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アスファルト防水の絶縁工法とは?費用や特徴を現場のプロが解説

アスファルト防水の絶縁工法とは?費用や特徴を現場のプロが解説

こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。

建物の屋上や広いバルコニーの防水工事を検討していると、「アスファルト防水」という言葉をよく耳にするかと思います。

さらに調べていくと、「絶縁工法」や「密着工法」といった専門用語が出てきて、一体どれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

特に改修工事においては、既存の防水層の状態や建物の構造に合わせて適切な工法を選ばないと、せっかく高い費用をかけて工事をしたのに、すぐに「膨れ」が発生したり、雨漏りが再発してしまうなんてことにもなりかねません。

今回は、私たちが現場で実際に採用することの多い「アスファルト防水の絶縁工法」について、その仕組みや費用、メリットなどを、現場のリアルな視点から分かりやすく解説していきます。

記事のポイント

  • アスファルト防水における絶縁工法と密着工法の決定的な違い
  • なぜ絶縁工法だと防水層の膨れやひび割れを防げるのか
  • 工事にかかる費用の目安と信頼できる業者の選び方
  • 絶縁工法での施工が推奨される建物や環境の条件
目次

アスファルト防水の絶縁工法とは?基礎知識を解説

まずは、アスファルト防水の絶縁工法がどのようなものなのか、その基本的な仕組みや密着工法との違いについてお話ししていきましょう。

現場でもお客様から「なんでわざわざ防水層を浮かせたりするの? くっつけたほうが強いんじゃないの?」とご質問をいただくことが多い部分ですね。

仕組み

アスファルト防水の絶縁工法とは、その名の通り、防水層を下地(コンクリートなど)に完全に密着させず、あえて部分的に「絶縁(くっつけない)」させた状態で施工する方法です。

具体的にはどうやっているかというと、一番下の層に「あなあきルーフィング」などの特殊なシートを敷き込みます。このシートには直径数センチ程度の無数の穴が等間隔で開いています。

上から溶かしたアスファルトを流し込んだり、バーナーで炙ったりした際に、その穴を通ってアスファルトが下地に到達し、「点接着」することで固定されます。

つまり、穴の部分だけで建物と繋がっており、それ以外の面の部分は浮いた状態を作り出しているんです。

これにより、建物が地震などで動いても防水層が引っ張られず、独立して防水機能を保つことができるという、非常に理にかなった仕組みなんですよ。

仕組み
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

密着工法と絶縁工法の違いを比較

密着工法は、文字通り防水層を下地にべったりと全面的に接着させる工法です。

新築のコンクリートなど、水分を含んでいないきれいな下地には向いていますが、下地の影響をダイレクトに受けてしまうのが特徴です。

一方、絶縁工法は下地と防水層の間に空気の通り道(通気層)があるため、下地の影響を受けにくいという大きな違いがあります。

接着方法全面接着(下地と一体化)点接着(部分的・あなあきシート使用)
下地の影響受けやすい(ひび割れで破断しやすい)受けにくい(下地の動きを逃がす)
膨れリスク高い(水分が逃げ場を失うため)低い(通気層と脱気装置で排出)
主な用途新築、狭小部、ベランダ改修工事、屋上などの広範囲
歩行性能高い(ズレにくい)軽歩行(重歩行には補強が必要)

通気緩衝工法と呼ばれる理由

絶縁工法は、専門的な見積書や仕様書では「通気緩衝工法(つうきかんしょうこうほう)」と記載されることがよくあります。

「絶縁工法と何が違うの?」と混乱されるお客様も多いのですが、一般的には通気緩衝工法は絶縁工法の一種として位置づけられ、ほぼ同じ意味で使われています。

この「通気緩衝」という言葉は、この工法が果たしている2つの決定的な役割を、そのまま漢字で表しているんです。

1. 「通気」の効果:建物を呼吸させる

一つ目は文字通り、空気を通す役割です。下地コンクリートと防水層の間に、特殊なシートを使ってごくわずかな隙間(通気層)を作り出します。

建物は人間と同じように、内部に水分を含んでおり、常に微量な水蒸気を発しています。

密着工法のように蓋をしてしまうと湿気がこもってしまいますが、この工法では通気層が空気の通り道となり、湿気をスムーズに拡散させます。言わば、「防水層の裏側で建物を呼吸させてあげる機能」と言えます。

