
外壁のシーリングにひび割れや目地の隙間を見つけ、「DIYでの増し打ちで補修できないか?」とお考えではありませんか。
外壁のコーキング補修には、既存の上から重ねる増し打ちというやり方とすべてを交換する打ち替えという方法がありますが、それぞれに注意点やデメリットが存在します。
もしかしたら、その補修は意味ないどころか、状況を悪化させてしまうかもしれません。
この記事では、DIYで増し打ちができる条件は何か、正しい道具や材料の順番、プライマーの重要性から、二度打ちしてもいいのか、専門業者に頼んだ場合の施工単価との比較まで、詳しく解説します。
この記事でわかること
記事のポイント
- DIYで増し打ちができる条件とできない条件
- 増し打ちと打ち替えのメリット・デメリット
- DIYで失敗しないための正しい手順と道具
- 業者に依頼した場合の費用相場との比較
- 1. 外壁のコーキングをDIYで増し打ちする基本と判断基準
- 1.1. そもそも外壁のシーリングとは
- 1.1.1. シーリングとコーキングの違い
- 1.2. 増し打ちと打ち替えの根本的な違い
- 1.2.1. 補修方法の比較
- 1.3. 増し打ちができる条件は何か
- 1.3.1. 1. 既存コーキングの劣化が軽微であること
- 1.3.1.1. ひび割れや剥離がある場合は増し打ち不可
- 1.3.2. 2. 構造上、打ち替えが難しい箇所
- 1.3.3. 3. あくまで応急処置と割り切れる場合
- 1.4. 増し打ちが意味ない?注意点デメリット
- 1.4.1.1. 増し打ちの主な注意点とデメリット
- 1.4.1.2. ⒈耐久性が極端に低い
- 1.4.1.3. ⒉十分な厚みを確保できない
- 1.4.1.4. ⒊密着不良のリスク
- 1.4.1.5. ⒋根本的な問題の先送り
- 1.5. 劣化後の二度打ちしてもいいのか
- 1.5.1. なぜ二度打ちはダメなのか
- 1.5.1.1. 接着性のさらなる低下
- 1.5.1.2. 厚みの不均一化
- 1.5.1.3. 劣化の連鎖
- 1.5.1.4. 将来的な補修コストの増大
- 1.6. 比較用の業者施工単価の目安
- 1.6.1.1. 総費用のシミュレーション(コーキング長150mの30坪住宅の場合)
- 2. DIYで失敗しない外壁のコーキング増し打ちを実践
- 2.1. 必要な道具材料と作業の順番
- 2.1.1. 必要な道具と材料リスト
- 2.1.2. 作業の基本的な順番
- 2.1.3. 増し打ちの作業フロー
- 2.2. 正しい増し打ちのやり方
- 2.2.1. Step1. 下地処理(清掃と乾燥)
- 2.2.2. Step2. 養生(マスキング)
- 2.2.3. Step3. プライマー塗布と乾燥
- 2.2.4. Step4. コーキング材の充填
- 2.2.5. Step5. ヘラならしとマスキングテープ除去
- 2.2.6. Step6. 乾燥(硬化)
- 2.3. 接着性を左右するプライマーの重要性
- 2.3.1. プライマーで失敗する主な原因
- 2.3.1.1. プライマーの省略
- 2.3.1.2. 不適合なプライマーの使用
- 2.3.1.3. 乾燥時間(オープンタイム)を守らない
- 2.3.1.4. 塗り忘れや塗りムラ
- 2.4. 目地隙間のひび割れ補修は可能か
- 2.5. 後悔しない!DIYで外壁のコーキング打ち増し
外壁のコーキングをDIYで増し打ちする基本と判断基準
- そもそも外壁塗装は本当に必要か?
