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外壁のメンテナンスコラム

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パナホームベランダ防水シートの張り替え費用と寿命!劣化対策も

こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。

パナソニック ホームズ(旧パナホーム)にお住まいの方から、ベランダやバルコニーの不具合についてご相談をいただく機会が非常に増えています。

特に「床がなんとなくフカフカして沈む気がする」「タイルの下はどうなっているのか掃除ができなくて不安だ」といったお悩みが、築15年を超えたお客様から多く寄せられます。

パナソニック ホームズ(旧パナホーム)のベランダは、建物仕様や年代によって防水の納まりが異なり、合成高分子系シートを用いた防水仕様などが採用されている例があります。

そのため、費用や耐用年数を調べる際は「一般論」だけで判断しにくく、状態に合わない対処をすると不具合を広げてしまうことがあります。

とくに、シートの浮き・剥がれ・破れ、継ぎ目(ジョイント)の口開きなどがある場合は、放置すると漏水リスクが高まるため早めの点検が重要です。

(参考:住まいのメンテナンス – パナソニック ホームズ – Panasonic

この記事では、数多くの現場を見てきた私の視点から、パナホーム特有の構造を解剖し、補修や交換のベストなタイミング、DIYや塗装でのメンテナンスが可能かどうか、そしてメーカー純正と専門業者のどちらに依頼するのが正解なのかまで、包み隠さず分かりやすく解説していきます。

記事のポイント

  • パナホーム独自の防水構造と見逃せない劣化サイン
  • 張り替え費用の相場と業者選びのポイント
  • 「床の沈み」など不具合への修理方法
  • 絶対NGなDIYと正しいメンテナンス法
目次

パナホームのベランダ防水シートの特徴と劣化サイン

パナホームのお住まいは、非常に堅牢な軽量鉄骨構造で作られていますが、ことベランダ防水に関しては、少し特殊で専門的な仕様が採用されていることが多いです。

まずは、その構造の特徴と、どのような状態になったら注意が必要なのか、具体的な劣化サインについて現場目線で深掘りして解説していきます。

構造と種類:純正塩ビシートやタイルの厚み

パナソニック ホームズ(旧パナホーム)のベランダ防水は仕様や年代で異なりますが、合成高分子系の防水シートを張り込み、継ぎ目を溶着して仕上げるタイプが採用されている例があります。

シート防水は膜厚が工場製品として管理されやすく、施工後の品質が安定しやすいのが特徴です。

また、防水層そのものの上に、歩行用の床材(タイル状パネルやデッキ材など)を「置き敷き」している例もあります。

こうした床材は、防水層を直射日光や歩行摩耗から守る助けになる一方で、防水層の状態を日常的に目視しづらいという面もあるため、定期点検が重要です。

ベランダ防水で押さえておきたいポイント

  • 目視しにくい構造の注意
    床材が載っている場合、防水層の浮き・剥がれ・継ぎ目の口開きなどの異常に気づきにくくなることがあります。
  • 経年劣化の基本
    合成高分子系シートは経年で硬化・収縮が進むことがあり、端部や継ぎ目に負担が集中すると不具合につながる場合があります。
  • 踏み心地の違和感は要確認
    仕様によって踏み心地が変わることはありますが、「沈む」「フカフカする」「グラつく」などがある場合は、早めに点検を受けてください。

この構造は建物を守る上で非常に理にかなっているのですが、一方で「シートの異常に気付きにくく、発見が遅れる」というメンテナンス上の課題もあります。

タイルの隙間から入った雨水は下のシートの勾配に沿って排水ドレンへと流れますが、その内部で汚れが詰まったり、シートが切れていたりしても、普段の生活では全く気づかないのが怖いところですね。

ベランダの床タイルを裸足で踏んでいる写真。タイルの下がどうなっているのか疑問を投げかけ、「床がフカフカする」という違和感を放置してはいけないと警告している。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

