
こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。
外壁塗装をご検討中のお客様から、「工事中は24時間換気システムをどうすればいいの?」「止めなきゃいけないって聞いたけど、部屋の空気はどうなるの?」といったご質問を本当によくいただきます。
結論から申し上げますと、塗装作業中は基本的に換気を止める必要があります。
今の住宅は気密性が高いので、スイッチを切ることへの不安や、いつからいつまで止めればいいのか、家の中がシンナー臭くなったらどうしよう…と、心配事は尽きないですよね。
特に小さなお子様がいるご家庭やマンションにお住まいの方は、なおさら敏感になる問題かと思います。
私自身も現場で多くの方からこうした相談を受け、対策を一緒に考えてきました。その経験を元に、工事期間中を安全かつ少しでも快適に過ごしていただくための方法を、現場目線で具体的にお話しします。
記事のポイント
- 外壁塗装中に換気システムを止めるべき理由と健康へのリスクがわかります
- 換気口からの臭い侵入やCO中毒を防ぐための具体的な対策を学べます
- 換気ができない期間中のエアコン使用や浴室利用のコツを解説します
- 夜間の換気可否や業者とのスムーズな連携方法について理解できます
- 1. 外壁塗装中は24時間換気を止めるべき?理由と影響
- 1.1. 塗装中に換気扇は止めたほうがいい理由
- 1.1.1. 有害物質の直接的な侵入
- 1.1.2. 健康被害のリスク
- 1.2. 換気システムを稼働させるとどうなる?
- 1.2.1. 排気口が塞がれることによる負荷
- 1.2.2. フィルターの目詰まりと性能低下
- 1.3. 換気口や換気フードから臭いが入る原因
- 1.3.1. 第3種換気の弱点
- 1.3.2. 負圧によるショートサーキット現象
- 1.4. 養生中の給湯器使用はCO中毒の危険あり
- 1.4.1. 一酸化炭素(CO)の逆流メカニズム
- 1.4.1.1. 【最重要】ガス機器使用の鉄則
- 1.5. マンションの部屋や家の中が臭い時の対策
- 1.5.1. 換気扇ではなく空気清浄機を活用
- 1.5.2. 一時的な避難も検討を
- 1.6. 換気を止めると室内に結露は発生する?
- 1.6.1. 生活上の工夫で湿気をコントロール
- 1.7. 排気口周辺の外壁汚れを防ぐ養生の必要性
- 1.7.1. 塗装直後の塗膜はデリケート
- 2. 外壁塗装工事で24時間換気を止める期間と具体的な方法
- 2.1. 換気停止はいつからいつまで必要?
- 2.2. 換気再開のタイミングは業者に確認しよう
- 2.2.1. 見た目だけで判断してはいけない「乾燥」の真実
- 2.2.2. 職人への確認は「作業日誌」や「連絡ノート」も活用しよう
- 2.2.2.1. 部分的な換気再開ができるケースも
- 2.3. 換気できない期間もエアコンは使える?
- 2.3.1. メッシュ養生の確認を
- 2.4. 浴室やトイレの換気はどう対処する?
- 2.4.1. トイレの臭い対策
- 2.4.2. 浴室のカビ対策
- 2.5. 窓を開けたい場合の養生テープの工夫
- 2.5.1. 部分的な開閉養生を依頼する
- 2.5.1.1. 知っておきたいポイント
- 2.6. 「夜は換気してもいい?」作業後の注意点
- 2.6.1. 「作業終了=無臭」ではありません
- 2.6.2. 見落としがちな「網戸」と「虫」の問題
- 2.6.2.1. 【重要】足場がある時の防犯対策
- 2.6.3. 翌朝の作業に影響が出る可能性も
- 2.7. スイッチ操作で誤作動を防ぐ確実な方法
- 2.7.1. 「物理ロック」が一番の解決策
- 2.7.1.1. テープ選びの注意点
- 2.7.2. ご家族への「共有」も忘れずに
- 2.7.3. ブレーカーを落とすのは最終手段?
