こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。

アパートの外壁工事が始まると、どうしても避けられない騒音や臭いで普段の生活リズムが崩れてしまい、ストレスを感じることがありますよね。

ベランダが使えず洗濯物が干せない不便さや、シンナーのようなきつい臭いで頭痛やめまい、喘息などの症状が出てしまうと、もう限界だと感じてしまうかもしれません。

実際に工事の音や振動がうるさくてノイローゼ気味になったり、大切なペットへの影響を心配されたりする声も現場でよく耳にします。

賃貸物件にお住まいで、これほど生活に支障が出るなら家賃減額は可能なのか、あるいは苦情を管理会社や大家さんに相談しても良いものか、迷われる方も多いのではないでしょうか。

時には業者に対して謝罪や賠償を求めたいと考えるほど追い詰められることもあるかもしれません。

知恵袋などでもよく見かけるこうした工事期間中のあるあるな悩みや、ゴミ出しのルール、エアコンやカーテンを閉め切る生活への対策について、少しでも気持ちを軽減し発散できるような方法を現場の視点からお話しします。

辛い期間を少しでも楽に乗り切るため、時には工事を無視して外出するなどの工夫も含めて一緒に考えていきましょう。

アパートの外壁工事で感じるストレスの原因と症状

アパートやマンションの外壁工事は、建物を長く維持するために必要なこととはいえ、居住者様にとっては非日常の連続です。

足場が組まれ、知らない職人が行き来する環境は、想像以上に心身に負担をかけるものです。まずは、具体的にどのようなことがストレスの原因になりやすいのか、現場でよく伺うお悩みを中心に整理してみましょう。

騒音や振動がうるさくてノイローゼになりそう

外壁工事の中で最もストレスを感じやすいのが、やはり「音」と「振動」です。特に足場の組み立てや解体時には、「カーン！カンカン！」という金属音が響き渡ります。

これは職人がハンマー（カケヤ）で鉄の部材を叩いて固定している音なのですが、どうしても大きな音が出てしまう作業なんですよね。

この音は非常に甲高く、不規則に鳴り響くため、いつ音がするかわからないという緊張感から強いストレスを感じやすくなります。

また、塗装の前に行う「高圧洗浄」では、エンジン音と水が壁に当たる音が長時間続きます。

一般的な住宅地では55デシベル以下が快適に暮らせる「環境基準」とされていますが、実は建設作業においては、法律（騒音規制法など）で85デシベル程度までの大きな音が許容されています。

つまり、工事現場では「法的な基準内」であっても、日常の快適な数値を大きく上回る80デシベル前後の音が発生してしまうのが現実なのです。（参考：騒音に係る環境基準について）

さらに、下地補修でドリルや電動サンダーを使う際には「ガガガガッ」「ウィーン」という振動が壁や柱を伝って部屋の中にまで響いてきます（固体伝搬音）。

在宅でお仕事をされている方や、小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、この音が原因で集中できなかったり、お昼寝ができなかったりと、精神的に追い詰められてノイローゼ気味になってしまう方もいらっしゃいます。

高圧洗浄の日の過ごし方や詳しい注意点については、『外壁塗装工事で行う高圧洗浄作業の所用時間や当日の注意点を解説』の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

塗料の臭いで頭痛や喘息などの体調不良に

塗装工事で避けて通れないのが「塗料の臭い」です。最近は環境に配慮した「水性塗料」を使うことが増えてきており、昔のような強烈なシンナー臭は減ってきています。

それでも、完全に無臭というわけではありません。塗料が乾燥する過程で、水分や微量の化学物質が揮発するため、独特のにおいが漂います。

特に注意が必要なのは、鉄部のサビ止め塗装や、ベランダ等の防水工事などで「溶剤（油性）塗料」を使用する場合です。これらは特有のきついシンナー臭が発生します。

化学物質に敏感な方（化学物質過敏症の方など）や、普段から偏頭痛持ちの方、喘息の持病がある方にとっては、この臭いが引き金となってめまいや吐き気、喉の痛みを催すこともあり、深刻な健康被害の悩みにつながりかねません。