2. 「緩衝」の効果:動きを受け流すクッション

二つ目が、建物の寿命を延ばす上で非常に重要な「緩衝(かんしょう)」の役割です。

鉄筋コンクリートの建物は、頑丈そうに見えても、気温の変化による膨張・収縮や、地震の揺れによって常に動いています。その結果、コンクリートにはどうしてもひび割れ(クラック)が生じます。

もし防水層が下地にベッタリと張り付いていると、この下地のひび割れに引っ張られて、防水層まで一緒に裂けてしまう「共切れ(ともぎれ)」という現象が起きてしまいます。

しかし、通気緩衝工法では、間に挟んだシートが「緩衝材(クッション)」となり、下地の動きやひび割れのエネルギーを吸収・分散してくれます。

これにより、下地が割れても防水層には影響を与えず、表面の防水機能だけは健全に保つことができるのです。

プロの視点

現場では、この緩衝効果によって下地の挙動を防水層に伝えないことを「絶縁する」と表現します。

つまり、「絶縁工法」という呼び名は緩衝機能に注目した呼び方であり、「通気緩衝工法」は全ての機能を網羅した正式名称のようなもの、と理解していただくと分かりやすいかと思います。

通気緩衝工法と呼ばれる理由

脱気筒の役割と重要性

絶縁工法の施工された屋上を見上げると、キノコのような、あるいは小さな煙突のようなステンレス製の筒がポコポコと立っているのに気づくと思います。

これが「脱気筒(だっきとう)」と呼ばれる装置です。正式には「脱気装置」と言いますが、現場ではそのまま脱気筒と呼ぶことがほとんどですね。

この脱気筒は、単なる飾りや換気扇ではありません。絶縁工法(通気緩衝工法)というシステム全体を機能させるための、いわば「心臓部」とも言える非常に重要なパーツなのです。

湿気だけを排出し雨水は通さない仕組み

脱気筒の最大の役割は、防水層の下(通気層)に集まってきた水蒸気を外部へ逃がすことです。しかし、ただ穴が開いているだけでは、逆に雨水が侵入して雨漏りの原因になってしまいます。

そのため、脱気筒の内部は特殊な構造になっており、「湿気(気体)は外に出すが、雨水(液体)は中に入れない」という一方通行の機能を持っています。

これにより、防水層の下に溜まる蒸気圧を常に開放し続け、防水層の膨れを強力に防止しているのです。

適切な設置個数と場所がカギ

一般的には、メーカーや工法により異なりますが、30平方メートル〜100平方メートルに1個程度の割合で設置されることが多く、具体的な設置基準は使用する材料の仕様書に従います。

ただし、雨漏り直後でコンクリートが大量の水分を含んでいる場合などは、この基準よりも数を増やして、より排気効率を高める必要があります。

また、設置する「場所」も重要です。水蒸気は空気より軽く、高い方へ移動する性質があるため、基本的には屋根の勾配(傾斜)が高い位置、専門用語でいう「水上(みずかみ)」側に設置するのがセオリーです。

歩行の邪魔になる場合は?

「屋上を歩きたいけど、突起物が邪魔だ」という場合には、ステンレス製の背の高いタイプではなく、樹脂製などの背が低く平らな「ディスク型(平型)脱気装置」を使用することもあります。

機能やコストが変わるため、使用用途に合わせてご提案しています。

脱気筒の役割と重要性
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

膨れを防ぐ絶縁工法の効果

防水工事で最も多いトラブルの一つが「防水層の膨れ」です。特に雨漏りしている建物や築年数が経過したコンクリートは、私たちが想像する以上に内部に多くの水分を含んでいます。