- 2.8. 外壁塗装工事中に24時間換気を止める重要性
- 2.9. 止めることで守られる「3つの安心」
外壁塗装中は24時間換気を止めるべき?理由と影響
2003年の建築基準法改正以降、シックハウス対策として新築住宅などには機械換気設備(いわゆる24時間換気システム)の設置が義務付けられており、普段は「常時稼働」が原則です。
しかし、外壁塗装の工事期間中、特に塗装作業を行っている最中は、このシステムを一時的に「停止」していただくことを強くおすすめしています。
「法律で決まっている換気を止めても大丈夫なの?」と不安に思われるかもしれません。
しかし、短期間の工事やメンテナンスのために一時停止すること自体は想定されており、そのうえで工事中に換気を続けることには、健康面や安全面でいくつかの大きなデメリットやリスクが存在するのです。
24時間換気システムの法的な位置づけについては、国土交通省の「建築基準法に基づくシックハウス対策」のページでも詳しく解説されています。(参考: 建築基準法に基づくシックハウス対策について|国土交通省 )
塗装中に換気扇は止めたほうがいい理由
なぜ塗装作業中に換気扇は止めたほうがいいのか。その最大の理由は、シンプルですが「外部の有害物質を室内に取り込んでしまうから」です。
有害物質の直接的な侵入
換気システムは、室内の汚れた空気を外に出し、新鮮な外気を取り入れる仕組みになっています。
しかし、外壁塗装中は家の周りが塗料のミスト(霧状の塗料)や、揮発した溶剤(シンナー成分など)のガスで包まれている状態です。
この状態で換気扇を回してしまうと、フィルターを通しているとはいえ、ガス状の化学物質までは除去しきれず、ダイレクトに部屋の中へ引き込んでしまいます。
健康被害のリスク
特に油性塗料を使用する場合、シンナー臭は一度室内に入ると壁紙やカーテンに吸着してしまい、なかなか抜けません。これを長時間吸い続けると、頭痛、めまい、吐き気といった体調不良を引き起こす原因になります。
ご家族の健康を守るためにも、外気が汚染されている作業時間中は「外気を入れない」ことが最優先事項となるのです。
なお、室内空気中に含まれる揮発性有機化合物(VOC)などの化学物質については、厚生労働省が指針値や測定方法を定め、健康影響に配慮した管理を呼びかけています。(参考: シックハウス対策 – 化学物質|厚生労働省 )

換気システムを稼働させるとどうなる?
もし注意点を守らずに換気システムを稼働させ続けるとどうなるのでしょうか。臭いの問題だけでなく、大切な設備機器の故障リスクも考えられます。
排気口が塞がれることによる負荷
塗装工事では、塗料が飛散しないように窓や換気口(ベントキャップ)をビニールシートで覆う「養生(ようじょう)」という作業を行います。
もし、排気口がビニールで完全に塞がれている状態で換気扇のスイッチを入れてしまうと、空気の出口がないためモーターに過度な負荷がかかります。
これが長時間続くと、モーターの過熱や焼損、最悪の場合は故障の原因になりかねません。
フィルターの目詰まりと性能低下
第1種換気(給気・排気ともに機械で行うタイプ)の場合、給気ファンが外気を強制的に取り込みます。
もし稼働させたまま塗装を行うと、空気と一緒に塗料のミストを吸い込んでしまい、給気フィルターが一瞬で目詰まりを起こしてしまいます。
フィルターが塗料で固まると、本来の換気機能が失われるだけでなく、本体の交換が必要になるケースもあるため注意が必要です。
換気口や換気フードから臭いが入る原因
「換気扇を止めているのに、なぜか部屋が臭い気がする…」という経験をされる方もいらっしゃいます。これは、換気口や換気フードの隙間、あるいは日本の住宅特有の換気方式に関わる問題が原因であることが多いです。
第3種換気の弱点
日本の多くの戸建て住宅で採用されている「第3種換気」は、トイレや洗面所の排気ファンで室内の空気を出し、各部屋の壁にある自然給気口(レジスター)から外気を取り込む仕組みです。
負圧によるショートサーキット現象
このタイプの場合、排気ファンだけが回っていると、室内が「負圧(外より気圧が低い状態)」になります。