- 10年での塗装は意味ないは本当か嘘か
- 放置は危険!劣化しているサイン
- 塗装しないとどうなる?家の寿命への影響
- 木造一戸建てのサイディングは要注意
そもそも外壁のシーリングとは
外壁のコーキング(シーリングとも呼ばれます)は、建物の防水性を担う非常に重要な部分です。
主に、サイディングボードのような外壁材のつなぎ目である「目地」や、窓サッシの周りの隙間を埋めるために充填されています。
この部分は、建物の美観を保つだけでなく、雨水の侵入を防ぎ、建物の構造体を守るという重大な役割を担っています。
このゴム状の素材は、単に隙間を埋めているだけではありません。
気温の変化によって外壁材が膨張したり収縮したりする動きに追従し、建材同士がぶつかり合って破損するのを防ぐクッションの役割も果たしています。
地震が多い日本では、建物の揺れを吸収し、外壁材へのダメージを軽減する役割も見逃せません。
もし、このシーリングが紫外線や風雨の影響で劣化して防水機能が失われると、雨水が壁の内部に侵入してしまいます。
内部に水が入ると、断熱材にカビが発生したり、建物の構造体である木材が腐食したりと、深刻なダメージにつながる危険性があるのです。
シロアリの侵入経路となることもあり、建物の寿命を大きく縮める原因になりかねません。そのため、シーリングは建物の寿命を守るための「第一の防水ライン」と言えるでしょう。
シーリングとコーキングの違い
建築業界では「シーリング」と「コーキング」はほぼ同義で使われていますが、厳密には由来が異なります。
本来、コーキングは油性のペースト状のもので表面のみが硬化するものを指し、シーリングは合成樹脂系で全体が硬化するものを指していました。
現在、住宅で使用されている高機能な弾性材はほとんどが「シーリング材」にあたりますが、慣習的に「コーキング」という呼び名も広く使われています。
(参考:「 コーキング材 」と「 シーリング材 」の違い(建築用語解説) | TOTOリモデルサービス)

増し打ちと打ち替えの根本的な違い
外壁コーキングの補修方法には、大きく分けて「増し打ち」と「打ち替え」の2種類があります。
どちらを選ぶかによって、耐久性や費用が大きく変わるため、それぞれの工法の違いを正確に理解しておくことが重要です。この選択が、将来のメンテナンスの手間やコストに直結します。
補修方法の比較
増し打ちとは、既存の古いコーキングを撤去せず、その上から新しいコーキング材を重ねて充填する方法です。
古いコーキングの除去作業がないため、手間が少なく、DIYでも比較的容易に挑戦できます。短時間かつ低コストで施工できるのが最大のメリットになります。
一方、打ち替えは、カッターなどを使って既存のコーキングを全てきれいに取り除き、新しいコーキング材を充填し直す方法です。
手間とコストはかかりますが、コーキング本来の厚みを確保できるため、防水性や耐久性が高く、長期間にわたって建物を保護できます。専門業者が行う基本的な工法はこちらになります。
項目 | 増し打ち | 打ち替え |
---|---|---|
工法 | 既存の上に新しいコーキング材を重ねる | 既存を全て撤去し、新しく充填する |
耐久性 | 低い(1~5年程度) | 高い(目安として10年以上) |
防水性 | 不完全な場合がある | 確実性が高い |
費用 | 安い | 高い |
工期 | 短い | 長い |
推奨される状況 | 応急処置、サッシ周りなど撤去が困難な箇所 | 長期的なメンテナンス、外壁塗装と同時施工 |
このように、増し打ちはあくまで一時的な応急処置という側面が強く、長期的な建物の保護を考えるのであれば、打ち替えが原則となります。
手軽さや費用の安さだけで増し打ちを選択すると、数年後に再び補修が必要になり、結果的に高くつく可能性があることを理解しておく必要があります。

増し打ちができる条件は何か
原則として「打ち替え」が推奨される中で、DIYでの「増し打ち」が選択肢となり得るのは、非常に限定的な条件下のみです。
ご自宅の状況が以下の条件に当てはまるか、専門家の視点で冷静に判断してください。安易な判断は、後々の大きなトラブルにつながりかねません。
