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外壁のメンテナンスコラム

  1. 外壁のメンテナンスコラム
  2. コーキングレスサイディングのデメリットとは?後悔しない選び方

コーキングレスサイディングのデメリットとは?後悔しない選び方

美しい壁の裏側:コーキングレスサイディングの隠れたリスク

こんにちは。ステップペイントの現場担当 土橋 昭です。

新築のマイホーム計画や外壁のリフォームを検討される際、カタログやモデルハウスで見る「つなぎ目のない美しい外壁」に心を奪われる方は非常に多いです。

特に近年人気を集めているのが、継ぎ目のシーリング(コーキング)を目立たなくした「コーキングレスサイディング」や「目地なしサイディング」と呼ばれる外壁材です。

メーカーのパンフレットには「シーリングレスでメンテナンスフリー」「美しい外観が長持ち」といった魅力的な言葉が並んでおり、将来的な維持費を抑えたい施主様にとっては夢のような建材に見えるかもしれません。

しかし、私たちのような現場で施工や補修を担当する人間から見ると、そこにはメーカーがあまり大声では語りたがらない「構造的なリスク」や「運用上のデメリット」が確実に存在します。

実際に採用されてから数年後に、「地震で割れてしまった」「雨漏りが止まらない」「補修費用が予想以上に高額だった」と後悔されるケースも少なくありません。

金属サイディングなど素材によっても注意点は変わってきますので、メリットだけでなく、隠れたリスクもしっかりと理解した上で判断することが、長く安心して住める家づくりの鍵となります。

記事のポイント

  • シーリングレスの構造的弱点と地震リスク
  • 完全にはコーキングをなくせない現実
  • 将来のメンテナンス費用と補修の難しさ
  • 後悔しないための施工店選びのポイント
目次

コーキングレスサイディングのデメリットと構造リスク

「目地がないからメンテナンスが楽になる」という理由だけでコーキングレスサイディングを選ぶのは、少し早計かもしれません。

一見すると完璧に見えるその構造も、日本の気候風土や災害リスクと照らし合わせると、無視できない弱点が浮かび上がってきます。

実は、これまで当たり前のように存在していたコーキング(シーリング)には建物を守るための重要な役割があり、それをなくすことによる構造的な反動も存在するからです。

ここでは、現場のプロの視点から、カタログスペックだけでは見えてこない具体的なデメリットについて深掘りして解説します。

黒い背景に白文字で「その完璧が隠す3つの構造的リスクとは?」と書かれたスライド。カタログには載らない現実があることを示唆している。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

地震で割れる?シーリングレス工法の耐震性

コーキングレスサイディングを採用する上で、私が最も懸念しているのが、地震が発生した際の耐久性と破損リスクです。

一般的な窯業系サイディングでは、板と板の間に10mm前後(施工基準では8mm以上)の目地幅を設けるのが標準的で、そこにシーリング材を充填して止水性を確保します。

このシーリング材は単に水を防ぐだけでなく、建物が地震や強風で動いた際に、その微細な動きに追従して衝撃を吸収する「クッション(緩衝材)」としての役割も担っています。

一方、コーキングレス工法(四方合いじゃくり工法など)は、サイディングボードの四方を特殊な形状に加工し、専用金具などでガッチリと固定します。

これにより壁全体が「一枚の板」のように一体化して美しく仕上がるのですが、その反面、揺れや温度伸縮の「逃がし方」がシーリング目地とは根本的に異なります。

ここがデメリット:応力集中による破損リスク

大きな地震で建物が層間変形(平行四辺形のように歪む動き)を起こした際、逃げ場を失った板同士が「実(さね)」と呼ばれる接合部分で激しく押し合ったりすることがあります。

その結果、最も脆弱な実の部分に応力が集中し、パキッと割れたり、欠けたりするリスクが高まるのです。

もちろん、各メーカーも専用の留め付け金具(スライドクリップ等)を使用することで、ある程度の揺れを逃がす設計にはなっています。

しかし、施工要領通りの厳密な下地精度や伸縮目地の計画がなされていないと、その機能は発揮されません。

地震の後は、開口部まわりや釘(ビス)部分、外壁材にズレやクラック(ひび割れ)がないか重点的に点検し、異常があれば早めに施工店へ相談することが重要です。

(参考:窯業系サイディングと標準施工 第4版(PDF)|一般社団法人 日本窯業外装材協会

従来工法とコーキングレス工法の比較イラスト。従来工法はシーリングがクッションとなり衝撃を吸収するが、コーキングレス工法は実(さね)に応力が集中し、ひび割れが発生する様子を図解している。

窓周りの収まりや見切り材の隙間と雨漏り

「コーキングレス」という言葉から、「家中の全てのコーキングが不要になる」と誤解されている方がいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。

「コーキングレス(目地なし)」とは、主にサイディング同士の“見付け目地”を目立たせにくくする考え方であり、建物の全ての目地を完全になくすことは現在の建築技術では不可能です。