晴れた日に太陽の熱で屋上が温められると、コンクリート内部の水分が水蒸気となり、体積が爆発的に増えます(水は気体になると体積が約1700倍にもなります!)。

この強力な圧力が逃げ場を探して防水層を押し上げ、ボコボコとした膨れを作ってしまうのです。

絶縁工法なら、この圧力を通気層を通してスムーズに脱気筒から逃がすことができるので、膨れのリスクを大幅に減らすことができるんです。これが改修工事で絶縁工法が選ばれる最大の理由です。

雨漏りのサインを見逃さないで

防水層の膨れやひび割れは、雨漏りの前兆かもしれません。特に「ボコボコと膨れている」「表面が風船のように盛り上がっている」といった症状は要注意です。

詳しい原因や補修方法については、『外壁塗装の膨れ補修方法!原因と費用をプロが解説』の記事でも解説していますので、気になる方はあわせてチェックしてみてください。

アスファルト防水絶縁工法の耐用年数

建物のオーナー様や管理組合様から最も多くいただくご質問の一つが、「結局、何年持つの?」という点です。

アスファルト防水の絶縁工法は、適切なメンテナンスを行えばおおむね15年〜25年程度という、他の防水工法と比べても長い耐用年数が期待できます。

条件が良い建物では、20年以上問題なく使われている事例も少なくありません。

これは、一般的なウレタン防水やシート防水と比較しても圧倒的な長さであり、私たちが「長期的に建物を守るならアスファルト防水」と自信を持っておすすめする最大の理由でもあります。

他の防水工法との耐用年数比較

各防水工法の一般的な耐用年数(期待耐用年数)を比較してみましょう。あくまで目安ですが、アスファルト防水の寿命の長さが際立っていることが分かります。

防水工法の種類耐用年数の目安特徴
アスファルト防水(絶縁工法)15年〜25年程度非常に高耐久で、条件が良ければ20年以上の長期使用も期待できる。
塩ビシート防水13年〜15年程度標準的な耐久性。シートの厚みによる。
ウレタン塗膜防水10年〜12年程度定期的なトップコート塗り替えが必須。

(参考:建築研究所による屋上防水の耐用年数データ | 国立研究開発法人 建築研究所

なぜこれほど長持ちするのか?

アスファルト防水がこれほど長寿命なのには、明確な物理的理由があります。

まず一つ目は「防水層の厚み」です。ウレタン防水やシート防水が1層〜数ミリ程度の厚みであるのに対し、アスファルト防水はルーフィングシートと溶解アスファルトを何層にも重ねて形成するため、圧倒的な厚みと強度を持ちます。

二つ目は、先ほど解説した「絶縁機能」です。密着工法のように下地のひび割れや挙動による「引っ張り」のストレスを防水層が受けないため、材料疲労が起きにくく、物理的な破断リスクが極めて低いのです。

外部からの衝撃にも強く、鳥のついばみや飛来物による損傷も起きにくいというタフさも兼ね備えています。

「メンテナンスフリー」ではない点に注意

ただし、誤解しないでいただきたいのは、「20年間何もしなくていい」という意味ではないということです。

防水層の表面を保護している「トップコート(保護塗料)」は、紫外線や雨風で徐々に劣化していきます。一般的には5年〜10年程度でトップコートの塗り替えを行うことが推奨されています。

このメンテナンスを怠ると、防水層本体がむき出しになり、紫外線劣化が早まってしまいます。「本体は20年持つエンジンだが、オイル交換(トップコート)は定期的に必要」と考えていただくとイメージしやすいかもしれません。

信頼性の証

アスファルト防水は100年以上の歴史を持ち、その信頼性の高さから、学校や市役所などの公共建築物でも広く採用されている代表的な防水工法のひとつです。

(参考:日本アスファルト防水工業協同組合によるアスファルト防水の解説

アスファルト防水絶縁工法の耐用年数

露出防水と保護防水の違い

アスファルト防水には、防水層がむき出しになっている「露出防水」と、その上にコンクリートを打って保護する「保護防水(押さえコンクリート仕上げ)」があります。

新築のマンション屋上などでよく見る、コンクリートで歩きやすくなっているのは「保護防水」です。一方、改修工事で絶縁工法を採用する場合は、重量の問題などから「露出防水」になることがほとんどです。