1. 既存コーキングの劣化が軽微であること
増し打ちが可能なのは、既存のコーキングにひび割れや剥がれがなく、単に経年で厚みが減って細くなった「肉痩せ」の状態に限られます。
この状態であれば、古いコーキングがまだ壁面にある程度密着しており、新しいコーキング材を乗せるための下地として最低限の機能を保っていると考えられます。
そのため、上から新しい層を重ねる意味があります。
ひび割れや剥離がある場合は増し打ち不可
既にひび割れていたり、壁面から剥がれて隙間ができていたりする場合は、下地が機能していません。
これは、コーキング材が防水性能を失っているだけでなく、接着能力も失っている証拠です。
このような状態で上から増し打ちをしても、劣化した部分と新しい部分が密着せず、すぐに剥がれてしまうため、補修の意味がありません。
2. 構造上、打ち替えが難しい箇所
例外的に、プロの業者でも増し打ちを選択する箇所があります。それは窓や玄関のサッシ周りです。
サッシ周りのコーキングをカッターで撤去しようとすると、目地の奥にある「防水シート(または防水テープ)」を傷つけてしまうリスクが非常に高くなります。
防水シートは、万が一外壁から水が浸入した際に、それを躯体内部に入れないための最後の砦です。
ここを破損させてしまうと、コーキングの劣化とは比較にならないほど深刻な雨漏りの原因となり得ます。
この重大なリスクを回避するため、多くの専門家はサッシ周りに限っては、既存コーキングの状態が比較的良好であれば、無理に撤去せず「増し打ち」で対応するのが一般的です。
3. あくまで応急処置と割り切れる場合
数年以内に専門業者による外壁塗装や大規模なリフォームを計画している場合、それまでのつなぎとしての応急処置であれば、増し打ちは有効な手段です。
本格的な工事までの間、最低限の防水性を維持することを目的とするならば、コストを抑えた増し打ちは合理的な選択と言えるでしょう。
ただし、これも既存コーキングの劣化が軽微な場合に限られます。
DIYでの増し打ちは、「1階部分の、ひび割れがない、肉痩せしたコーキングに対する応急処置」というくらいに考えておくのが安全です。
少しでも判断に迷う場合は、無理をせず専門家に見てもらうことを強くお勧めします。

増し打ちが意味ない?注意点デメリット
手軽に見える増し打ちですが、多くのデメリットやリスクを抱えています。
DIYを検討する前に、なぜ多くの専門家が増し打ちを「意味ない」あるいは「推奨しない」と指摘するのか、その理由を深く理解しておく必要があります。
安易な選択が、かえって建物を傷める結果につながることもあります。
増し打ちの主な注意点とデメリット
⒈耐久性が極端に低い
最大のデメリットは耐久性の低さです。劣化した古いコーキングの上に新しいコーキングを重ねても、両者が完全に一体化するわけではありません。
土台となる古いコーキングがすでに劣化しているため、数年(早ければ1~2年)で再びひび割れや剥がれが発生する可能性が非常に高いです。
結果的に、何度も補修を繰り返すことになり、「安物買いの銭失い」となってしまうケースが少なくありません。
⒉十分な厚みを確保できない
コーキング材は、適切な厚みがあって初めて、十分な防水性と伸縮性を発揮します。増し打ちでは、新しいコーキング材の厚みを確保できないため、本来の性能を発揮できません。
さらに重要な点として、本来のコーキング工事は、目地の底に接着させない「二面接着」で仕上げることで、外壁の動きに合わせて伸び縮みできる「あそび」を確保しています。
しかし増し打ちをすると、古いコーキング(底)と両サイドの壁の「三面」に接着してしまいます。
これによりコーキングの動きが拘束され、外壁の伸縮に追従できずに早期にひび割れや破断を起こしてしまうのです。
⒊密着不良のリスク
古いコーキングの表面には、長年の汚れや油分、劣化した塗膜が付着しています。
これをDIYで完全に清掃するのは非常に難しく、少しでも汚れが残っていると、新しいコーキングがしっかりと密着しません。