製品や納まりによっては、長尺の壁面で伸縮目地(シーリング)を別途設ける仕様もありますし、以下のような「異種部材との取り合い部分」には、構造上どうしてもシーリング処理や専用の役物(やくもの)が必要になります。

  • 窓サッシ(開口部)の周り
  • 玄関ドアの枠周り
  • 換気扇フード、エアコン配管、電気メーター等の貫通部
  • 建物の角(出隅・入隅)
  • 軒天や基礎水切りとの取り合い部分

特に窓周り(開口部の取り合い)は、納まりが複雑で防水処理の良否が雨水浸入に直結しやすい代表的なポイントです。

一部の高機能製品では、窓周りに「ドライジョイント工法」や専用の「見切り材(カバー)」を使用して、シーリングを露出させない施工方法もあります。

しかし、これはあくまで「見えなくしている」だけで、カバーの内側には止水のための一次防水としてシーリングやパッキンが存在しています。

(参考:サッシまわりの雨水浸入防止対策|一般社団法人 日本サッシ協会

隠れたリスク「サイレントキラー」

むしろ、私が現場で恐ろしいと感じるのは、「カバーで隠れているために劣化状況が目視できず、気づかないうちに内部で雨漏りが進行してしまう」というリスクです。

通常の露出したコーキングであれば、「ひび割れてきたからそろそろ補修しよう」と判断できますが、隠蔽された部分で破断が起きると、壁の中に水が回り、断熱材や柱を腐らせて初めて気がつくという事態になりかねません。

構造的な隙間や「合いじゃくり」の仕組みについては、『サイディングの隙間「あいじゃくり」とは?危険性と補修方法を徹底解説』の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。

窓枠(見切り材)の内部で壁内腐食が進む「サイレントキラー」の断面図。右側には、シーリング打ち替え費用よりも、コーキングレスの特殊な塗装手間賃の方が高くなることを示す棒グラフが描かれている。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

金属サイディングの通気不足による結露と防音

リフォーム、特に既存の外壁の上に新しい外壁を張る「カバー工法」などで人気の高い金属サイディングですが、これをコーキングレス仕様にする場合にも特有のデメリットがあります。

まず注意したいのが「壁内結露」のリスクです。これは外壁材が金属だから起きるという単純な話ではなく、断熱・防湿・通気・換気などの設計と施工条件の影響を強く受けます。

特にリフォーム(重ね張り等)では、既存の外壁の上に施工するため、通気層の確保や防湿・気密の連続性が崩れやすく、適切な計画なしに施工すると壁内結露のリスクが高まります。

その場合、内部の木材(胴縁や柱)が湿気で腐食してしまう恐れがあるため、既存下地の状態確認と、確実な通気・防湿計画を前提に施工方法を選定することが重要です。

(参考:住宅の省エネルギー 設計と施工 2023|国土交通省

また、金属サイディングは鋼板厚が0.27mm~0.5mm程度(製品により差があります)という仕様が一般的で、軽量で建物への負担が少ない一方、遮音性については下地構成や断熱材の仕様によって評価が分かれます。

多くの製品には裏面に断熱材が裏打ちされていますが、重量のある窯業系サイディングやコンクリートに比べると、構造によっては音を通しやすいと感じる場合があります。

音の響きやすさ:雨音の問題

特に寝室が2階にある場合や、ひさしがない窓の下などは、激しい雨や雹(ひょう)が降った際に、雨音が室内まで響いて気になり、安眠を妨げられるというご相談をいただくこともあります。

採用時は鋼板厚・断熱材・下地構成などの製品仕様をしっかり確認しましょう。

部分的な補修が困難な施工方法の盲点

私が現場担当として、これから家を建てる方やリフォームされる方に最も強くお伝えしたいデメリットが、施工後のメンテナンス性、特に「部分補修」の著しい難しさです。

生活していれば、予期せぬトラブルはつきものです。「台風で瓦が飛んできて外壁に当たった」「子供が投げたボールが直撃した」「駐車時に車をぶつけてしまった」など、外壁の一部が破損する可能性はゼロではありません。

そんな時、コーキングレスサイディングを選んでいると、修理の難易度と費用が跳ね上がってしまうことがあるのです。

なぜ「1枚だけの交換」ができないのか?

