汚染)
風で飛んできた土埃、車の排気ガス、花粉、鳥のフンなどが表面に蓄積します。これらが薄い膜となり、上から塗る塗料を弾いてしまう「離型剤」のような働きをしてしまいます。 - 紫外線による劣化(チョーキング)
多くの下塗り材(特にエポキシ系など)は、紫外線に非常に弱く作られています。長期間日光にさらされると、表面が粉を吹いたようになり(チョーキング)、接着力が失われます。 - 過度な硬化(鏡面化)
塗料がカチカチに固まりすぎて表面がツルツルになり、次に塗る塗料が食いつくための「物理的な引っかかり(アンカー効果)」が得られなくなります。
特に、数ヶ月間も放置されたケースは、塗装業界の常識からすると非常に危険な状態です。下塗り材としての機能はほぼ失われていると考えて間違いありません。
この状態で、表面を掃除しただけで中塗りを重ねてしまうと、数年経たずに層間剥離(そうかんはくり)を起こし、パリパリと皮がむけるように塗装が剥がれ落ちてくる可能性が高いです。
期間が空いてしまった場合のリカバリー方法
もしどうしても期間が空いてしまった場合は、そのまま塗り重ねるのではなく、必ず適切な下地処理が必要です。
- 目荒らし(足付け)
サンドペーパーなどで表面をわざと傷つけ、塗料の食いつきを良くする。 - 再洗浄・脱脂
付着した汚れや油分をシンナーなどで拭き取る。 - 追い下塗り
劣化状況によっては、もう一度下塗りを入れ直して新しい接着面を作る。
「期間が空いたけど、見た目は乾いているから大丈夫だろう」という自己判断は禁物です。
もし工事再開の際に、業者が何の下処理もなくいきなり中塗りを始めようとしたら、「期間が空きましたが、下地の密着性は大丈夫ですか?」と必ず確認するようにしてくださいね。
外壁塗装の下塗りと中塗りの間隔についてのまとめ
ここまで、外壁塗装における「下塗りと中塗りの間隔(乾燥時間)」がいかに建物の寿命を左右する重要な要素であるか、現場の視点からお話しさせていただきました。
塗装工事というと、どうしても「職人が手を動かしている時間」に目が行きがちですが、実は「手を止めて待っている時間」こそが、塗料という半製品を完成品へと育てる大切な熟成期間なのです。
記事の要点
- 乾燥時間=品質確保の時間
メーカー規定の乾燥時間(インターバル)を守ることで、塗料本来の耐久性や防水性が発揮されます。 - 環境への適応が鍵
気温23℃で3〜4時間が一つの目安ですが、冬場や湿度が高い日は「乾くまで待つ」という現場判断が最優先されます。 - 「早すぎる」は危険信号
「1日で3回塗り」などの無理な工程短縮は、後々の「膨れ」や「剥がれ」といった施工不良に直結します。 - 「長すぎる」も要注意
放置期間が長すぎると汚れの付着などで密着性が落ちるため、適切なスケジュール管理を行う業者が安心です。
工事期間中、足場がかかった状態で作業が進まないと、「早く終わらせてほしい」と焦るお気持ちになることもあるかと思います。
ですが、もし職人が「今日は天気が怪しいので、乾燥を優先して作業を止めます」と言ってきたら、それはサボりではなく、お客様の大切なお家を本気で守ろうとしているプロの判断だと受け取っていただけると嬉しいです。
私たち現場の人間にとっても、塗料が乾くのを待つ時間は、次の工程で最高の仕上がりを提供するための準備期間でもあります。
もし工事の進み具合で気になることや、「今日は作業しないのかな?」と不安に思うことがあれば、遠慮なく職人や担当者に声をかけてみてください。
「今は下塗りを乾かしているところですよ」「湿度が高いので大事をとっています」と、理由をしっかり説明してくれる業者は信頼できるパートナーと言えるでしょう。
この記事が、皆様の外壁塗装を成功させるための安心材料の一つになれば幸いです。







