
こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。
外壁塗装の工事が無事に終わり、足場が解体されてホッとしたのも束の間、ふと玄関先やベランダを見ると使いかけの塗料缶が置かれていることに気づく方は少なくありません。
職人さんが親切心で「補修用にどうぞ」と置いていってくれたものかもしれませんが、専門知識がないと「これってどうやって処分すればいいの?」「何かに再利用できる使い道はあるの?」と悩んでしまいますよね。
中には「いつか使うかも」と保管したまま、気づけば数年が経過してしまったというケースもよく耳にします。
塗料は適切な管理ができれば家の寿命を延ばすための強力な武器になりますが、扱いを間違えれば処分に困る厄介な廃棄物になりかねません。
特に、塗料を下水道や道路側溝に流すことは、水質汚染や環境破壊につながるため、法律で規制されている行為です。
この記事では、現場を知る私たちが、外壁塗装で余った塗料の正しい捨て方や保管方法、そしてDIYでの活用術について、具体的かつ実践的に解説します。
記事のポイント
- 塗料の正しい保管方法と使用期限の目安
- DIYや補修での賢い活用術と注意点
- 固めて捨てる際の手順と大量にある場合の対処法
- 業者への返却や引き取りに関する実情
- 1. 外壁塗装で余った塗料の保管や再利用方法
- 1.1. 残った塗料の保管方法と7年後の劣化リスク
- 1.1.1. 保管場所の鉄則は「冷暗所」
- 1.1.2. 長期保管のリスクについて
- 1.2. 古い塗料は使えるか分離や臭いで判断する
- 1.2.1. ステップ1:視覚と触覚でのチェック(混ぜて戻るか?)
- 1.2.2. 塗料の状態診断リスト
- 1.2.3. ステップ2:嗅覚でのチェック(腐っていないか?)
- 1.2.4. ステップ3:最終確認の「試し塗り」
- 1.3. 余った塗料でDIYや植木鉢を塗る使い道
- 1.3.1. 外壁とお揃いに!おすすめのDIYアイテム
- 1.3.2. 一工夫でプロ級に!「テクスチャ」を楽しむ裏技
- 1.3.3. まるでセメント?「ザラザラ加工」のリメイク術
- 1.3.4. 【失敗注意】プラスチックを塗る際の必須工程
- 1.4. 補修用に残す量と固まる前の調合について
- 1.4.1. 賢い保管テクニック:小分け保存(デカンティング)
- 1.4.2. 小分け保存の3つの鉄則
- 1.4.3. 「希釈済み」塗料のリスクを知っておく
- 1.4.4. 【最重要】2液型塗料は「保存不可能」
- 1.4.5. 2液型塗料のメカニズムと危険性
- 1.5. ベランダやブロック塀に塗る場合の注意点
- 1.5.1. ベランダ床への塗装はNG
- 1.5.2. ブロック塀への塗装のリスク
- 2. 外壁塗装で余った塗料の正しい処分方法と捨て方
- 2.1. 固める処理を行いゴミとして出す手順
- 2.1.1. 油性塗料を固める際の注意点
- 2.2. 4Lなど量が多い場合やもらいすぎた際の対処
- 2.2.1. 産業廃棄物処理業者に依頼する
- 2.2.2. 施工した業者に相談する
- 2.3. こぼした時の洗浄とベタベタの落とし方
- 2.3.1. 【床・地面】コンクリートやタイルにこぼした場合
- 2.3.2. 【衣服】お気に入りの服についてしまった場合
- 2.3.3. 【手肌】指先や腕がベタベタになった場合
- 2.3.4. 肌を傷めずに塗料を落とす裏技
- 2.3.5. コーキング(シーリング材)のベタベタは別物
- 2.4. 業者に返すことや売れる可能性について
- 2.4.1. なぜ業者は余った塗料を引き取って値引きしてくれないのか?