これが原因で、施工後わずか数ヶ月で風船のように膨れたり、剥がれたりしてしまうケースも少なくありません。
⒋根本的な問題の先送り
増し打ちは、あくまで表面的な補修に過ぎません。コーキングの内部や、その奥にある防水シートが劣化している場合、増し打ちでは問題を解決できません。
むしろ、劣化のサインを一時的に隠蔽してしまい、気づかないうちに壁の内部で腐食が進行するという最悪の事態を招く恐れもあります。
これらの理由から、安易な増し打ちは短期的なコスト削減にはなっても、長期的な視点で見ると建物の寿命を縮めるリスクさえはらんでいるのです。

劣化後の二度打ちしてもいいのか
「一度増し打ちした箇所が再び劣化したので、もう一度上から増し打ち(二度打ち)してもいいのか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
特にDIYで手軽に済ませたい場合、このような考えが浮かぶのは自然なことです。
結論から言うと、増し打ちの二度打ちは絶対に避けるべきです。これは専門家であれば誰もが同意する見解です。
一度目の増し打ちでさえ、前述の通り多くの問題を抱えています。その上にさらにコーキング材を重ねる二度打ちは、問題をさらに悪化させ、状況を複雑にするだけの行為と言えます。
なぜ二度打ちはダメなのか
接着性のさらなる低下
「古いコーキング + 一度目の増し打ち」という、すでに不安定な層の上に新しいコーキングを重ねても、まともに接着することは期待できません。
層が厚くなるだけで、下から剥がれてしまえば何の意味もありません。
厚みの不均一化
層が重なることで、コーキングの厚みはさらに不均一になり、見た目が悪くなるだけでなく、応力が集中して非常に裂けやすくなります。
劣化の連鎖
下層のコーキングが劣化すれば、その上の層も追随して剥がれたり、ひび割れたりします。
何層重ねても、土台が腐っていればその上の建物が崩れるのと同じで、根本的な解決にはなりません。
将来的な補修コストの増大
いずれ本格的な補修(打ち替え)が必要になった際、何層にも重なったコーキングを撤去する作業は、通常よりもはるかに手間と時間がかかります。
これにより、撤去費用が割高になる可能性があります。
もし一度増し打ちした箇所が劣化した場合は、それは「増し打ちではもう限界」というサインです。
今度こそ全てのコーキングをカッターで完全に撤去し、下地をきれいにしてから新しいコーキングを充填する「打ち替え」を行う必要があります。
遠回りに見えても、それが最も確実で、最終的に大切なお住まいを守り、コストを抑えることにつながります。

比較用の業者施工単価の目安
DIYの費用対効果を判断するために、専門業者に依頼した場合の施工単価を知っておくことは非常に重要です。
DIYで節約できるのは主に人件費ですが、そのために失う品質や安全性を考慮すると、業者に依頼する価値が見えてきます。
費用は業者や地域、使用する材料のグレードによって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
工事内容 | 単価(/m) | 備考 |
---|---|---|
増し打ち | 700円 ~1,000円 | 既存コーキングの撤去費用がかからない。主にサッシ周りなど。 |
打ち替え | 900円 ~ 1,500円 | 既存コーキングの撤去・処分費用を含む。サイディング目地の標準工法。 |
足場設置費用 | – | 約15万円 ~ 20万円(30坪程度の一般的な戸建て住宅の場合) |
ここで最も注目すべきは、足場設置費用です。2階建て以上の建物を補修する場合、 作業員の安全確保のため、多くのケースで足場の設置が必要となります 。(参考:労働安全衛生法令における墜 落防止措置と安全帯の使用に 係る主な規定)
この足場代が、工事総額の大きな部分を占めることがあります。
総費用のシミュレーション(コーキング長150mの30坪住宅の場合)
- 増し打ちの場合: (800円/m × 150m) + 足場代18万円 = 約30万円
- 打ち替えの場合: (1,300円/m × 150m) + 足場代18万円 = 約37.5万円