露出防水はメンテナンスがしやすく、不具合があった場合も発見しやすいメリットがありますが、直射日光や紫外線にさらされるため、定期的なトップコートの保護が重要になります。

あなあきルーフィングの特徴

絶縁工法の施工現場で、私たちが最初に敷き込んでいくのが「あなあきルーフィング」と呼ばれる特殊な下葺き材です。

一見すると、黒いシートにポツポツと穴が開いているだけのようにも見えますが、実はこのシートこそが、絶縁工法の「つかず離れず」という絶妙な機能を実現するためのカギを握っている超重要部材なんです。

「点接着」を生み出す計算された穴

このシートには、直径数センチ程度の穴が規則正しく無数に開けられています。

施工時、この上から200℃以上に溶けた熱々のアスファルトを流し込んだり、バーナーで炙ったりすると、溶融したアスファルトが穴を通って下地のコンクリートに到達します。

すると、穴の部分だけで下地に食いつく「点接着(てんせっちゃく)」という状態になります。イメージとしては、洋服のボタンや、リベット(鋲)で留めているような感覚に近いですね

。面でべったり貼り付けるのではなく、無数の点で固定することで、台風などの強風でも防水層が吹き飛ばされない強力な「固定力」を確保しています。

裏面の砂が作り出す「絶縁」と「通気」

あなあきルーフィングのもう一つの秘密は、その裏面にあります。

シートの裏側には、細かい砂(鉱物質粉粒)や特殊な剥離フィルムがあらかじめ付着しています。これにより、穴が開いていない部分は、上からどんなに熱を加えても下地にくっつくことがありません。

この「くっつかない部分」が、下地のひび割れの動きを逃がす「絶縁層」となり、同時に湿気をスムーズに移動させる「通気層(空気の通り道)」となるのです。

現場でこの材料を広げるたびに、「固定しながら動かす」という相反する機能を一枚のシートで実現した、本当によく考えられた製品だなと感心させられます。

アスファルト防水の絶縁工法にかかる費用と正しい選び方

機能面で非常に優れた絶縁工法ですが、やはり気になるのは費用面ですよね。「いいのは分かったけど、高すぎるのは困る」というのが本音だと思います。ここからは、コストやメリット・デメリット、そして信頼できる業者の選び方について、現場担当としての視点でお伝えします。

メリット

最大のメリットは、やはり「改修工事(リフォーム)に最適である」という点です。既存の防水層を全て剥がして撤去するのは、膨大な費用と処分費がかかりますし、騒音も出ます。

絶縁工法であれば、既存の防水層を撤去せずに上から被せる「かぶせ工法(オーバーレイ工法)」を行う際、下地に多少水分が残っていても施工が可能です。

また、建物が揺れたり下地にひび割れが入ったりしても、防水層が浮いているため一緒に切れてしまう「共切れ(ともぎれ)」が起きにくいのも大きな強みですね。長期的に見て、建物を守る力が非常に強い工法です。

メリットまとめ

  • 下地の水分を逃がせるので、施工後の「膨れ」トラブルが起きにくい
  • 下地のひび割れに追従するため、防水層が破断しにくい
  • 既存防水層を撤去しない「かぶせ工法」が可能で、廃材を減らせる
  • 耐久性が高く、長期間にわたって防水性能を維持できる

デメリット

一方でデメリットもあります。まず、部材が多く(あなあきシート、脱気筒など)、工程が複雑になるため、密着工法や簡易的なウレタン防水に比べて費用が高くなる傾向があります。

また、脱気筒という突起物が屋上に設置されるため、屋上を歩行する際に少し邪魔になることがあります。

さらに、基本的には「軽歩行(点検などでたまに歩く程度)」向けの仕様になるため、屋上を庭のように使いたい、頻繁に人が歩くといった「重歩行」仕様にする場合は、別途補強が必要になり、さらにコストがかかるケースもあるので注意が必要です。