耐用年数と寿命:10年保証とメンテナンス

合成高分子系シート防水を含め、防水層の耐久性は仕様・環境・維持管理で前後しますが、一般的な目安として、シート防水・ウレタン防水・FRP防水の耐用年数は、いずれも「10年~15年程度」とされています。

ただし、これらはあくまで参考値であり、工法の優劣を年数だけで断定せず、現状の劣化状況と納まりに合わせて改修方法を選ぶことが大切です。

(参考:Ⅲ.3 外壁及び屋根防水の補修・改修部分の耐久性評価手法(国土技術政策総合研究所)

しかし、「長持ち=一生何もしなくていい」というわけではありません。塩ビシートなどの寿命は、シートに含まれる成分が時間をかけて気化し、シートが柔軟性を失って硬化することで迎えます。

特にパナホームのベランダは、先ほどお話ししたタイルの二重構造によって紫外線からは守られていますが、その反面、湿気がこもりやすく、温度変化による熱収縮の影響を受け続ける過酷な環境にあります。

「メンテナンスフリー」という言葉の誤解

よく「塩ビシート防水はメンテナンスフリーです」という説明を耳にしますが、これはあくまで「数年ごとのトップコート塗装(保護塗装)が不要な場合が多い」という意味であり、「点検や補修が一切不要」という意味ではありません。

むしろ、シート防水はウレタン防水のように「定期的なトップコート塗り替え」を前提としない仕様が多い一方で、塗装を行う場合は材料の相性(可塑剤移行など)を踏まえ、メーカー指定の下塗り・上塗りや手順に限定して検討する必要があります。

そのため、いずれにしても交換時期を見極める定期的な診断が重要になります。

新築時にはメーカーによる保証が付帯していることが一般的ですが、実際に劣化が目に見え始めるのは、保証期間が切れた後の「築15年目以降」であることがほとんどです。

この「保証切れから寿命を迎えるまで」の数年間をどう管理するかが、建物を守るための最大の分かれ道になります。

国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(マンション向け)では、大規模修繕工事の周期について「一般的に12年~15年程度」といった考え方が示されており、外壁や防水などの計画的な見直しが重要とされています。

戸建てのベランダでも同様に、雨漏りなどの実被害が出る前に点検・予防保全を検討することが大切です。

(参考:国土交通省『長期修繕計画作成ガイドライン』

築年数別・メンテナンスの目安
  • 築10年目
    メーカー保証満了のタイミング。目視で異常がなくても、プロによる点検を受けるのが理想です。
  • 築15年目
    シートの硬化が始まり、端部の剥がれや浮きが出やすい時期です。部分的な補修や、早めのカバー工法(重ね張り)を検討する時期です。
  • 築20年以上
    シートの寿命を超えている可能性が高いです。まだ雨漏りしていなくても、いつ破断してもおかしくない状態のため、全面的な改修工事を強く推奨します。

特にパナホームの場合、新築時の品質が高いため、「うちは20年経っても見た目が綺麗だから大丈夫」と過信してしまいがちです。

しかし、寿命を迎えてカチカチになったシートは、ある日突然の大きな地震や台風の揺れに追従できず、一気に裂けてしまうリスクがあります。

「雨漏りしてから直せばいい」と考えていると、結果的に下地の鉄骨や木材交換を含む数百万円単位の大工事になってしまうことも珍しくありません。

築10年、15年、20年のタイムライン。築15年で劣化が始まり補修検討時期に入り、築20年を超えると寿命超過で全面改修が強く推奨されることを示す図。

変色や剥がれ・破れと熱割れのリスク

シートの劣化で最も注意が必要なのが、シート自体が硬くなって縮んでしまう現象です。

シートには、柔軟性を持たせるために「可塑剤(かそざい)」という成分が含まれていますが、これが長年の紫外線や熱によって徐々に気化して抜けていきます。すると、シートが硬化し、縮もうとする力が働きます。

この収縮力が強くなると、シートの端っこがめくれ上がったり、固定されている部分が引っ張られて破れたりします。

特にパナホームのベランダは鉄骨造で、気温変化による建物の「動き(熱伸縮)」が大きいため、硬くなったシートがその動きについていけず、パリッと割れてしまう「熱割れ」が起こりやすいのです。