このように、足場が必要になると工事は高額になります。そのため、コーキング補修のためだけに足場を組むのは非常に非効率と言えます。
最も賢明でコストパフォーマンスに優れた方法は、外壁塗装工事など、同じく足場が必要な他のメンテナンスと同時にコーキング工事(打ち替え)を行うことです。
これにより、足場代を一度で済ませることができ、複数の工事を効率的に進めることで、トータルコストを大幅に削減できます。

DIYで失敗しない外壁のコーキング増し打ちを実践
- 必要な道具材料と作業の順番
- 正しい増し打ちのやり方方法
- 接着性を左右するプライマーの重要性
- 目地隙間のひび割れ補修は可能か
必要な道具材料と作業の順番
DIYで増し打ちを行うと決めたら、まずは適切な道具と材料を揃えることから始めます。準備の質が仕上がりの質を決めると言っても過言ではありません。
特に材料選びは、補修の耐久性に直結するため慎重に行いましょう。これらの多くはホームセンターの塗料・補修材コーナーなどで購入できます。
必要な道具と材料リスト
分類 | 名称 | 選ぶ際のポイント |
---|---|---|
材料 | コーキング材(シーリング材) | 「変成シリコン」の「ノンブリードタイプ(NB)」を必ず選びましょう。耐候性が高く、上に塗装ができる外壁用の主流です。一般的なシリコーン系は塗装不可が多いため、使用前にメーカーの仕様書で必ず確認してください。外壁の色に近いカラーを選ぶと補修箇所が目立ちにくくなります。 |
プライマー | コーキング材との密着性を高める必須の接着剤です。使用するコーキング材のメーカーが推奨している適合品を必ず選んでください。メーカーや種類が異なると化学反応が起きず、接着不良の最大の原因となります。 | |
道具 | コーキングガン | カートリッジタイプのコーキング材を押し出す道具です。安価なもので十分ですが、液だれ防止機能が付いていると作業がしやすいです。 |
マスキングテープ | はみ出しを防ぎ、きれいな直線に仕上げるために使います。粘着力が強すぎず、糊残りがしにくい塗装用のものがおすすめです。幅18mm程度のものが使いやすいでしょう。 | |
ヘラ(ならしベラ) | 充填したコーキング材をならして平滑にする道具です。様々な形状や材質がありますが、目地の幅に合ったサイズのものを複数用意しておくと便利です。 | |
ブラシ・ウエス(布) | 施工前の清掃に使います。ワイヤーブラシや硬めのブラシ、きれいな布を用意しましょう。 | |
その他 | 作業用の手袋(汚れてもよいもの)、安定した脚立、ゴミ袋など、安全かつスムーズに作業できるものを準備します。 |
作業の基本的な順番
作業は以下の順番で進めるのが基本です。特に、①の清掃と④のプライマー塗布は仕上がりに直結する非常に重要な工程です。焦らず、一つ一つの工程を丁寧に行いましょう。
増し打ちの作業フロー
- 下地処理(清掃)
施工箇所の汚れ、ホコリ、油分、古い塗膜などをブラシで徹底的に除去する。 - 乾燥
清掃後、施工箇所を完全に乾燥させる。水分が残っていると接着不良の原因になる。 - 養生(マスキング)
補修箇所の両脇に、隙間なくマスキングテープを真っ直ぐに貼る。 - プライマー塗布
接着剤であるプライマーを、マスキングテープからはみ出さないように薄く均一に塗る。 - 乾燥
プライマーの製品説明書に記載された指定の乾燥時間を厳守します。特に夏場など、 指定された乾燥時間(オープンタイム)を超えないようにしてください。接着不良の原因となります。 - コーキング材の充填
コーキングガンを使い、目地に空気が入らないように少し多めに充填する。 - ヘラならし
ヘラで表面を平滑に仕上げる。余分なコーキング材は掻き取る。 - マスキングテープ除去
ヘラならし後、コーキングが乾く前に速やかにテープを剥がす。 - 完全乾燥
施工後、完全に硬化するまで(最低24時間以上)は触ったり水に濡らしたりしない。

正しい増し打ちのやり方
道具と材料が揃い、作業の順番を理解したら、いよいよ実践です。各ステップのコツを押さえることで、DIYでもプロに近い仕上がりを目指せます。