（参考：1 有機溶剤による中毒等（平成23年） | 厚生労働省）

もし臭いが原因で体調が悪くなった場合は、無理をして部屋にとどまらず、早めに換気の良い場所に避難することが大切です。また、換気扇の使い方も重要になります。

実は、換気扇を回すことが逆効果になるケースもあります。詳しい換気対策については、『外壁塗装中は24時間換気を止めるべき？理由と臭い対策を徹底解説』で解説していますので、ご一読いただくことをおすすめします。

ベランダが使えず洗濯物が干せない悩み

「洗濯物が外に干せない」というのは、日々の家事においておそらく最も生活に直結する大きなストレスです。

ご家族が多いご家庭や、小さなお子様がいらっしゃる場合、毎日の洗濯物の量は相当なものですから、それがベランダに干せないとなると、家の中が洗濯物で埋め尽くされてしまいますよね。

外壁塗装の期間中、なぜベランダが使えないのかというと、単に「塗料が飛ぶから」だけではありません。

足場という限られたスペースで職人が安全に作業するための動線を確保する必要があることや、高圧洗浄の汚水が飛散すること、さらにはケレン作業（下地処理）で鉄粉や埃が舞うことなど、洗濯物を汚してしまうリスクがたくさんあるからです。

制限期間の目安と「干せるタイミング」の見極め

基本的には、足場が設置されてから解体されるまでの約2週間〜3週間は、原則として外干しNGとなるケースが多いです。しかし、全ての期間で絶対に干せないわけではありません。

現場の状況や使用する塗料、季節によっては、以下のようなタイミングで外干しが可能になることもあります。

• 作業がお休みの日（日曜・祝日など）
  職人が入らない日は、干しても問題ないことが多いです。
• 塗装工程以外の日
  養生（ビニール貼り）をする前や、検査の手直し期間など、塗料を使わない日は許可されることがあります。

部屋干しのストレスを減らすプロの知恵

長期間の部屋干し生活を乗り切るためには、ただ室内に吊るすだけでなく、少し工夫をして「乾くまでの時間」を短縮することがカギになります。現場担当者としておすすめしたい対策をご紹介します。

• 「部屋干し用」洗剤への切り替え
  生乾き臭の原因菌を抑える専用洗剤を使うだけで、不快な臭いはかなり軽減されます。
• サーキュレーターと除湿機の併用
  エアコンの除湿機能だけでは不十分なことも。洗濯物の真下からサーキュレーターで風を当て、水分を飛ばすのが最強の組み合わせです。
• カーテンレール干しは避ける
  よく見かけますが、カーテンレールに干すと洗濯物の湿気がカーテンや壁紙に移り、カビの原因になります。また、重みでレールが歪む原因にもなるため、突っ張り棒や室内物干しスタンドを活用しましょう。
• 浴室乾燥機のフル活用
  電気代はかかりますが、居住スペースを圧迫しない唯一の方法です。夜間の電気代が安い時間帯にまとめて乾燥させるのがおすすめです。