通常なら給気口から空気が入ってきますが、養生で給気口が塞がれていると、家はどこか別の隙間から空気を吸い込もうとします。
すると、養生されていないわずかなサッシの隙間や、壁のコンセントボックス、エアコンのドレンホースなどから、外の塗料臭を含んだ空気を強力に吸い込んでしまうのです。
これを防ぐためにも、排気側も含めてシステム全体を止めることが重要です。

養生中の給湯器使用はCO中毒の危険あり
ここでお話しすることは、今回の記事の中で最も重要な「命に関わる注意点」です。それは、ガス給湯器やガス式浴室乾燥機の使用についてです。
一酸化炭素(CO)の逆流メカニズム
外壁塗装中、塗料がかからないように給湯器の給排気トップ(煙突部分)がビニール養生で覆われていることがあります。
この状態で「お湯を使いたいから」と給湯器を使用すると、燃焼に必要な酸素が不足し、さらに排ガスが外に逃げられなくなります。
結果として不完全燃焼を起こし、猛毒の一酸化炭素(CO)が発生します。逃げ場を失った一酸化炭素が機器周辺に滞留し、窓や給気口などを通じて室内に流れ込むと、一酸化炭素中毒事故を引き起こす可能性があり大変危険です。
【最重要】ガス機器使用の鉄則
給湯器やバランス釜などのガス機器周辺が養生されている期間は、絶対に使用しないでください。一酸化炭素は無色無臭で、気づかないうちに意識を失う恐れがあります。
ご家族全員に周知し、リモコンに「使用禁止」の付箋を貼るなどの物理的な対策を強くおすすめします。
マンションの部屋や家の中が臭い時の対策
マンションや戸建てに関わらず、どうしても家の中が塗料臭くなってしまった場合の対策をご紹介します。
換気扇ではなく空気清浄機を活用
臭いがするからといって換気扇を回すと、さらに外の臭いを引き込んで逆効果になることが多いです。
有効なのは、活性炭フィルターを搭載した空気清浄機を稼働させることです。活性炭は揮発性有機化合物(VOC)を吸着する性質があります。
一時的な避難も検討を
消臭剤を置くのも一定の効果がありますが、根本的な解決にはなりません。もし、どうしても臭いが辛い、頭痛がするなど体調に影響が出そうな場合は、無理をしないでください。
溶剤の臭いが強い「下塗り・中塗り」の工程の日中だけでも、図書館やカフェ、ご実家などに外出して避難されることをおすすめします。数日間の不便はありますが、何よりもご自身の体調を第一に考えてください。

換気を止めると室内に結露は発生する?
24時間換気を止めると、湿気がこもりやすくなり、窓や壁に結露が発生するリスクはどうしても高まります。特に外気温との差が激しい冬場や、湿度が高い梅雨の時期は顕著です。
生活上の工夫で湿気をコントロール
結露を防ぐためには、室内の水分量を減らす工夫が必要です。
例えば、洗濯物の室内干しを避けてコインランドリーを利用する、除湿機をフル稼働させる、扇風機やサーキュレーターで室内の空気を循環させて空気が滞留しないようにするといった方法が有効です。
また、調理中に出る水蒸気も結露の大きな原因になりますので、換気扇が使えない期間は、長時間煮込む料理などは控えたほうが無難かもしれません。
排気口周辺の外壁汚れを防ぐ養生の必要性
もう一点、換気扇を回してしまうと「外壁汚れ」の原因になることもあります。これは「ダレ」や「変色」と呼ばれる現象に関係します。
塗装直後の塗膜はデリケート
塗装したばかりの壁は、まだ塗膜が完全に硬化していません。
この状態でキッチンの換気扇などを使用し、油分を含んだ空気が排気口から勢いよく吹き出すと、せっかくきれいに塗った外壁に油汚れが付着したり、排気の熱や成分で塗料が変色したりする可能性があります。
また、排気流が当たる部分だけ乾燥ムラができ、仕上がりに悪影響を及ぼすことも。美観を長く保つためにも、業者から「OK」が出るまでは換気扇の使用を控えるのが賢明です。

外壁塗装工事で24時間換気を止める期間と具体的な方法
「じゃあ、工事期間中ずっと息を止めて生活しなきゃいけないの?」と心配になるかもしれませんが、そんなことはありません。
適切なタイミングで換気を止め、使える時は使う。メリハリのある管理と、生活への影響を最小限に抑える方法について解説します。
換気停止はいつからいつまで必要?