- 2.4.2. 塗料の返品・転用ができない3つの壁
- 2.5. 外壁塗装で余った塗料を安全に整理するまとめ
- 2.5.1. 【保存版】余った塗料の運用・処分チェックリスト
- 2.5.2. 横浜市・川崎市・東京都で外壁塗装や防水工事をお考えの方へ
外壁塗装で余った塗料の保管や再利用方法
工事が終わった後に手元に残った塗料は、適切に管理すればちょっとした補修やDIYの材料として役立つ貴重な資産になります。
しかし、ただ置いておけば良いというわけではありません。ここでは、塗料の品質を保つための保管テクニックや、再利用する際の判断基準について、現場の経験を交えてお話しします。
残った塗料の保管方法と7年後の劣化リスク
「とりあえず物置に入れておこう」と、余った塗料をそのまま放置してしまうのは非常に危険です。塗料は繊細な化学製品ですので、保管環境によって品質が大きく左右されます。
保管場所の鉄則は「冷暗所」
まず、保管場所は「直射日光が当たらない冷暗所」を選んでください。夏場の高温になるガレージやベランダなどは、缶の中の空気が膨張して破裂したり、塗料の成分が分離・変質したりする恐れがあります。
また、冬場に氷点下になるような場所も避けてください。特に水性塗料は一度凍ってしまうと、エマルション(樹脂と水の混合状態)が破壊され、解凍しても元の品質には戻らず、使い物にならなくなってしまいます。
長期保管のリスクについて
一番気になるのが「いつまで保存できるか」ですよね。
以前にお客様から「7年前に使った塗料が出てきたんだけど、まだ使えるかな?」と聞かれたことがありますが、正直に申し上げますと、開封してから数年経過した塗料の使用はおすすめできません。
メーカーが推奨する保管期間というものは明確には定められていないことが多いですが、現場の感覚としては、開封後はしっかりと密閉しても約1年程度を目安に使い切るのが理想です。
7年も経ってしまうと、以下のような劣化が進んでいる可能性が高いです。
- 樹脂の劣化による耐久性の低下
- 成分の完全な分離・固化
- 防カビ・防藻剤などの添加剤の効果消失
劣化した塗料を無理に使っても、すぐに剥がれたり、本来の色が出なかったりと、労力に見合わない結果になることがほとんどです。

古い塗料は使えるか分離や臭いで判断する
「物置の大掃除をしていたら、5年前に使ったペンキ缶が出てきた。振ってみたらチャプチャプ音がするし、これならまだ使えるんじゃないか?」
お気持ちはよくわかります。高品質な塗料は安くありませんから、捨てずに有効活用したいですよね。
しかし、現場の人間として強くお伝えしたいのは、「いきなり本番の壁に塗り始めるのは絶対にやめてください」ということです。
塗料は保管中に化学変化を起こしている可能性が高く、たとえ見た目が液体であっても、塗料としての命である「接着力」や「乾燥性」を失っていることがあるからです。
最悪の場合、塗った後にいつまでも乾かずにベタベタしたり、乾燥後に異臭を放ち続けたりする大惨事になりかねません。
では、具体的にどこを見て判断すればよいのでしょうか。私たちプロも実践している、開封時の「生存確認フロー」を3つのステップでご紹介します。
ステップ1:視覚と触覚でのチェック(混ぜて戻るか?)