どうしても量が追いつかない時は、「この期間だけは割り切る！」と決めて、数日に一度コインランドリーを利用するのも賢い選択です。

大きなランドリーバッグに詰め込んで、乾燥まで一気に終わらせてしまえば、家の中もスッキリしますし、ふわふわの仕上がりで気分転換にもなりますよ。

期間はいつまで？窓やカーテンを開けられない

「いつまでこの薄暗くて息苦しい生活が続くの？」という先が見えない不安は、工事期間中のストレスを倍増させます。

一般的な2階建てアパート（6〜8世帯程度）の外壁塗装工事期間は、天候が順調であれば約2週間から3週間程度が目安です。

しかし、これが50世帯以上のマンションとなると数ヶ月単位になることもありますし、梅雨や台風シーズン、冬場の積雪などがあれば、工期はどうしても延びてしまいます。

この期間中、居住者様にとって最も過酷なのが「養生（ようじょう）」と呼ばれる期間です。

塗料が窓ガラスやサッシに付着しないよう、ビニールシート（マスカー）で窓全体を覆ってしまう作業なのですが、これをされると窓の鍵を開けることすらできなくなります。

窓が開けられないの期間はどれくらい？

誤解されがちなのですが、足場がある2〜3週間のあいだ、ずっと窓が開かないわけではありません。一般的に窓が完全に塞がれるのは、以下の工程の間です。

• 高圧洗浄の日
  水が入らないように閉め切ります（1日）。
• 塗装工程（下塗り〜上塗り）
  養生をしてから塗装が完了するまで（約1週間〜10日程度）。

つまり、工事期間中の中盤にある約1週間前後が、換気もできず窓も開けられない「我慢のピーク」になります。逆に言えば、足場の設置・解体期間や、塗装が終わって養生を撤去した後は、窓を開けて空気を入れることが可能です。

薄暗さと閉塞感への対策

この期間は、窓の外に「足場のパイプ」「黒いメッシュシート」「ビニール養生」という3つの遮蔽物がある状態です。

日中でも部屋の中は夕方のように薄暗く、プライバシー保護のためにカーテンも閉め切っていると、時間の感覚がなくなって気分が塞ぎ込んでしまうことがあります。

現場担当者としておすすめする対策は以下の通りです。

⒈毎朝起きたら照明を全開にする

日光が入らない分、室内の照明を明るくして体内時計をリセットしましょう。

⒉「開閉可能な養生」を相談する

実は、養生には換気用に窓を開けられる方法もあります。

全ての窓で対応できるわけではありませんが、「どうしてもお風呂の窓だけは開けたい」「リビングの換気だけはしたい」と事前に相談していただければ、開閉できるようにビニールを加工することも可能です。

⒊半分だけ開けてもらう

網戸に塗料がつかないよう配慮が必要ですが、塗装作業を行わない夜間だけ窓を開けられるように、養生の一部をカットする対応をしてくれる業者もいます。

なお、天候不良などで工期が延びてしまった場合、どれくらいまでなら許容範囲なのか、またなぜ遅れるのかという疑問については、『外壁塗装の工期遅れ！雨や職人不足の理由と対策・賠償の相場』の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。

エアコンが使えないなど生活制限がきつい

足場の設置や窓の閉鎖と並んで、生活に直撃するのが「エアコンの使用制限」と「ベランダ荷物の撤去」です。

特に真夏や真冬の工事において、エアコンが使えないことは単なる不便を超えて、熱中症などの健康被害に直結する死活問題です。

実は、多くの居住者様が「工事中はエアコンも我慢しなきゃいけない」と思い込んでしまっていますが、必ずしもそうではありません。ここには、現場の対応次第で変えられる部分と、どうしても制限される部分があります。

なぜエアコンが使えなくなるのか？室外機の養生問題

塗装作業中、塗料が飛散して汚れないように、ベランダに置いてあるエアコンの室外機にもカバー（養生）をかけます。このカバーの種類によって、エアコンが使えるかどうかが決まります。

密閉型（ビニールシート）

室外機全体をビニールで完全に包んでテープで留める方法。吸気も排気もできなくなるため、エアコンの使用は絶対にNGです。無理に運転すると故障や火災の原因になります。

通気型（メッシュカバー）

エアコン使用を前提とした専用のメッシュ状カバー。塗料の飛散を防ぎつつ空気を通すため、工事中でもエアコンを使えます。

ただし、通常時より吸排気の効率が落ちるため、冷暖房の効きが悪くなったり、電気代が多少上がったりする点には注意が必要です。

エアコンを「死守」するための事前交渉

最近の優良な業者はメッシュカバーを標準装備していますが、コスト削減のために普通のビニールで済ませる業者もまだ存在します。工事が始まる前に、管理会社や現場監督へ以下の2点を必ず伝えてください。

1. 「体調管理のために、工事中もエアコンを使いたいです」
2. 「室外機はメッシュタイプの養生カバーにしてもらえますか？」

この一言があるだけで、現場の対応は変わります。もしメッシュカバーがないと言われても、天板だけ養生して吹き出し口は開けておくなど、工夫して使えるようにしてくれるはずです。