作業日は、気温が5℃以上で湿度が低く、雨の心配がない日を選びましょう。
Step1. 下地処理(清掃と乾燥)
仕上がりの8割はここで決まると言っても過言ではない、最も重要な工程です。
ブラシや固く絞ったウエス(布)を使い、既存コーキングの表面と周辺の壁についた汚れやホコリ、コケ、油分などを徹底的に取り除きます。
高圧洗浄機があれば理想的ですが、手作業でも時間をかけて丁寧に行いましょう。
この作業を怠ると、プライマーがしっかり機能せず、早期剥離の最大の原因となります。清掃後は、水分が残らないように半日~1日程度、完全に乾燥させてください。
Step2. 養生(マスキング)
補修する目地の両側に、マスキングテープを真っ直ぐに貼ります。このテープのラインが仕上がりのラインになります。
テープが浮いていると隙間にコーキング材が入り込んでしまうため、指でしっかり押さえて壁面に密着させることが綺麗な仕上げのコツです。
Step3. プライマー塗布と乾燥
前述の通り、プライマーはコーキング材の密着性を高めるために不可欠です。
小さな刷毛を使い、清掃した既存コーキングの表面に、マスキングテープからはみ出さないように注意しながら薄く、均一に塗り広げます。
塗りムラや塗りすぎは逆効果になることもあるので注意しましょう。塗布後、製品に記載されている指定の乾燥時間(オープンタイム)を必ず守ってください。
夏場と冬場では乾燥時間が異なる場合があるので、説明書をよく確認しましょう。
Step4. コーキング材の充填
カートリッジの先端ノズルを、目地の幅より少し小さいくらいのサイズで斜め45度にカットします。コーキングガンにセットし、目地の奥から手前に向かって、一定の速度と力で充填していきます。
空気が入らないよう、ノズルを軽く目地に押し当てながら、目地から少し盛り上がるくらいの量を充填するのが理想です。途中で止めるとムラになりやすいので、一気に引きましょう。
Step5. ヘラならしとマスキングテープ除去
充填後、すぐにヘラで表面をならします。ヘラに少し角度をつけて、余分なコーキング材を掻き取りながら、一方向へスーッと動かすのがコツです。
何度も往復させると表面が荒れてしまうので、一度か二度で仕上げましょう。余分なコーキング材はウエスで拭き取ります。
ヘラならしが終わったら、間髪を入れずにマスキングテープを剥がします。コーキング材が硬化し始めると、テープと一緒にコーキングの縁がめくれて仕上がりが台無しになります。
テープは内側(コーキング側)に向かって、ゆっくりと剥がすのがきれいに仕上げるポイントです。
Step6. 乾燥(硬化)
施工後は、コーキング材が完全に硬化するまで触れないようにします。表面は数時間で硬化しますが、内部まで完全に固まるには24時間以上かかります。
その間、雨に濡れないよう、天気予報の確認は必須です。

接着性を左右するプライマーの重要性
DIYでコーキング補修を行う際、最も軽視されがちで、かつ失敗の最大の原因となるのが「プライマー」の工程です。
地味な作業に見えるため、つい省略してしまったり、適当に塗ってしまったりする方がいますが、それは絶対にやってはいけない間違いです。
プライマーは、単なる下塗り材ではありません。
サイディングの壁や古いコーキングと、新しく充填するコーキング材の界面に塗布することで、両者を化学的に結合させ、強力な接着力を生み出す「仲人」の役割を果たす、極めて重要な材料です。
コーキング材自体の接着力は限定的であり、このプライマーがなければ、どんなに高品質なコーキング材を使っても壁面にしっかりと密着させることはできません。
この工程を省略したり、正しく行わなかったりすると、どんなに高価なコーキング材を使っても、その性能を全く発揮できず、補修は失敗に終わります。
プライマーで失敗する主な原因
プライマーの省略
「面倒だから」「費用を節約したい」といった理由でプライマーを塗らないと、接着力が大幅に低下し、施工後数ヶ月から1年程度でぺろりと剥がれてしまいます。これは最も多い失敗例です。
不適合なプライマーの使用