フタを開けたら、まずは目で見て、棒で底まで触って確認します。割り箸だと粘度に負けて折れてしまうことが多いので、できれば金属製のヘラや、丈夫な木の棒を用意してください。
塗料の状態診断リスト
分離と沈殿(要確認)
塗料は「樹脂・顔料」と「溶剤(水やシンナー)」で構成されており、比重の違いで分離するのは自然な現象です。
上澄み液が浮いていても、棒で底をさらった時に「ねっとりとした味噌のような沈殿物」がスムーズに混ざり合えば、まだ使える可能性があります。
底の顔料が石のようにカチカチに固まっていて、どれだけ力強くかき混ぜても溶け残る(ダマになる)場合は寿命ですので、その塗料は使用できません。
皮張り(条件付きOK)
空気に触れる表面だけに、乾燥した厚い膜(皮)が張っている状態です。これを無理やり混ぜ込むと、塗装面にゴミが付着して仕上がりが台無しになります。
対処法としては、皮を破らないようにそっと端から取り除き、残った塗料を使い古しのストッキングや専用の濾紙(ペイントストレーナー)で濾過(ろか)してください。
ただし、皮になった分だけ成分が減っているため、本来の耐久性は期待できません。
ゲル化(即廃棄)
液体全体がプリンやこんにゃくのような弾力のあるゼリー状、あるいはゴム状に固まってしまっている状態です。
これは化学的な「重合反応(硬化)」が進んでしまった結果なので、うすめ液や水を足しても二度とサラサラの液体には戻りません。残念ですが即廃棄となります。
ステップ2:嗅覚でのチェック(腐っていないか?)
次に確認していただきたいのが「臭い」です。これは特に、水を溶媒とする水性塗料で顕著に現れる劣化サインです。
腐敗臭がしたら絶対に使わないでください
水性塗料は長期間保管していると、わずかに混入した不純物(水道水の雑菌など)から容器内でバクテリアが繁殖し、腐敗することがあります。
フタを開けた瞬間に、本来の塗料の臭いではなく、以下のような異臭がしたら危険信号です。
- 腐った卵のような硫黄臭
- ドブ川のような強烈な悪臭
- ツンとする酸っぱい臭い
これらを無理に塗ると、乾燥した後も壁から異臭を放ち続けることになり、生活空間が台無しになります。衛生面でもリスクがあるため、迷わず廃棄してください。
ステップ3:最終確認の「試し塗り」
撹拌(かくはん)してもきれいに混ざり、嫌な臭いもしない。そんな場合でも、まだ安心はできません。保管中に顔料が変質して色が濁っていたり、硬化剤の成分が失活していたりすることがあるからです。
必ず段ボールの切れ端や、目立たない裏側の壁に少しだけ塗ってみて、半日〜1日ほど乾かして様子を見てください。
| チェック項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 色の変化 | 新品の時と比べて、極端に黄色っぽくなったり(黄変)、色が薄くなったり(退色)していませんか? |
| 乾燥不良 | 規定の乾燥時間を過ぎても、指で触ると指紋がついたり、ネチャネチャしたりしませんか? |
| 密着不良 | 完全に乾いた後、爪で軽くひっかいたり、ガムテープを貼って剥がしたりした時に、ポロポロと簡単に剥がれませんか? |
これらをすべてクリアして初めて、「DIYや仮の補修用」として使用できると判断してください。ただし、あくまで再利用できるのは「美観を整えるため」の塗装に限ります。
建物の雨漏りを防ぐような重要な防水に関わる部分(屋根や外壁の大きなクラック補修など)への使用は避けてください。古い塗料は耐久性が落ちているため、すぐにまた割れてしまい、二度手間になる可能性が高いからです。

余った塗料でDIYや植木鉢を塗る使い道
「せっかく高いお金を出して買ったプロ仕様の塗料、捨てるのはもったいない!」 そのお気持ち、大正解です。
実は、外壁用の塗料は、ホームセンターで売っている一般的なペンキとは比べ物にならないほどの「超・高性能な屋外用塗料」なんです。