デメリットまとめ

  • 密着工法よりも施工単価が高くなりやすい
  • 脱気筒が設置されるため、歩行やスペース利用の妨げになる場合がある
  • 基本は軽歩行向けであり、激しい使用には不向きなこともある

絶縁工法に適した建物や環境

私たちが絶縁工法をおすすめするのは、主に鉄筋コンクリート(RC)造のマンションやビルの屋上です。特に、以下のような条件に当てはまる場合は、絶縁工法が第一選択肢になります。

過去に雨漏りをしたことがある建物(下地に水分を含んでいる可能性が高いため)
既存の防水層が劣化してひび割れている場合
屋上の面積が広く、日当たりが良い場所(熱による水蒸気発生のリスクが高いため)

逆に、狭いベランダやバルコニー、複雑な形状をしていてシートを貼るのが難しい場所には、継ぎ目のないウレタン防水などが向いていることもあります。

他の防水工法との比較も気になる方へ

ウレタン防水やシート防水など、アスファルト防水以外の工法との違いや、メンテナンスのタイミングについては、下記のページでもよくある質問形式でまとめています。

防水工事の種類やメンテナンス時期に関するよくある質問』も、検討の参考にしてみてください。

絶縁工法に適した建物や環境
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

アスファルト防水絶縁工法の単価相場

費用は建物の状況や面積、荷揚げのしやすさによって大きく変わりますが、一般的な目安としては1平方メートルあたり5,500円~8,000円程度と考えておくと良いでしょう。

これだけ聞くと「ウレタン防水より少し高いかな?」と感じるかもしれませんが、これに加えて、脱気筒の設置費用(1基あたり15,000円~30,000円程度)や、下地の高圧洗浄費、下地調整費、既存防水層の撤去が必要な場合の処分費、改修用ドレンの設置費などがかかります。

安易に平米単価だけで比較せず、総額と工事内容のバランスを見ることが大切です。正確な金額は、必ず現地調査を行った上での見積もりで確認してください。

トーチ工法による施工手順の流れ

現在、改修工事におけるアスファルト防水の主流となっているのが「トーチ工法」です。

これは、改質アスファルトシートの裏面を大型のプロパンガスバーナーで炙りながら溶着させる方法です。標準的な施工手順は以下のようになります。

  1. 下地調整・清掃
    ゴミや苔を高圧洗浄などで除去し、プライマーを塗布して下地を整えます。
  2. あなあきルーフィング敷設
    一番下の絶縁シートを隙間なく敷き詰めます。この段階ではまだバーナーは使いません。
  3. 1層目の溶着
    改質アスファルトシートの裏面と、下地のあなあきシートをトーチバーナーで炙り、溶かしながら貼り付けます。
  4. 2層目の溶着
    さらに砂付きのアスファルトシートを重ねて、同様に溶着します。ジョイント(継ぎ目)はずらして貼ります。
  5. 脱気筒設置・仕上げ
    適切な位置に脱気筒を取り付け、端末部分をシール処理し、最後にトップコートを塗って完了です。

職人さんが大きな炎を出して作業するので迫力がありますが、確実な止水には熟練の技が必要です。

工事日数や具体的な流れが気になる方へ

今回はアスファルト防水を中心にご紹介しましたが、ベランダやバルコニーの防水工事について、工法ごとの日数や工程が気になるという方も多いです。

通気緩衝工法(絶縁工法)を含めた防水工事の流れや、工事中の注意点については、『ベランダ防水工事の日数は?工法別の目安と流れを解説』で詳しくまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。

トーチ工法による施工手順の流れ
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

常温工法や熱工法の種類について

現在のアスファルト防水改修では「トーチ工法」が主流とお話ししましたが、実は他にも大きく分けて2つの施工方法が存在します。

現場では建物の条件や予算に合わせて、これらを使い分けることもありますので、それぞれの特徴を知っておくと工法選びの参考になるはずです。

1. 伝統と信頼の「熱工法(ねつこうほう)」

アスファルト防水の中で最も歴史が古く、信頼性が高いのがこの「熱工法」です。現場に巨大な「溶解釜(ようかいがま)」を設置し、固形のアスファルトを200℃〜270℃という高温でドロドロに溶かします。