コーキング材には変成シリコン、ウレタンなど様々な種類があり、それぞれに適合するプライマーがあります。
例えば変成シリコン用のプライマーをウレタンコーキングに使うなど、適合しないプライマーを使うと、十分な接着力が得られません。必ず同じメーカーの推奨品を使いましょう。
乾燥時間(オープンタイム)を守らない
プライマーには、塗布してからコーキングを充填するまでの適切な作業時間「オープンタイム」が定められています。
プライマー塗布後、早すぎても溶剤が抜けきらず、遅すぎてもプライマー表面が硬化してしまい、どちらも接着不良の原因となります。製品説明書の時間を厳守することが不可欠です。
塗り忘れや塗りムラ
目地の一部に塗り忘れがあったり、塗布量が不均一だったりすると、その部分から剥離が始まります。薄く、均一に塗布することが重要です。
「コーキングの寿命と仕上がりの美しさは、プライマーで決まる」と言っても過言ではありません。この工程だけは、プロの職人になったつもりで、絶対に手を抜かないようにしてください。

目地隙間のひび割れ補修は可能か
「外壁の目地の隙間にできた、コーキングのひび割れを増し打ちで補修できますか?」という質問は、DIYを検討されている方から非常に多く寄せられます。
ひび割れは劣化のサインとして最も分かりやすいため、気になるのは当然のことです。
しかし、結論として、コーキングにひび割れ(クラック)や、完全に切れてしまっている破断が発生している場合、増し打ちによる補修は不適切であり、行うべきではありません。
なぜなら、ひび割れが起きている時点で、そのコーキングは紫外線などの影響で弾力性を失い、硬化してしまっているからです。
また、ひび割れはコーキングが外壁材の伸縮に耐えきれずに起きる現象であり、すでに壁面から剥離している可能性も高いです。
これは、もはや新しいコーキング材を強力に接着させるための、安定した下地として全く機能しないことを意味します。
ひび割れたコーキングの上に増し打ちをしても、劣化した硬い下地が動くことで、その動きに追従できず、上から被せた新しいコーキング層もすぐに同じようにひび割れてしまいます。
これは根本的な解決にならず、一時的にひび割れを隠すだけの、意味のない補修になってしまいます。
目地や隙間にひび割れを見つけた場合は、DIYで安易に増し打ちを行うのではなく、手間と費用がかかっても、既存の劣化したコーキングを全て撤去し、新しくコーキングを充填する「打ち替え」が必要不可欠になります。
ひび割れは、コーキングが寿命を迎えた明確なサインです。そのサインを真摯に受け止め、適切な方法で対処することが、建物を長持ちさせる上で非常に重要です。
もし自分で打ち替えを行う自信がない場合は、専門の業者に診断を依頼し、適切な処置を判断してもらうのが最も確実な方法です。

後悔しない!DIYで外壁のコーキング打ち増し
この記事では、外壁コーキングのDIYによる増し打ちについて、その基本から実践方法、注意点までを詳細に解説しました。
最後に、後悔しないための重要なポイントをまとめます。このポイントを理解し、ご自身の状況と照らし合わせることで、最善の選択ができるはずです。
- 外壁コーキングは建物の防水性を担う重要な部分である
- 補修方法には「増し打ち」と「打ち替え」の2種類がある
- 増し打ちは既存の上に重ねる応急処置的な方法
- 打ち替えは既存を全て撤去する根本的な補修方法
- 増し打ちは耐久性が低く、あくまで一時的な対策と心得る
- DIYで増し打ちができるのは、ひび割れのない「肉痩せ」状態のみ
- 窓サッシ周りは例外的に増し打ちが推奨される場合がある
- ひび割れや剥離がある場合は増し打ちでは意味ない
- 増し打ちを繰り返す「二度打ち」は絶対に避けるべき
- DIYで最も重要な工程は下地処理とプライマー塗布である
- プライマーはコーキング材に適合したものを使い、乾燥時間を厳守する
- 道具は変成シリコン・ノンブリードタイプのコーキング材などを準備する
- 2階以上の高所作業は危険なためDIYでは行わない
- 業者に頼む場合、足場代が高額になることが多い
- 長期的に見れば、外壁塗装と同時に「打ち替え」を行うのが最も経済的