雨風、強烈な紫外線、カビや藻の発生…。これら過酷な環境から家を守るために設計されているため、これをガーデニング用品やエクステリアのDIYに使わない手はありません。
ここでは、余った塗料を「ゴミ」から「お宝」に変える、プロおすすめの活用術をご紹介します。
外壁とお揃いに!おすすめのDIYアイテム
外壁と同じ塗料を使う最大のメリットは、「お家の外観と完璧にマッチする統一感」が出せることです。色選びに迷う必要もありません。
| アイテム | おすすめポイントと塗装のコツ |
|---|---|
| 室外機カバー | 木製や金属製の室外機カバーは、直射日光で劣化しやすいアイテムです。外壁用の高耐久塗料(特に遮熱塗料など)を塗れば、カバー自体の寿命を延ばすことができます。 |
| 郵便ポスト | 玄関の顔であるポストが色あせていると、家全体の印象が暗くなります。サンドペーパーでサビを落としてから塗り直せば、新品同様の輝きを取り戻せます。 |
| ラティス・フェンス | 木製のフェンスにも塗れますが、仕上がりは木目を塗りつぶす「ペンキ仕上げ」になります。木材腐朽菌を防ぐ効果も期待できるので、腐りやすい足元部分だけでも塗っておくと長持ちします。 |
一工夫でプロ級に!「テクスチャ」を楽しむ裏技
ただ塗るだけでは面白くない、という方におすすめなのが、塗料に「質感」を与えるテクニックです。
まるでセメント?「ザラザラ加工」のリメイク術
ツルツルのプラスチック鉢を、重厚なコンクリート風やアンティーク風に変身させる方法です。
- 余った塗料を別の容器に移します。
- そこに「少量の砂(清潔な川砂や珪砂)」や「細かい石粉(ストーンパウダーなど)」を混ぜて、よくかき混ぜます。
- 刷毛ではなく、スポンジで叩くようにして鉢に塗っていきます。
これだけで、表面にザラザラとした凹凸が生まれ、高級感のある仕上がりになります。100円ショップの安い鉢でも、驚くほどおしゃれになりますよ!
【失敗注意】プラスチックを塗る際の必須工程
DIYでよくある失敗が、「プラスチック製品にそのまま塗ったら、乾いた後にペリペリと剥がれてしまった」というケースです。プラスチックや金属などのツルツルした素材は、塗料が食いつくための「足がかり」がありません。
必ず以下の2ステップを行ってください。
目荒らし(足付け)
塗装する前に、サンドペーパー(#240〜#400程度)で表面全体をこすり、細かい傷をつけます。この傷に塗料が入り込んで剥がれにくくなります。
プライマー(下塗り)
さらに密着力を高めるために、ホームセンターで売っている「ミッチャクロン」などの多用途プライマー(スプレータイプが便利)を吹き付けてから、上塗りの塗料を塗ってください。これをするだけで、耐久性が劇的に変わります。

補修用に残す量と固まる前の調合について
「将来、子供がボールをぶつけて壁が欠けたり、自転車でこすったりした時のために、塗料を少し取っておきたい」
そう考えるのはとても賢明なことですが、保管の方法を一歩間違えると、いざ使おうとした時にカチカチに固まっていたり、容器が溶けて漏れ出していたりと、大惨事になりかねません。
特に、現場で使われる一斗缶(約15kg)をそのまま保管するのは、場所を取るだけでなく、缶の中の空気の量が増えることで塗料の表面が乾きやすくなり(皮張り)、酸化劣化の原因にもなります。
ここでは、プロが実践する「塗料の寿命を延ばす保管テクニック」と、絶対に知っておくべき「2液型塗料の罠」について詳しく解説します。
賢い保管テクニック:小分け保存(デカンティング)
家庭での補修用(タッチアップ用)として残す量は、ジャムの空き瓶1つ分(約200ml〜400ml)もあれば十分です。
ヘアクラック(髪の毛ほどの細いひび割れ)や10円玉程度の剥がれであれば、この量で数回分の補修が可能です。
以下の手順で、適切な容器に移し替えて(小分けして)保管しましょう。
小分け保存の3つの鉄則
容器選び
密閉性の高い「広口のガラス瓶」がベストです。ジャムや海苔の空き瓶がきれいに洗ってあれば最適です。
NGな容器