基本的に換気を止める必要があるのは、「足場の設置後、養生を行ってから、足場解体前まで」の期間ですが、全期間ずっと止める必要がないケースもあります。
特に厳守していただきたいのは以下のタイミングです。
| 高圧洗浄時 | 大量の水を使用するため、水が浸入するのを防ぐために換気扇・24時間換気ともに完全停止が必要です。給気口も閉じておきましょう。 |
|---|---|
| 塗装作業中 | 溶剤の臭いやミストの吸入を防ぐため、職人が作業を行っている日中(おおよそ8時〜17時頃)は停止します。 |
| 養生期間中 | 排気口や給気口がビニールで物理的に塞がれている期間は、故障防止のため終日停止してください。 |
特に高圧洗浄の日は、想像以上の水圧がかかるため注意が必要です。詳しい注意点については、『外壁塗装工事で行う高圧洗浄作業の所用時間や当日の注意点を解説』の記事でも詳しく解説しています。

換気再開のタイミングは業者に確認しよう
換気システムや換気扇を「いつから使い始めていいのか」という判断は、実はプロでも慎重になるポイントです。
ご自身で「もう乾いているようだから」と判断せず、必ず担当の業者に「今日から換気扇を使っても大丈夫ですか?」と確認するのが一番確実で安心です。
見た目だけで判断してはいけない「乾燥」の真実
なぜ自己判断が危険なのかというと、塗料の「乾燥」には段階があるからです。
壁を触ってみて手に塗料がつかない状態(指触乾燥)であっても、塗膜の内部ではまだ化学反応が続いており、目に見えない揮発成分やガスが出続けていることがあります。
この段階で24時間換気のスイッチを入れてしまうと、フィルターが微細な成分を吸い込んで目詰まりを起こしたり、室内に独特な臭いが充満してしまったりする原因になります。
「見た目が乾いている=換気OK」とは限らないことを、ぜひ覚えておいてください。
職人への確認は「作業日誌」や「連絡ノート」も活用しよう
日中はお仕事などで不在にされており、職人と直接顔を合わせる機会が少ないお客様もいらっしゃると思います。その場合は、無理に朝早く声をかける必要はありません。
多くの塗装業者では「作業交換日記」や「連絡ノート」といったツールを用意しています。
そこに「明日の朝、キッチンの換気扇を使いたいのですが可能ですか?」と一筆書いておいていただければ、現場監督や職人が状況を確認して、翌日の回答を記入します。
私たち現場の人間にとっても、お客様の要望が文字で残っていると対応しやすく、非常に助かります。
工事中の不安や要望をどう伝えたらいいか心配な方は、コミュニケーションのコツをまとめた『外壁塗装でうるさい客と思われない!配慮と伝え方のコツ』の記事も参考になります。
現場に配慮しつつ、聞きたいことはきちんと伝えるためのポイントを整理しています。
部分的な換気再開ができるケースも
足場が外れるまで一切換気ができないわけではありません。
例えば「北面の塗装と養生撤去が終わったので、北側の部屋の給気口(レジスター)だけは開けても大丈夫ですよ」といったように、進捗に合わせて部分的に換気を再開できるケースも多々あります。
「全部終わるまで我慢」と思い込まず、こまめに相談していただくことが、工事期間中のストレスを減らすコツです。
換気できない期間もエアコンは使える?
「窓も開けられない、換気もできない、その上エアコンも使えないとなると生活できない!」と心配される方が多いですが、安心してください。基本的にはエアコンは使用可能なケースがほとんどです。
メッシュ養生の確認を
エアコンが使える条件は、室外機が空気を通す「専用のメッシュシート」や「カーゴ」で養生されていることです。
もし室外機が普通のビニールでぐるぐる巻きに密封されていたら、絶対に使用してはいけません。熱交換ができずに故障してしまいます。
夏場や冬場の工事では、エアコンが必須かと思いますので、見積もりの段階や工事前に「エアコンは使えるようにしておいてほしい」と伝えておくとスムーズです。
エアコンの使用などについては、『外壁塗装でカーテンは閉める?工事中の過ごし方と疑問解決』の記事も参考にして下さい。

浴室やトイレの換気はどう対処する?