見逃してはいけない劣化症状

  • 変色・退色
    シートの色が白っぽく褪せたり、逆に黒ずんだりしているのは表面劣化のサインです。
  • 熱割れ(クラック)
    硬くなったシートが夏の暑さや冬の寒さの伸縮に耐えられず、亀裂が入ってしまう現象です。
  • ジョイントの剥がれ・口開き
    シート同士を熱で溶着した継ぎ目(ジョイント部分)が剥がれて、口を開いている状態。ここが最大の浸水ポイントになります。
  • 出隅(でずみ)・入隅(いりずみ)の浮き
    壁の角や床の隅で、シートが浮いてパツパツに張っている状態は破断寸前です。

特に、シートの継ぎ目が口を開いている状態は非常に危険です。一見小さな隙間に見えても、そこから雨水が毛細管現象で吸い込まれ、見えないところで雨漏りが進行している可能性が高いです。

WPCパネルの下でこのような劣化が起きていないか、定期的なチェックが必要です。

ベランダ防水の劣化写真4選。1.変色・退色、2.ジョイント(継ぎ目)の口開き、3.入隅・出隅の浮き、4.熱割れを示し、これらが破断寸前のサインであることを警告。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

雨漏りと床の不具合:修理が必要な状態とは

パナホームのベランダ修理のご相談で、私が一番「これは急がないといけない」と感じるのが、「ベランダの床を歩くとフカフカする」「踏むと沈む感じがする」という症状です。

これは単なる防水シートの表面劣化ではありません。シートの下にある下地材(構造用合板やコンパネ)が、長期間にわたって侵入した雨水を吸い込み、腐食してボロボロになっている可能性が極めて高い状態です。

パナホームのベランダ床の一部には木質系の下地が使われていることがあり、防水層を突破した水がそこに滞留すると、木材腐朽菌が繁殖して強度を失わせます。

こうなると、防水シートの張り替えだけでは直りません。

一度防水層をすべて剥がし、腐った下地の木材や断熱材を撤去して、新しい合板で下地を作り直す「大工工事」が必要になります。当然、費用も通常の防水工事より高額になってしまいます。

また、排水ドレン(排水口)の周りも要注意ポイントです。

タイルの下に溜まったゴミや泥がドレンを詰まらせ、大雨の際に水がスムーズに流れずベランダがプール状態になる「プール現象」が起きることがあります。

水位が防水層の立ち上がり(壁際)の高さを超えると、サッシの下端や外壁との取り合い部分から水がオーバーフローし、室内に雨漏りするケースもあります。

天井にシミができていなくても、壁の中で断熱材が濡れてカビだらけになっていることもあるので、決して油断できません。

ベランダの防水シートをめくり、下の木製合板が長年の浸水で黒く腐食している様子を写した衝撃的な写真。床がフカフカする原因はシートではなく下地の腐食であることを解説。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

掃除と点検:パナソニックホームズの欠点対策

お客様から「パナソニックホームズのベランダに欠点はありますか?」と率直に聞かれることがありますが、建物の性能としての欠点というよりは、「構造上、掃除などのメンテナンスがしにくい」という点が課題かなと思います。

先ほどお話ししたように、WPCタイルの下には隙間から落ちたゴミやホコリ、洗濯物の糸くず、枯葉などが非常に溜まりやすい構造になっています。

これらが長期間堆積して湿気を含むと、腐葉土のように常にジメジメした状態になります。防水シートは本来水を弾くものですが、常に湿った泥が乗っている状態が続くと、加水分解や成分の劣化が早まり、寿命を縮めてしまうのです。