ペットボトルや食品用タッパーは避けてください。溶剤(シンナー)成分でプラスチックが溶けたり変形したりして、中身が漏れ出す危険があります。
空気層をなくす
塗料の敵は「空気」です。容器に移す際は、なるべく「口元ギリギリ満杯」まで入れて、容器内の空気を追い出してください。中途半端な量だと、空気に触れている部分から固まってしまいます。
ラップで二重密閉
フタを閉める前に、液面に直接触れるようにサランラップを密着(落とし蓋のように)させると、乾燥を劇的に防げます。さらに瓶の口にもラップを挟んでからフタを閉めれば完璧です。
「希釈済み」塗料のリスクを知っておく
職人が「これ、少し残しておきますね」と置いていく塗料には、実は大きな落とし穴があります。それは、「すでに水やシンナーで薄められている(希釈済み)」可能性が高いということです。
本来、塗料は原液の状態が最も安定しています。現場で使いやすくするために水を混ぜた(希釈した)水性塗料は、いわば「生鮮食品」のようなもの。原液に比べて腐敗の進行が早く、長期保存には向きません。
もし可能であれば、職人さんに「希釈する前の原液を少し分けてもらえませんか?」と相談するのが理想的です。
【最重要】2液型塗料は「保存不可能」
そして、何よりも注意していただきたいのが「2液型塗料(2液硬化型)」の存在です。現在、耐久性の高いシリコン塗料やフッ素塗料の多くがこのタイプを採用しています。
2液型塗料のメカニズムと危険性
2液型塗料は、「主剤」と「硬化剤」という2つの液体を使用する直前に混ぜ合わせることで、化学反応を起こして固まります。 この反応は一度始まると止められません。
翌日にはただのゴミ: もし職人さんが「余ったので」と置いていったものが、すでに混ぜ合わせた後の塗料であれば、それは100%保存できません。翌日には容器ごと固まっており、使うことも捨てることも困難な「産業廃棄物の塊」になってしまいます。
混ぜた直後から硬化が始まる
混ぜ合わせた塗料には「可使時間(ポットライフ)」という寿命があり、夏場なら数時間、冬場でも半日程度で、缶の中でカチカチの石のように固まってしまいます。
ベランダやブロック塀に塗る場合の注意点
「余った塗料でベランダの床やブロック塀もついでに塗ってしまおう!」と考える方もいらっしゃいますが、ここにはプロとして止めなければならない大きな落とし穴があります。
適材適所を守らないと、かえって家を傷める原因になります。
ベランダ床への塗装はNG
まず、外壁用の塗料をベランダの床(防水面)に塗るのは避けてください。
外壁用の塗料は、人が歩くことを想定した耐久性(耐摩耗性)を持っていませんし、雨に濡れると非常に滑りやすくなって転倒事故につながる危険があります。
ベランダの床には、防水機能と防滑性を持った専用の「トップコート」を使用する必要があります。
もしベランダの防水メンテナンスをご自身で検討されている場合は、『DIYで失敗しない!FRP防水のトップコートを塗り替える手順』の記事で詳しい手順や材料について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ブロック塀への塗装のリスク
また、ブロック塀への塗装も注意が必要です。ブロック塀は地面からの湿気を吸い上げたり吐き出したりしていますが、一般的な外壁塗料で表面を完全にコーティングしてしまうと、内側の水分が外へ逃げられなくなります。
その結果、水蒸気の圧力で塗膜が水ぶくれのように膨れ上がり、すぐにボロボロと剥がれてしまいます。ブロック塀には「透湿性」の高い専用塗料が必要です。
「塗れる場所」と「塗れない場所」をしっかり見極めることが、DIY成功の秘訣です。

外壁塗装で余った塗料の正しい処分方法と捨て方
保管しても使い道がない、あるいは塗料が劣化してしまった場合は、適切に処分しなければなりません。
しかし、塗料は液体のままでは通常のゴミとして出せませんし、下水道に流すことは法律や環境保護の観点から厳禁です。ここでは、一般のご家庭でできる安全な処分の手順を解説します。