ベランダの荷物が部屋を占拠する「圧迫感」

もう一つの大きなストレスが、居住スペースの圧迫です。足場を組む際や防水工事を行う際、ベランダは完全に空っぽの状態にする必要があります。

普段ベランダに置いている物干し竿、サンダル、植木鉢、スタッドレスタイヤ、子供の遊具、収納ボックス…。

これらを全て室内に取り込まなければなりません。ただでさえ窓が塞がれて閉塞感がある中、部屋の中に荷物が積み上がると、足の踏み場もなくなり、心理的な圧迫感は相当なものです。

どうしても室内に置き場所がない大きな荷物（タイヤや物置など）がある場合は、事前に管理会社へ相談してみてください。アパートの共用廊下や空き部屋、敷地内のデッドスペースなどに一時置き場を確保してくれるケースもあります。

ペットへの影響やストレスも心配

ワンちゃんやネコちゃんなど、ペットと一緒に暮らしている方にとって、工事は家族全員の問題です。

人間よりも聴覚や嗅覚が数倍も敏感な動物たちにとって、知らない人の気配、大きな金属音、シンナーの臭いは、私たちが感じる以上に相当な恐怖です。

普段はおとなしい子が吠え続けたり、震えて隠れてしまったり、食欲がなくなったり、ストレスでお腹を壊してしまったりと、体調を崩してしまうケースも少なくありません。

大切な家族が苦しんでいる姿を見るのは、飼い主様にとっても辛いことですよね。

塗料に含まれる有機溶剤などの蒸気は空気より重いものも多く、室内の空気の流れによっては床付近にたまりやすくなることがあります。そのため床に近い場所で生活するペットは影響を受けやすいといわれています。

工事期間中は、できるだけ音の聞こえにくい部屋の中央や奥の部屋にケージを移動させてあげたり、テレビや音楽を少し大きめにかけて外の音を紛らわせてあげるなどの配慮が必要です。

工事あるある？作業員の視線が限界

「窓の外を知らない男性が歩いている」という状況は、理屈では工事だとわかっていても、本能的に心理的な抵抗感が強いものです。

私たち職人は作業に集中していますし、部屋の中を覗かないように細心の注意を払っていますが、それでも居住者様からすれば「見られているかもしれない」「目が合った気がする」という不安は消えないと思います。

特に女性の一人暮らしや、お風呂上がりなどのリラックスしたい時間帯は、カーテン越しに人影が動くだけでもドキッとしてしまいますよね。

実際に「ベランダ越しに職人の話し声が聞こえて落ち着かない」というのもよくある話です。これが毎日続くと、家の中にいても気が休まらず、精神的に疲弊してしまう「あるある」な悩みです。

アパートの外壁工事でストレスを軽減する対策

原因がわかっていても、工事期間中は我慢するしかない…と諦める必要はありません。私たち現場の人間も、居住者様にはできるだけ快適に過ごしていただきたいと考えています。

ここでは、ストレスを少しでも軽くするための具体的な対策や考え方をご紹介します。

音や臭いを防ぐ具体的な対策グッズ

まずは物理的に音や臭いをシャットアウトする工夫をしてみましょう。最近は高性能なグッズもたくさんありますので、準備しておくと安心です。

対策グッズ	特徴とおすすめの使い方
ノイズキャンセリングイヤホン	騒音対策の鉄板です。周囲の雑音をデジタル処理で消してくれるため、驚くほど静かになります。足場工事や高圧洗浄の日は、これをして好きな音楽や動画に没頭するのが一番です。
耳栓	就寝時や集中したい時に。ドラッグストアで売っているシリコン製や低反発ウレタン製など、自分に合うものを探してみてください。遮音性の高い工事用耳栓も効果的です。
活性炭入りマスク	臭いがきつい時は、一般的な白い不織布マスクでは十分に防げません。有機溶剤の臭いを吸着する効果のある「活性炭入りマスク（グレー色のものが多い）」を使うと、完全に無臭にはできませんが臭いをかなり軽減できます。
空気清浄機	脱臭フィルターが高性能なものを窓際に設置すると、多少なりとも臭いを軽減できます。「活性炭フィルター」搭載モデルがおすすめです。