浴室やトイレの換気扇も、外壁側の排気口(ベントキャップ)が養生で塞がれている間は使用できません。この期間の対処法をご紹介します。
トイレの臭い対策
トイレに関しては、換気扇が回せませんので、使用後に消臭スプレーを積極的に使用し、ドアを少し開けて廊下の空気を取り込むしかありません。簡易的な小型の脱臭機を置くのもおすすめです。
浴室のカビ対策
浴室については、入浴後は浴槽にお湯を溜めたままにせず、すぐに抜いてください。
その後、浴室のドアを開放し、脱衣所側から扇風機やサーキュレーターを浴室内に向けて回し、空気を強制的に循環させて乾燥させます。
壁についた水滴をワイパーやタオルで拭き取るだけでも、カビの発生リスクを大幅に下げることができます。

窓を開けたい場合の養生テープの工夫
長期間窓が開けられないのは、精神的にもストレスが溜まりますよね。実は、業者にお願いすれば「開閉できる養生」を行ってもらうことも可能です。
部分的な開閉養生を依頼する
全ての窓ではありませんが、リビングの掃き出し窓の半分や、寝室の窓など、どうしても空気を入れたい場所を指定していただければ、養生テープとシートを工夫し、窓の開け閉めができるように施工します。
追加の手間がかかる作業ではありますが、私たちのような施工店はお客様の快適さも重視しています。「ここは開けたい」という希望があれば、遠慮なく相談してみてください。
知っておきたいポイント
窓を開ける際は、網戸も一緒に養生されている場合が多いため、虫の侵入に注意が必要です。また、足場があるため防犯面には十分気をつけ、換気中も部屋を離れないようにしましょう。
「夜は換気してもいい?」作業後の注意点
「職人さんが帰った後の夜なら、もう作業していないし換気してもいいですよね?」というご質問もよくいただきます。日中閉め切っていた分、夜風を入れてリフレッシュしたいお気持ちは痛いほど分かります。
結論から申し上げますと、「条件が整えば可能だが、推奨はしない」というのが現場の本音です。作業自体は終わっていても、現場にはいくつかのリスクが残っているからです。
「作業終了=無臭」ではありません
まず知っておいていただきたいのは、職人が帰った後も塗料の「乾燥・硬化反応」は進んでいるということです。昼間に塗った塗料は、夜通し化学反応を起こして硬化していきます。
この過程で、目には見えませんが微量の揮発成分やガスが放出され続けています。
特に風のない夜に窓を開けると、外壁付近に滞留していたそれらのガスが、気流の関係で室内にスッと流れ込んでくることがあります。
「夜風を入れたつもりが、逆に部屋が臭くなってしまった」という失敗談は意外と多いため、臭いに敏感な方は夜間も窓を閉めておく方が無難です。
見落としがちな「網戸」と「虫」の問題
夜間に窓を開ける際、最大の盲点となるのが「網戸」です。外壁塗装の養生では、サッシだけでなく網戸も一緒にビニールで包んでしまっているケースや、網戸自体を取り外して保管しているケースが多くあります。
つまり、窓を開けると「網戸なし」の状態で外と繋がってしまう可能性が高いのです。夜、部屋の明かりにつられて虫が入ってきても防ぐ術がありません。
もし換気をするなら、必ず日中のうちに「この窓の網戸は使える状態か」を職人に確認しておいてください。
【重要】足場がある時の防犯対策
換気のために窓を少し開けて就寝されるのは、防犯上極めて危険です。足場は普段届かない2階の窓などへの「格好の侵入経路」になってしまいます。
メッシュシートで外からの視線も遮られているため、空き巣にとっては好都合な環境です。 夜間の換気は、あくまで「在宅中で起きている時間帯」に限定し、就寝前には必ず施錠確認を行ってください。
実際に、警視庁などの防犯情報でも「脚立やポリバケツなど、侵入の足場になるものを置かないこと」が重要な対策として挙げられています。
足場が組まれている外壁塗装中は、普段以上に窓の施錠や足場周りの確認を徹底することが大切です。(参考: 侵入窃盗の防犯対策|警視庁 )
翌朝の作業に影響が出る可能性も
もし夜間に換気をして、そのまま窓を閉め忘れて就寝してしまった場合、翌朝の作業に支障が出ることがあります。例えば、朝一番で高圧洗浄や吹付塗装の予定が入っていた場合、窓が開いていると作業が開始できません。
また、夜中に急な雨が降った場合、養生が開いているとそこから雨水が侵入し、塗りたての壁面を汚してしまうリスクもあります。「換気をするなら、寝る前に必ず閉める」。これを鉄則としていただければと思います。

スイッチ操作で誤作動を防ぐ確実な方法
「頭では分かっているのに、お風呂上がりやトイレの後に、いつもの癖で無意識にスイッチをパチっと押してしまった!」……これ、工事中のトラブルで本当によくあることなんです。
習慣とは恐ろしいもので、気をつけていてもふとした瞬間に体が動いてしまうんですよね。
もし、養生で塞がれた換気扇を回してしまうと、モーターに負荷がかかって故障したり、ダクト内の汚れが逆流してきたりと、悲しい結果を招きかねません。