固める処理を行いゴミとして出す手順
塗料を処分する際の基本ルールは「固めてから捨てる」ことです。ただし、自治体によって対応が大きく異なり、液体の塗料を固形化しても回収を受け付けていない自治体も約半数存在します。
固形化した塗料を「燃えるゴミ」として出せる自治体もありますが、必ずお住まいの自治体のルールを事前に確認してください。
| 塗料の残量 | おすすめの処分手順 |
|---|---|
| 少量 (刷毛に付く程度~コップ1杯) | 新聞紙や不要な布(古着など)を広げます。 塗料を刷毛などで薄く塗り広げます。厚く塗ると中が乾かないので注意。 風通しの良い屋外で完全に乾燥させます。 乾いたら新聞紙を丸めて「可燃ゴミ」へ出します。 |
| 中量 (缶の半分以下) | ホームセンターなどで数百円で売っている「塗料固化剤(残塗料処理剤)」を使用します。 残った塗料に固化剤を投入します。 割り箸などでよくかき混ぜます。数分でオカラ状やゼリー状に固まります。 新聞紙の上に取り出して乾燥させ、「可燃ゴミ」として処分します。 |
油性塗料を固める際の注意点
市販の固化剤の多くは、水分を吸収して固めるタイプです。そのため、油性(溶剤)塗料に使用する場合は、「水を加える」必要がある製品が多いです(例:塗料に対して2~3倍の水を入れ、乳化させてから固める)。
説明書をよく読まずに粉だけ入れても固まらないことがありますので、必ず使用方法を確認してください。
(参考:環境省資料『家庭用塗料に対するGHS自主表示の実施について』および同資料内で紹介されている塗料メーカー各社の「塗料の廃棄方法」の解説)

4Lなど量が多い場合やもらいすぎた際の対処
一番困るのが、一斗缶(約15kg)や4L缶になみなみと塗料が残っている場合です。
これを全て新聞紙に吸わせたり、固化剤で固めたりするのは、労力も費用もかかり現実的ではありませんし、大量の可燃ゴミを一度に出すことは自治体によっては禁止されています。
このように「もらいすぎて困っている」「大量に余ってしまった」という場合は、無理に自分で処理しようとせず、以下の方法を検討してください。
産業廃棄物処理業者に依頼する
少し費用はかかりますが、最も確実で安全、かつ法的に正しい方法です。「産業廃棄物収集運搬許可」を持つ地元の業者に問い合わせてみましょう。「塗料 処分 業者 〇〇市」などで検索すると見つかります。
施工した業者に相談する
工事直後であれば、「思ったより余っていて処分に困っている」と相談すれば、回収してくれる可能性があります。
ただし、契約時に「残材処分費」が含まれていない場合や、すでに完工から時間が経っている場合は、有償対応や引き取り不可となることもあります。
私たち塗装業者は、事業活動で出たゴミ(余った塗料含む)を「産業廃棄物」としてマニフェスト(管理票)を用いて厳格に管理・処分する義務があります。
一般の家庭ゴミとは扱いが全く異なるため、事業者が置いていった大量の塗料を、お客様が家庭ゴミとして集積所に出すのはトラブルの元になることもあります。まずはプロに相談するのが一番です。
こぼした時の洗浄とベタベタの落とし方
「あちゃー!やっちゃった!」 DIYや処分の作業中に、うっかり塗料缶を倒してしまったり、刷毛からポタポタと垂れてしまったり…。
そんな経験、誰にでもありますよね。塗料による汚れは、時間が経てば経つほど、それこそ「秒単位」で落ちにくくなります。
ここでは、現場で私たちも実践している、塗料をこぼした際のリカバリー術をシチュエーション別にご紹介します。
塗料の種類(水性・油性)と状態(乾燥前・乾燥後)で対処法が全く異なるので、まずは落ち着いて状況を確認しましょう。
【床・地面】コンクリートやタイルにこぼした場合
塗料の種類(水性・油性)と、乾いているかどうかによって対処法が大きく異なります。
①水性塗料の場合
【乾く前】スピード勝負! :乾いたボロ布や新聞紙で、こぼれた塗料本体をできるだけすくい取ります。そのうえで、以下の手順で対処してください。