外出して気分を発散し工事を無視する

工事の音が一番うるさい日や臭いがきつい日は、思い切って家を空けるのも一つの手です。

「家にいなきゃいけない」と真面目に考えると辛くなりますが、「工事中は強制的なお出かけタイム」と割り切って、図書館やカフェ、ショッピングモール、コワーキングスペースへ出かけてみましょう。

特に、足場の仮設・解体の日と高圧洗浄の日は、在宅していても振動まで響くほどうるさいので、可能であれば日中は外出をおすすめします。

職人に気を遣って息を潜めて過ごすよりも、外に出てリフレッシュする方が、精神衛生上もはるかに良いかなと思います。

苦情は管理会社や大家へ相談すべき？

我慢の限界を超えた場合、どこに相談すべきか悩みますよね。基本的には、まずは管理会社や大家さんに相談するのが正解です。

直接職人に「うるさい！静かにして！」と感情的に伝えてしまうと、ご近所トラブルに発展する可能性がありますし、職人も工程通りに動いているだけなので困惑してしまいます。

相談する際は、「夜勤明けで昼間に寝ているので、午前中の大きな音が出る作業（ドリルなど）は避けてほしい」「子供が怖がって泣き止まないので、窓の近くでの作業時間を教えてほしい」など、具体的かつ冷静に「困っている事実」と「要望」を伝えると、管理会社を通じて現場監督に伝わり、可能な範囲で工程を調整してくれることがあります。

賃貸の家賃減額や賠償は可能か確認

「これだけ迷惑をかけられているのだから、家賃を下げてほしい」と考えるのは自然なことかもしれません。ただ、一般論としては外壁工事を理由とした家賃減額や賠償請求が認められるハードルは高いとされています。

建物の維持管理（修繕）は大家さんの義務であり、建物を利用する居住者にはそれを受け入れる「受忍義務（じゅにんぎむ）」があるという法的な考え方が一般的だからです。

つまり、「建物を直す間の一定の不便はお互い様」とみなされる場面が多いということですね。

ただし、事前の告知が全くなかった場合や、エアコンが使えない状態が真夏に長期間続いて熱中症になったなど、騒音や臭い・生活制限の程度が受忍限度を明らかに超えていると判断されるケースでは、家賃減額や損害賠償が認められる可能性も指摘されています。

こうした判断は個別事情によって大きく変わりますので、まずは「消費生活センター（消費者ホットライン：局番なし188）」や法テラスなど、公的な無料相談窓口へ問い合わせてみることをおすすめします。

（参考：民間賃貸住宅に関する相談対応事例集）

知恵袋で見られるトラブルと解決策

ネットの知恵袋などでも、外壁工事に関するトラブル相談は尽きません。よくあるのが「干していた洗濯物に塗料がついた」「駐車場に停めていた車にペンキの粉が飛んできた」といった物損トラブルです。

もしこういった被害に遭われた場合は、ご自身で洗ったり修理したりせず、すぐに管理会社へ連絡してください。

しっかりした施工業者であれば「請負業者賠償責任保険」などに加入していることが多く、加入している場合はその保険を使ってクリーニング代や修理費用の弁償対応が受けられる可能性があります。

泣き寝入りせず、被害状況の証拠となる写真を撮って報告しましょう。

業者への対応や謝罪を求めるケース

職人のマナーが悪かったり、敷地内にタバコの吸い殻が落ちていたりする場合、業者に対して謝罪を求めたい気持ちになることもあるでしょう。これも直接言うよりは、管理会社を通す方が角が立たずスムーズです。