現場担当が推奨する掃除方法

理想を言えば半年に1回、少なくとも年に1回は、可能な範囲でWPCタイルをめくって、下のシート上のゴミを取り除いてあげてください。

タイルは端から持ち上げると外れる構造になっていることが多いですが、戻す位置がわからなくならないよう、写真を撮ってから外すのがコツです。

特に排水口周りのゴミ詰まりを完全に取り除くことが、誰でもできる一番効果的な雨漏り対策になります。

高圧洗浄機を使う場合は、水圧を強くしすぎるとシートの継ぎ目を傷める可能性があるので、弱めの水圧で洗い流すようにしましょう。

パナホームのベランダ防水シートを張り替える費用と業者選び

では、実際に不具合が見つかった場合、修理や張り替えにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

また、メーカーであるパナソニック ホームズに頼むべきか、私たちのような民間の防水専門業者に頼むべきか、非常に悩むところだと思います。ここでは、忖度なしに費用のリアルな相場と、業者選びのポイントを正直にお話しします。

バルコニー防水工事の費用相場と純正価格

まず、費用の目安ですが、採用する施工方法やベランダの広さ(平米数)、そして何より「下地がどれだけ傷んでいるか」によって大きく変わります。

一般的な戸建て住宅のベランダ(約10㎡~15㎡前後)を想定した費用感をまとめました。

依頼先・工法費用相場の目安 (一般的な広さの場合)特徴とメリット・デメリット
メーカー純正リフォーム (パナソニック ホームズ)約30万円~60万円以上 (下地補修や全面張り替えを含むと100万円超えも珍しくありません)【メリット】純正部材を使用し、建物の詳細データに基づいた施工が可能。既存の長期保証の延長条件になる場合が多い。 【デメリット】管理費・調整費・純正部材の手配等が含まれることがあり、費用が高めになりやすい傾向があります(工事範囲・足場の有無・下地補修量で大きく変動します)。
専門の防水工事業者 (塩ビシート機械固定など)約15万円~35万円程度 (WPCタイルの脱着・処分費や下地処理費を含む)【メリット】直接施工のため中間マージンがなく、適正価格で高品質な施工が可能。現場の状況に合わせ柔軟な工法提案ができる。 【デメリット】業者によって技術力に差がある。「塩ビシート機械固定工法」などの専門技術を持つ業者を選ぶ必要がある。

パナホーム純正のリフォーム部門に見積もりを依頼すると、どうしても大手ハウスメーカーとしての安心料や管理コスト、純正部材のコストが上乗せされるため、相場よりも高くなる傾向があります。

「防水シートの張り替えだけで数百万円と言われて驚いた」というお客様も少なくありませんが、これは足場代や、安全を最大限に考慮した大規模な下地交換が含まれているケースが多いです。

(参考:バルコニー床を再防水する(戸建リフォーム見積事例)|住まいるダイヤル

交換と補修:積水ハウスなど他社との比較

「近所のリフォーム屋さんに相談したら、『パナホームさんのベランダは特殊だから無理です』と断られてしまった」

これは、私がお客様から本当によく聞くお話です。パナホームに限らず、積水ハウスやヘーベルハウスといった大手鉄骨系ハウスメーカーの住宅は、一般的な木造住宅とは全く異なる独自の防水規格で作られています。

そのため、ハウスメーカーの構造を知らない一般的な塗装店では、「やり方が分からない」「下手に手を出して雨漏りさせたら責任が取れない」と敬遠してしまうのが実情です。

しかし、構造さえ正しく理解していれば、メーカー以外の専門業者でも「交換(全面改修)」や「補修」は十分に可能です。ここでは、他社メーカーとの違いを比較しつつ、パナホームのベランダ改修における「正解の工法」について解説します。

大手ハウスメーカー別・ベランダ防水の特徴比較

鉄骨系メーカーはそれぞれ特徴がありますが、共通して「建物の揺れ」に対応できる防水材を選定しています。

  • 積水ハウス
    塩ビシート防水やウレタン防水が多く採用されています。外壁目地のガスケット(定型シール)と同様、純正部材の入手が難しいため、汎用品での代替技術が必要です。
  • ヘーベルハウス
    露出タイプの防水シートが主流です。下地がALC(軽量気泡コンクリート)のため、湿気を逃がす通気性が特に重視されます。(参考記事:ヘーベルハウスの防水シート張り替え費用は?相場と業者選びを解説
  • パナホーム(パナソニック ホームズ)
    塩ビシートの上に「WPCタイル」が敷かれているのが最大の特徴です。改修工事の際、まずこのタイルを全て撤去・搬出する作業が必要になるため、他社よりも手間と費用が掛かりやすい傾向があります。