- 少量の「水」と中性洗剤を使います。
- 濡れ雑巾やスポンジで、叩くように拭き取ってください。
- 色が伸びて広がりやすいため、雑巾のきれいな面に替えながら何度も拭き直すのがコツです。
【乾いた後】長期戦:乾くと水には溶けなくなります。以下のどちらかの方法を試してください。
- 熱湯をかけてふやかし、ワイヤーブラシ(金タワシ)で物理的に削り落とす。
- 「ラッカーうすめ液」で溶かして拭き取る。
②油性塗料の場合
【乾く前】スピード勝負!:水を使うと弾いてしまい逆効果です。以下の手順で行ってください。
- 乾いたボロ布(ウエス)で吸い取ります。
- 仕上げに「ペイントうすめ液(塗料用シンナー)」を含ませた布で拭き上げます。
【乾いた後】長期戦:非常に強固に張り付くため、除去は困難になります。以下の方法が必要です。
- 「強力剥離剤(はくりざい)」を使用する。
- または、スクレーパー(金属ヘラ)で削り取る。
【衣服】お気に入りの服についてしまった場合
正直に申し上げますと、服についた塗料を完全に綺麗に落とすのは非常に困難です。特に時間が経ったものは、繊維の奥まで樹脂が染み込んで硬化するため、クリーニング店でも断られるケースがほとんどです。
- 水性塗料(乾く前)
すぐに脱いで、ぬるま湯と洗濯洗剤で揉み洗いしてください。歯ブラシで叩き出すと落ちやすいです。 - 油性塗料・乾いた水性塗料
「ベンジン」や「除光液」を裏側から当て布をして叩けば薄くはなりますが、色落ちや生地の傷みは避けられません。「作業の勲章」と諦めるか、最初から汚れてもいい服で作業することが最大の防御です。
【手肌】指先や腕がベタベタになった場合
手に付いた塗料、お風呂に入ってボディソープで洗っても、ヌルヌルするだけで全然落ちない…という経験はありませんか?
肌を傷めずに塗料を落とす裏技
シンナーで拭けば一発ですが、肌が荒れてガサガサになってしまいます。家庭にあるもので優しく落とす方法を試してください。
クレンジングオイル(メイク落とし)
油性塗料の油分を浮かせることができます。なじませてから乳化させて洗い流します。
スクラブ代わりの「砂糖」+ハンドソープ
工業用のスクラブ石鹸がない場合、ハンドソープに「砂糖」をひとつまみ混ぜて手を洗ってみてください。砂糖の粒が研磨剤代わりになり、指紋に入り込んだ塗料を掻き出してくれます(塩だと傷口に染みるので砂糖がおすすめ!)。
お湯でふやかす
水性塗料なら、40度くらいのお湯に手を浸けてふやかし、タオルで擦るとポロポロとフィルムのように剥がれます。
コーキング(シーリング材)のベタベタは別物
塗料だけでなく、ひび割れ補修などで使う「コーキング材」も非常に厄介です。手に付くと洗ってもなかなか取れず、数日間ベタベタが残ることもあります。
コーキングの場合は、乾く前なら乾いた布で拭き取るのが一番です(水洗いは逆効果で広がります)。
外壁のコーキング補修をDIYで行う際は、周囲を汚さないための「養生(ようじょう)」が仕上がりを左右します。
詳しい手順は『外壁のコーキングをDIYで!増し打ちのやり方とできない条件をプロが解説』の記事も参考にしてみてください。

業者に返すことや売れる可能性について
「一斗缶がまるまる1本余ってるじゃない!これなら返品して、その分工事費から値引きしてもらえないの?」 「フリマアプリに出せば、DIY好きな人が買ってくれるんじゃない?」
工事が終わって大量の塗料が残されているのを見ると、そう考えてしまうのも無理はありません。決して安くない塗料ですから、少しでも元を取りたいと思うのは当然です。
しかし、現場の人間として正直にお伝えしますと、業者への返品(値引き)も、個人での転売も、現実的には極めてハードルが高く、おすすめできません。
その理由には、塗料という製品ならではの特殊な事情と、配送にまつわる大きなリスクが関係しています。
なぜ業者は余った塗料を引き取って値引きしてくれないのか?