その溶けたアスファルトを柄杓(ひしゃく)で流しながら、ルーフィングシートを何層にも重ねていく、まさに職人技の工法です。

溶けたアスファルトが隙間なく行き渡るため、水密性(水を防ぐ力)は最強クラスです。しかし、施工中に強烈な臭いと黒煙が発生するため、住宅街や稼働中のビルでの改修工事には不向きです。

最近では、煙や臭いを抑えた環境対応型の材料も出てきていますが、主に新築の広い現場や、絶対に雨漏りが許されない重要施設などで採用されることが多いですね。

2. 火を使わない安全な「常温工法(冷工法)」

一方、火を一切使わないのが「常温工法(じょうおんこうほう)」、現場では「冷工法(ひやこうほう)」や「自着工法(じちゃくこうほう)」と呼ばれる方法です。

改質アスファルトシートの裏面に強力な粘着層(ゴムアスファルト)があらかじめ付いており、裏紙(セパレーター)を剥がしながら貼り付けていきます。イメージとしては、巨大な防水シールを貼っていくような感覚です。

火気厳禁の現場や、臭いを出せない現場では非常に重宝されます。ただし、他の工法に比べて材料費が高額になりやすいというデメリットがあります。

また、接着力を確保するためにシートを複数枚重ねる必要があり、防水層全体の重量が重くなりやすい点も考慮が必要です。

なぜ今は「トーチ工法」なのか?

このように比較すると、熱工法は「性能は良いが施工環境を選ぶ」、常温工法は「安全だがコストが高い」という特徴があります。

その点、トーチ工法は「多少の火は使うが釜ほど危険ではなく、臭いも少ない」「熱工法に近い溶着強度が得られる」「コストも抑えられる」という、まさに「いいとこ取り」のバランスを持っています。

そのため、現代の改修工事で最も選ばれているのです。

常温工法や熱工法の種類について

施工業者選びの重要なポイント

アスファルト防水、特に絶縁工法は高度な施工技術が必要です。トーチバーナーの炙り加減一つで接着力が変わりますし、脱気筒周りや立ち上がり部分の処理が甘いと、そこから雨漏りしてしまいます。

業者を選ぶ際は、単に「塗装屋さん」ではなく、「防水工事の専門知識があるか」を確認しましょう。

具体的には、「防水施工技能士(アスファルト防水工事作業)」などの国家資格を持っている職人が在籍しているか、過去に同規模のビルの屋上防水の実績があるかを必ず確認してください。

安さだけで選ぶと、施工不良による再工事のリスクが高まります。

(参考:全国防水工事業協会による防水施工技能者の資格制度

見積もりで確認すべき項目:手抜き工事を防ぐチェックリスト

見積書は、その業者の誠実さと技術力を測る「通信簿」のようなものです。合計金額の安さだけに目を奪われて、詳細が不明瞭な見積書で契約してしまうと、手抜き工事や追加費用のトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。

特に絶縁工法は、一般的な密着工法に比べて使用する部材が多く、工程も複雑です。私たちプロが他社の見積もりを見る際に、必ずチェックしているポイントを「チェックリスト」としてまとめました。

お手元の見積書と照らし合わせてみてください。

見積もりチェックリスト

  • 工法名
    「絶縁工法」「通気緩衝工法」「脱気工法」などの記載があるか
  • 重要部材1
    「あなあきルーフィング(絶縁シート)」が明記されているか
  • 重要部材2
    「脱気筒(脱気装置)」の設置個数と単価が含まれているか
  • 使用材料
    防水材のメーカー名や商品名が具体的に書かれているか
  • 下地処理
    高圧洗浄、下地調整、プライマー塗布などの工程が省かれていないか

「一式」見積もりには要注意

最も注意していただきたいのが、「屋上防水工事 一式 ○○万円」としか書かれていない見積書です。これでは、絶縁工法なのか密着工法なのかすら判断できませんし、どんな材料を使われるかも分かりません。