これを防ぐために、私たちが現場でお客様に必ずお伝えしている、アナログですが「最強かつ確実」な誤操作防止テクニックをご紹介します。
「物理ロック」が一番の解決策
精神論で気をつけるのではなく、物理的にスイッチを押せない状態にしてしまうのが正解です。方法はとてもシンプル。ご家庭にあるマスキングテープや養生テープをご用意ください。
手順は以下の通りです。
- 換気扇や24時間換気のスイッチの上から、テープを「バッテン(×)」や「横一文字」に貼ります。
- そのテープの上に、油性マジックで大きく「工事中 使用禁止!」「押さない!」と書きます。
- これを、キッチン、お風呂、トイレ、洗面所、そして壁にある24時間換気のコントローラーなど、家中のすべての関連スイッチに行います。
こうしておけば、指がスイッチに触れる瞬間にテープの感触で「ハッ!」と気づくことができます。視覚と触覚の両方でストップをかけるわけです。
テープ選びの注意点
ガムテープや粘着力の強すぎるテープは避けてください。剥がす時にスイッチパネルの塗装が剥げたり、糊(のり)が残ってベタベタになったりしてしまいます。
100円ショップなどで売っている、剥がしやすい「マスキングテープ」や、私たちも使う緑色の「養生テープ」がおすすめです。
ご家族への「共有」も忘れずに
この対策のもう一つのメリットは、ご家族への周知徹底ができる点です。口頭で「換気扇使わないでね」と伝えただけでは、お子様や、普段操作しないご家族がついうっかり…ということが起こりがちです。
特に小さなお子様がいるご家庭では、「このテープが貼ってあるスイッチは、工事のおじさんが『触っちゃダメ』って言ってたよ」と教えてあげてください。
スイッチに目立つテープが貼ってあると、お子様もゲーム感覚でルールを守ってくれることが多いですよ。
ブレーカーを落とすのは最終手段?
「いっそのこと、ブレーカーを落としてしまえば確実では?」というご質問もいただきます。
確かに確実ですが、換気扇の回路が照明や他のコンセントと同じ系統になっている場合、それらも使えなくなってしまうので注意が必要です。
また、最近の高機能な24時間換気システムや浴室乾燥機の場合、電源を落とすと設定がリセットされてしまう機種もあります。
ブレーカー操作は、どうしてもスイッチでの対策が難しい場合の最終手段として、配線状況をよく確認してから行うようにしましょう。
外壁塗装工事中に24時間換気を止める重要性
ここまで、外壁塗装工事中の換気に関するリスクや対策について詳しくお話ししてきました。
正直なところ、普段当たり前のように行っている「窓を開ける」「換気扇を回す」という行為を制限される生活は、お客様にとって想像以上に不便で窮屈なものだと思います。
「ちょっとくらいなら回しても大丈夫なんじゃない?」と思ってしまうお気持ち、現場に立っている私にも痛いほどよくわかります。
しかし、あえて現場担当として心を鬼にしてお伝えしたいのは、この「換気停止」のルールだけは、どうか例外を作らずに徹底して守っていただきたいということです。
それは、単なる工事の都合や職人のやりやすさのためではなく、何よりもお客様ご自身とご家族の「命と健康」、そして大切な「資産」を守るための、絶対的な防衛策だからです。
止めることで守られる「3つの安心」
- 健康を守る
シンナーなどの溶剤ガスや、目に見えない塗料ミストを室内に引き込まず、シックハウス症候群のような体調不良を防ぎます。 - 命を守る
養生された状態でのガス機器使用による不完全燃焼を防ぎ、取り返しのつかない「一酸化炭素中毒事故」のリスクを限りなく小さくします。 - 資産を守る
換気システムのモーター故障やフィルターの目詰まりを防ぎ、塗りたての外壁を油汚れや変色から守ります。
特に一酸化炭素中毒のリスクについては、大袈裟ではなく命に関わる問題です。
「部屋の空気がこもる不安」よりも、「換気システムやガス機器を動かしてしまうリスク」の方が遥かに大きいということを、どうか心の片隅に留めておいてください。
もちろん、私たちステップペイントでも、ただ「止めてください」とお願いするだけではありません。
お客様の生活への負担を少しでも減らせるよう、開閉可能な窓養生の工夫や、換気ができるタイミングの積極的なお声がけなど、きめ細かな対応を心がけています。
「今日は洗濯物を部屋干ししたいから換気したい」「エアコンを使いたいけど大丈夫?」といった疑問があれば、どんな小さなことでも遠慮なく現場のスタッフに相談してください。
工事期間中の数週間はご不便をおかけしますが、この期間を安全に乗り越えれば、美しく生まれ変わった我が家での快適な生活が待っています。
お客様と私たちが協力し合うことで、トラブルのない、満足のいく外壁塗装工事を実現しましょう。
外壁塗装や防水工事に関するお悩みや相談など、なんでもお気軽にご相談ください。
ご相談やお見積もりは無料です。