「未開封なら新品同様でしょ?」と思われるかもしれませんが、外壁塗装の塗料には「他では使えない」理由が3つあります。
塗料の返品・転用ができない3つの壁
オーダーメイドの色(調色)
お客様が選んだ色は、メーカーの工場や塗料販売店で、そのお宅のためだけに顔料を混ぜて作られた「特注色」であることがほとんどです。
洋服で言えばオーダーメイドのスーツと同じで、サイズ(色)が違う他の現場では使い回しができません。
現場での調整済み(希釈)
前述の通り、現場で使いやすいように水やシンナーで薄められた塗料は、原液に比べて品質が安定せず、保存にも適しません。業者にとっても再利用が困難です。
開封後の品質保証がない
一度開封された塗料は、たとえ未使用であっても、保管状態や経過時間によって品質が変化している可能性があります。
業者がそれを引き取って他の現場で使用し、もし不具合が発生した場合、責任問題になるリスクがあるため、返品や値引きには応じられないのが実情です。

外壁塗装で余った塗料を安全に整理するまとめ
ここまで、外壁塗装で余った塗料の活用法から処分方法まで、現場の視点でお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
余った塗料は、正しく管理できれば家の寿命を延ばすための頼もしい「資産」になりますが、放置すれば火災リスクや環境汚染につながる厄介な「負債」にもなり得ます。
最後に、安全で快適な住環境を守るために、私たちが特にお伝えしたい重要ポイントを整理しました。「これどうしよう?」と迷ったときは、ぜひこのリストを思い出してください。
【保存版】余った塗料の運用・処分チェックリスト
- 保管の鉄則
直射日光を避けた「冷暗所」で保管し、開封後は「約1年」を目安に見切りをつける(迷ったら捨てる勇気も大切です)。 - 再利用の範囲
植木鉢やガーデニング用品など「万が一剥がれても問題ない箇所」のDIYで楽しむ。防水に関わる重要箇所はプロに任せる。 - やってはいけないこと
ベランダ床やブロック塀など、用途が異なる場所への無理な塗装は避ける。また、下水道への排出は厳禁。 - 処分の基本
少量〜中量は塗料用固化剤や新聞紙などでしっかり固めてから、お住まいの自治体の分別ルールに従い可燃ゴミとして出す(地域によっては家庭ゴミとして出せない場合もあります)。液体のまま捨てるのはNGです。 - 困った時の相談先
大量に残ってしまった場合や中身が不明な場合は、無理に自分で処理しようとせず、専門業者(産廃業者など)へ相談する。
塗料缶一つとっても、そこには専門的な化学知識が必要です。「もったいないから」と無理に使おうとして失敗したり、間違った方法で捨ててトラブルになったりするケースは後を絶ちません。
もし、手元の塗料の状態に少しでも不安があったり、処分方法で迷ったりしたときは、決して自己判断せずに、私たちのような施工店や、お住まいの自治体の環境課などの窓口に相談してください。
私たちステップペイントも、塗装工事だけでなく、その後の住まいの小さなお悩みまでサポートするのが仕事です。
正しい知識で塗料を整理し、安心・安全なマイホーム生活を送ってください!