詳細な内訳を出してくれない業者は、工事内容をあいまいにしたい意図があるか、そもそも詳細な積算能力がない可能性があります。必ず明細(内訳書)を要求しましょう。

材料のメーカーと商品名の確認

信頼できる見積書には、使用する防水シートのメーカー名(例:田島ルーフィング、日新工業など)や、具体的な商品名(例:ガムクールなど)が記載されています。

これが書かれていないと、契約後に安い粗悪な材料を使われてしまっても文句が言えません。もし記載がない場合は、「どこのメーカーの何という材料を使いますか?」と質問してみてください。即答できない業者は要注意です。

保証内容と範囲の明記

工事が終わった後の「保証」についても、契約前に必ず確認が必要です。

「10年保証」と言っても、それが「防水層からの漏水」を保証するものなのか、単なる「施工箇所の剥がれ」だけを保証するものなのかで意味合いが大きく異なります。

また、保証書の発行元が「施工店(工事店)」だけなのか、材料を製造した「メーカー」との連名保証が出るのかも重要なポイントです。

メーカー連名保証が出るということは、メーカーが認める正しい手順で施工されたことの証明にもなります。

安すぎる見積もりの裏側

他社より極端に安い見積もりの場合、必要な工程(下地の補修やプライマーの塗布量など)を省いたり、脱気筒の数を減らしたりしてコストを下げている可能性があります。

防水工事において「安かろう悪かろう」は、建物の寿命を縮めることに直結します。金額だけでなく、「工事の内容(仕様)」をしっかりと見比べて判断することが大切です。

見積もりで確認すべき項目:手抜き工事を防ぐチェックリスト
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

アスファルト防水の絶縁工法で建物を長く守る賢い選択を

今回は、改修工事の現場で私たちが最も信頼を寄せている「アスファルト防水の絶縁工法」について、その仕組みから費用、施工のポイントまで詳しく解説させていただきました。

専門的な用語も多く、少し難しく感じられたかもしれません。

ですが、防水工事は決して安い買い物ではありません。だからこそ、「なぜこの工法が必要なのか」を正しく理解していただくことが、後悔しない工事への第一歩だと私は考えています。

最後に、この記事でお伝えした重要なポイントを改めて整理しました。

記事の要点まとめ

  • 「膨れ」対策として非常に有効な工法
    通気層と脱気筒で湿気を逃がし、防水層の膨れトラブルを大幅に減らします。
  • 圧倒的な長寿命
    下地の動きに追従するためひび割れに強く、建物や環境が適していれば20年前後以上の高耐久が期待できます。
  • リフォームに最適
    既存の防水層を撤去せずに上から施工できるため、廃材処分費を削減し、工期も短縮可能です。
  • 施工品質は「人」で決まる
    高度な技術が必要なため、価格だけでなく、資格や実績のある専門業者を選ぶことが成功の鍵です。

建物の屋上は、普段あまり目にすることのない場所ですが、紫外線や雨風、気温変化といった過酷な環境から、皆様の大切な資産を24時間365日守り続けてくれています。

もし現在、「雨漏りが起きている」「屋上の防水がボロボロになっている気がする」といった不安をお持ちであれば、手遅れになる前に一度専門家に見てもらうことを強くおすすめします。

私たちステップペイントでは、現地調査からお見積もりまで、経験豊富なスタッフが丁寧に対応させていただきます。「ウチの屋上にはどの工法がベストなの?」「まずは現状を知りたい」といったご相談だけでも大歓迎です。

ぜひお気軽にお声がけください。お客様の建物にとって最適なプランを、一緒に考えさせていただきます。

まとめ:アスファルト防水の絶縁工法で、建物を長く守る賢い選択を
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。
Information

本記事に記載されている費用や工法の特徴は一般的な目安です。建物の劣化状況や立地条件により異なる場合がありますので、正確な情報は公式サイトをご確認いただくか、専門家へ直接ご相談ください。


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