パナホーム改修の最適解 ①:塩ビシート機械固定工法(ディスク工法)

現在、シートの劣化が進んでいるものの、下地の腐食までは至っていない場合に最も推奨されるのが「塩ビシート機械固定工法」です。

これは、既存の古い防水シートを無理に剥がさず、その上から新しいシートを被せる「カバー工法」の一種です。

ただ被せるのではなく、既存シートと新シートの間に「絶縁シート(通気マット)」を挟み、専用のディスク(円盤)を打ち込んで機械的に固定します。

  • メリット
    古いシートを剥がす撤去費用や処分費がかかりません。また、絶縁シートが下地の湿気を逃がしてくれるため、施工後の「膨れ」などのトラブルが起きにくいのが特徴です。
  • パナホームへの適合性
    建物が鉄骨で揺れやすくても、ディスクで固定されたシートが柔軟に動いてくれるため、破断しにくく非常に相性が良い工法です。

パナホーム改修の最適解 ②:ウレタン防水通気緩衝工法

もし、「床がフカフカしている」など下地の腐食が疑われる場合や、ベランダの形状が複雑でシートを貼るのが難しい場合に選ばれるのが「ウレタン防水通気緩衝工法(つうきかんしょうこうほう)」です。

腐った下地を大工工事でやり直した後、通気性のあるシートを貼り、その上から液状のウレタン樹脂を流し込んで厚みのある防水層を作ります。

継ぎ目のないシームレスな仕上がりになるため、水が入り込む隙間を完全にシャットアウトできます。

また、この工法を行う際は、下地に含まれた湿気を外へ逃がすための「脱気装置(だっきそうち)」の設置が欠かせません。

なぜなら、雨漏りしていた下地には水分が残っており、それを逃がさないと新たな「膨れ」の原因になるからです。

脱気装置については、『防水工事の脱気装置とは?役割や必要性を現場のプロが解説』の記事にまとめてありますのでご覧ください。

FRP防水は「条件次第」:下地の動きと納まりで適否が分かれます

FRP防水はベランダで採用例の多い工法のひとつですが、下地の動きが大きい場合や納まりが複雑な場合は、ひび割れ等のリスクを考慮して別工法(通気緩衝工法、シート防水など)を提案したほうがよいケースもあります。

大切なのは「工法を決め打ち」せず、現状の下地・劣化・取り合い(立ち上がりやドレン等)を診断したうえで適否を判断することです。

パナホームの改修に最適な2つの工法図解。左は既存シートの上に新規シートを固定する「塩ビシート機械固定工法」、右は下地腐食や複雑な形状に適した「ウレタン防水通気緩衝工法」。

塗装とDIY:トップコートは自分で可能か

「ホームセンターで防水塗料を買ってきて、自分で塗れば安く済むのでは?」 「小さなひび割れくらいなら、コーキングで埋めれば直るだろう」

大切なお住まいだからこそ、少しでも費用を抑えてメンテナンスしたいと考えるのは当然のことです。

しかし、結論から申し上げますと、パナホームに採用されている塩ビシート防水に関しては、DIYでの塗装や補修は絶対におすすめしません。

「少し失敗しても、後でプロに頼めばいい」と軽く考えてしまいがちですが、実はこの「良かれと思って行ったDIY」が、後にとんでもない高額請求の原因になってしまうケースが後を絶たないのです。