私たち業者の立場からすると、居住者様からのご指摘はサービスの質を改善するチャンスでもあります。

「職人の私語が大きくて気になる」といった些細なことでも、不快な思いをされた場合は、遠慮なく管理会社に報告してください。

まともな業者であれば、誠心誠意謝罪し、すぐに現場へ指導を入れて改善策を講じるはずです。

ゴミ出しや防犯など細かな不安の解消

工事期間中は、ゴミ置き場の位置が変わったり、足場を使って不審者が侵入しやすくなったりといった生活上の不安もあります。

防犯対策はいつも以上にしっかりと

特に怖いのが防犯面です。足場があるということは、普段は届かない2階や3階の窓にも、外部から簡単にアクセスできてしまうことを意味します。

工事期間中は、たとえ高層階の部屋であっても、外出時や就寝時は窓の鍵を必ず閉めてください。窓用の補助錠を付けるのも効果的です。

また、カーテンは遮光性やミラーレース（昼間でも外から見えにくい）タイプのものにしておくと、視線を気にせず過ごせます。

ゴミ出しルールの確認

足場が立つことで、いつものゴミ収集場所が使えなかったり、ネットの場所が変わっていたりすることがあります。掲示板やポストに投函される「工事のお知らせ」チラシをよく確認しておきましょう。

もし不明点があれば、現場にいる監督や職人に声をかけて聞いてしまっても大丈夫ですよ。挨拶ついでに「ゴミ出し場所はここでいいですか？」と聞いていただければ、私たちも快くお答えします。

アパートの外壁工事で感じるストレスを乗り切るコツ

ここまで、騒音や臭い、生活制限への具体的な対策をお話ししてきましたが、最後に現場担当者として、どうしてもお伝えしたいことがあります。それは、「工事期間中は、頑張らなくていい期間」だと割り切ってしまうことです。

真面目な方ほど、「工事中もいつも通りに家事をしなきゃ」「ちゃんとした生活をしなきゃ」と無理をしてしまい、そのギャップに苦しんでしまいます。

約1ヶ月前後の非日常を、少しでも心穏やかに乗り切るための「心の持ち方」と「生活のコツ」をまとめました。

1. 「見通し」を持ってコントロール感を取り戻す

人間が最もストレスを感じるのは「いつ何が起きるかわからない」「いつ終わるかわからない」という状況です。逆に言えば、「明日は何が起きるか」を知っているだけで、ストレスは大幅に減ります。

週間工程表をチェックする習慣を

ポストに投函されたり、エントランスに掲示されたりしている工程表を、毎週末に必ず確認してください。

「水曜日は高圧洗浄だから洗濯物は出さない」「木曜日は音がうるさいから図書館へ行こう」と、ご自身のスケジュールを工事に合わせて調整することで、生活の主導権（コントロール感）を取り戻せます。

わからない時は聞く

「今日の作業は何時頃終わりますか？」と職人に聞くだけでも、「あと2時間我慢すれば静かになる」という明確なゴールが見え、気持ちが楽になります。

2. 家事のハードルを極限まで下げる

この期間だけは、「丁寧な暮らし」はお休みしましょう。不便な環境でいつも通りのパフォーマンスを出そうとするのは、ご自身を追い詰めるだけです。

• 洗濯
  「溜まったらコインランドリーで一気に乾燥まで済ませる」を基本ルールにして、日々の洗濯作業から解放されましょう。
• 掃除
  窓が開けられないので、換気ができず掃除機もかけにくいですよね。この期間は「クイックルワイパーで十分」と割り切りましょう。
• 食事
  キッチンが暗くて料理をする気が起きないなら、デリバリーや外食、お惣菜に頼ってください。「工事中だから仕方ない！」という大義名分をフル活用しましょう。

3. 職人との「小さな挨拶」で敵対心を減らす

意外かもしれませんが、現場の職人と少し言葉を交わすだけで、ストレスが軽減されることがあります。

「知らない不審な男たちが家の周りをウロウロしている」という感覚から「顔見知りの土橋さんが、今日も仕事を頑張ってくれている」という感覚に変わるだけで、足音や気配に対する恐怖心が薄らぐからです。

外出時に「おはようございます」「お疲れ様です」と声をかけていただくだけで十分です。

私たち職人も、居住者様とコミュニケーションが取れていると、「〇〇さんの部屋の近くだから、特に静かに作業しよう」という意識が自然と働きます。

外壁工事は、建物を綺麗にし、皆様がこれからも雨漏りなどの心配なく安心して住み続けるための大切なメンテナンスです。期間中はご不便をおかけしますが、私たちもできる限り配慮して作業を進めます。

何かあれば我慢せず、適切なルートで相談してくださいね。工事が終われば、見違えるように綺麗になったアパートで、また快適な生活が待っています。