現場のプロとして、その理由を包み隠さずお伝えします。

理由 ①:「ブリード現象」による不具合

最大の理由は、塩ビ系材料では「可塑剤移行」の影響で、上塗りがべたつく・密着しにくい等の不具合が起きることがある点です。

知識のないまま一般的な防水塗料を塗るのではなく、塗装を行う場合は可塑剤移行を考慮した下塗り材など、メーカー指定の材料・仕様で検討する必要があります。

これが「ブリード現象(可塑剤移行)」と呼ばれるトラブルです。

  • いつまでも乾かない
    可塑剤が塗料に浸透し、塗装面が溶解して数ヶ月経ってもベタベタし続けます。
  • 真っ黒に汚れる
    ベタついた表面に砂埃や虫が付着し、またたく間に黒ずんで美観を損ねます。
  • シートの寿命を縮める
    塗料がシートの成分を吸い出してしまうため、シート本体の硬化・劣化を早めます。

理由 ②:失敗した時の「リカバリー費用」が跳ね上がる

もしDIYで不適切な塗料を塗ってしまい、ベタベタの状態になったとします。その後、「やっぱりダメだったからプロに頼もう」と私たちにご相談いただいても、通常の工事ができなくなっていることが多々あります。

本来であれば、既存のシートを活かして上から新しいシートを被せる「カバー工法」で安く済ませられたはずが、ベタベタの塗料が邪魔をして新しいシートを固定できなくなります。

結果、「既存シートの全撤去・処分」という高額な工程を追加せざるを得なくなり、最初からプロに頼んでいればかからなかったはずの数十万円の無駄な出費が発生してしまうのです。

理由③:コーキングによる「雨水の出口封鎖」

雨漏りを防ごうとして、ホームセンターで買ったコーキング材(シーリング材)で隙間を埋める行為も非常に危険です。

建物の防水構造には、万が一入ってしまった水を外に逃がすための「水抜き穴」や「隙間」が計算されて設けられています。

素人判断で「ここが開いているから水が入るんだ!」と隙間を埋めてしまった結果、それが実は「雨水の出口」だったというケースが非常に多いのです。

出口を塞がれた水は壁の内部に溜まり続け、逃げ場を失って柱や梁を腐らせます。DIYのコーキング一箇所が原因で、壁を解体するリフォームが必要になった事例も実際に目にしてきました。

ユーザーができる「正しいメンテナンス」とは?

DIYで塗ったり埋めたりするのはリスクしかありませんが、以下のメンテナンスは非常に効果的であり、強く推奨します。

  • ドレン(排水口)の清掃
    泥や枯葉を取り除き、スムーズに水が流れる状態を保つこと。これが最強の防水対策です。
  • 定期的な目視点検
    「変色していないか」「フカフカしていないか」をチェックし、異変があれば早めにプロを呼ぶこと。
DIYによる塗料やコーキングがNGである理由を解説したスライド。ブリード現象による汚れや、雨水の出口を塞いで構造体を腐らせるリスクがあり、リカバリー費用が高額になることを説明。

どこに依頼したらよいか:専門業者とメーカー

最終的にどこに依頼するかは、お客様が何を最優先するかで決めるのが良いかなと思います。判断基準を整理してみましょう。

  • メーカー(パナソニック ホームズ)に依頼すべき方
    費用は高くても、建物の長期保証(35年保証など)の延長を最優先したい方。純正部材へのこだわりがあり、何より「ブランドの安心感」を買いたい方。
  • 防水専門業者・塗装店に依頼すべき方
    費用を適正価格に抑えたい方。中間マージンを払うより、その分を塗料のグレードアップや他の修繕に回したい方。メーカー仕様に詳しく、かつ柔軟な提案ができる熟練の職人に直接相談したい方。

私たちのような専門業者に依頼する場合は、「ハウスメーカー系住宅の施工実績が豊富にあるか」そして「防水施工技能士(シート防水・ウレタン防水など)等の資格や技能を有する職人が在籍しているか」をホームページ等で確認してください。

ただ安いだけの業者ではなく、構造を理解しているプロを選ぶことが成功の鍵です。

家を守るための3つの選択肢として、1.DIY(自分で修理)、2.メーカー純正(パナソニックホームズ)、3.専門業者(専門知識を持つプロ)を挙げているイラスト。

パナホームのベランダ防水シートを長く保護する秘訣

ここまで、パナホーム特有のベランダ構造や劣化のリスク、そして費用の現実についてお話ししてきました。

最後に、現場を知る私から、あなたの大切なお住まいを少しでも長く、そして無駄な出費を抑えて守り抜くための「秘訣」をお伝えします。

パナソニック ホームズ(旧パナホーム)は長期保証制度を用意しており、建物の耐久性・メンテナンス性を重視した考え方が示されています。

一方で、防水層は紫外線や雨風の影響を受ける「更新が必要な部位」です。決して「メンテナンスフリー」ではないということを、まずは心に留めておいてください。

秘訣は「早期発見」によるコストダウン

ベランダ防水の改修において、費用を抑える最大のポイントは「下地を腐らせないこと」に尽きます。

もし、「床がフカフカする」「雨漏りが室内に達した」という段階まで放置してしまうと、防水工事だけでなく、大工工事、内装工事、断熱材の入れ替えなど、工事の規模が一気に膨れ上がります。

逆に言えば、「下地が無事なうちに表面の防水層だけをリフォームする」ことができれば、既存の下地を活かしたカバー工法などが選択でき、工事費用は何分の一にも抑えることが可能です。

改修コストを抑える黄金ルール
  • ステージ1(築10~15年)
    表面の汚れや軽微な劣化。 → 点検・清掃・トップコート保護(ウレタン等の場合)で済み、費用は最小限。
  • ステージ2(築15~20年)
    シートの硬化・縮み・小さな口開き。 → 塩ビシート機械固定工法などで、下地を活かして再生可能。コストパフォーマンスが最も良い時期。
  • ステージ3(築20年~・雨漏り発生)
    下地腐食・床の沈み。 → 解体・撤去・下地交換・新規防水のフルコース。費用はステージ2の倍以上になることも。

台風シーズン前の計画的なメンテナンスを

防水工事は天候に左右されるデリケートな工事です。雨が続くと作業が進まず、工期が伸びてしまうこともあります。

そのため、雨漏りが起きてから慌てて業者を探すのではなく、梅雨や台風シーズンが来る前の、気候が安定した時期(春や秋)に余裕を持って計画することをおすすめします。

実際に工事が始まると「洗濯物はいつから干せるの?」「足場は必要なの?」といった疑問も出てくるかと思います。

具体的な工事期間の目安や着工から完了までの流れについては、『ベランダ防水工事の日数は?工法別の目安と流れを解説』の記事で詳しく解説しています。

まずは「プロの目」による診断を

もし現在、築15年を過ぎていて、一度もベランダのパネルをめくってメンテナンスをしていないのであれば、ぜひ一度専門家の診断を受けてみてください。

「まだ雨漏りしていないから大丈夫」ではなく、「雨漏りさせないために今の状態を知っておく」ことが大切です。

プロの診断を受ければ、あと何年くらい持ちそうか、今すぐやるべきか、数年後でいいのかという具体的なライフプランが見えてきます。

「まだ工事は必要ありませんよ」と言われるだけであっても、その「安心」を得るためだけに点検をする価値は十分にあります。

横浜市・川崎市・東京都で外壁塗装や防水工事をお考えの方へ

「床がフカフカする」「シートが切れている」その症状、放置すると下地交換で高額になる恐れがあります。

ベランダの床が沈む感覚や、シートの亀裂は「待ったなし」のサインです。雨水が内部に回り、鉄骨や木材を腐らせてしまう前に、専門家による適切な処置をご検討ください。

ステップペイントなら、パナホーム特有の納まりに対応した「塩ビシート機械固定工法」や「通気緩衝工法」で、建物を長持ちさせる施工が可能です。

「ちょっと見てほしい」「掃除の仕方を教えてほしい」「他社の見積もりが適正か知りたい」といった些細なことでも構いません。

しつこい営業は一切いたしませんので、大切なお住まいを守るパートナーとして、いつでもお気軽にご相談ください。


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