一般的なシーリングありのサイディングであれば、補修は比較的シンプルです。

破損した板の周囲にあるシーリングをカッターで切り取れば、物理的に他の板との縁が切れます。あとは固定している釘や金具を外せば、その1枚だけをスポットで交換することが可能です。

しかし、四方合いじゃくりのようなコーキングレス工法は違います。

構造はまるで「立体パズル」

コーキングレスの板は、上下左右の4辺すべてに凹凸(実:さね)があり、それらが隣り合う板とガッチリと噛み合って(インターロックして)固定されています。

この「噛み合わせ」は、下から上へと順番に積み上げることで成立しているため、壁の真ん中にある1枚だけを引き抜こうとしても、上下左右がロックされていて物理的に外れません。

サイディングボードがパズルのように噛み合っている図。中央の一枚を交換するために、上部の板を全て剥がす必要があり、足場費用がかかることを示している。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

修理のために「壁一面」を剥がすリスク

では、もし真ん中の1枚が割れてしまったらどうするのか。正規の手順で修理しようとすると、以下のような大掛かりな工程が必要になります。

  1. 破損した板の上にある外壁材を、屋根の付近(張り終わり)から順番に一枚ずつ剥がしていく。
  2. 破損した箇所まで壁を剥がし終えたら、ようやく新しい板と交換する。
  3. 剥がした板を(破損させないように慎重に)再度張り直していく。

たった1枚の交換のために、壁一面を解体・復旧するような作業が必要になるのです。当然、高所作業になるため足場の設置が必須となり、費用は数十万円単位に膨れ上がることも珍しくありません。

簡易補修の限界

「割れた部分をパテで埋めて塗装すればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、コーキングレス特有の凹凸の深いデザインや多彩な色合いを、補修塗装だけで完全に元通りにするのは至難の業です。

また、無理やり破損した板だけを電動ノコギリで切り刻んで外し、新しい板の実(さね)を削り落として接着剤で貼り付けるという荒療治もありますが、これは強度が著しく落ちるため、地震時の安全性やメーカー保証の観点から推奨できません。

将来のリフォームや設備設置への影響

この「後からいじれない」という特性は、将来的にエアコンを増設したり、給湯器を交換したりする際にもネックになります。

壁に配管用の穴を開ける際、万が一サイディングを割ってしまったら取り返しがつかないため、設備業者によっては「コーキングレスサイディングへの穴あけ工事はお断り(または免責)」とするケースもあります。

「メンテナンスの手間を減らすため」に選んだはずの高価な外壁材が、将来の生活の利便性を制限してしまったり、いざという時の修繕費を跳ね上げてしまったりするのは、なんとも皮肉な話です。

5年後の汚れや色あせと寿命の実態

「目地がないから汚れにくい」という宣伝文句も、半分正解で半分間違いです。確かに、従来のシーリング材に含まれる可塑剤(かそざい)が染み出して黒ずむ「ブリード現象」は発生しません。

その点では、目地汚れに悩まされることは減るでしょう。しかし、サイディングボード自体の汚れや色あせは、通常の製品と同じように進行します。

特にコーキングレスサイディングは、リアルな石積み調やタイル調など、表面の凹凸が深いデザインが多い傾向にあります。この深い溝には、ホコリ、排気ガス、コケや藻などの汚れが物理的に溜まりやすいのです。

また、新築時はぴったりと隙間なく施工されていても、5年後、10年後と時間が経つにつれて、建物の微細な動きや部材の伸縮により、継ぎ目の隙間がわずかに開いてきたり、ボードが反ったりする現象が起こり得ます。

そうなると、当初は見えなかった継ぎ目のラインが黒い影として目立ってくるケースも現場でよく目にします。

「30年メンテナンスフリー」などの謳い文句もありますが、それはあくまで「基材が割れにくい」ということであり、「美観が30年間新築同様に保たれる」という意味ではない点に注意が必要です。

価格に見合うのか?コーキングレスサイディングのデメリット

機能やデザイン性に優れたコーキングレスサイディングですが、導入の最大のハードルとなるのはやはり費用面です。ここでは、具体的なコストの違いや、契約前に確認すべき見積もりの注意点について掘り下げていきます。

目地なしサイディングの値段と見積もりの相場

コーキングレスサイディングは、一般的な汎用サイディング(14mm厚の釘打ち施工品や、標準的な16mm金具施工品)に比べて、材料費自体が高価です。製品グレードやメーカーにもよりますが、材料単価だけで1.5倍〜2倍近くになることも珍しくありません。

さらに、材料費だけでなく「施工費(工賃)」も高くなる傾向があります。その理由は以下の通りです。

コストアップの要因理由と背景
高い施工技術が必要四方合いじゃくりは数ミリのズレも許されない精密な施工が求められます。経験の浅い職人では対応できず、熟練の職人を手配する必要があるため、人件費が高くなります。
専用部材が高額本体だけでなく、出隅(コーナー材)、ジョイント金具、スターター、見切り材などの専用役物が、標準品に比べて非常に高価に設定されています。
工期が長くなる慎重なレベル出し(水平垂直の調整)や、複雑な役物の取り付け作業が必要で、通常のサイディング工事よりも日数がかかる場合があります。

見積もりを取る際は、単に初期費用の総額を見るのではなく、「将来のシーリング打ち替え費用(足場代含む)」と「初期費用の差額」を天秤にかけて検討することが重要です。

例えば、初期費用が100万円高くなるとして、将来削減できるメンテナンス費が本当に100万円を超えるのか、冷静なシミュレーションが必要です。

コストパフォーマンスを考える上での選び方については、『つなぎ目が目立たないサイディングの選び方【決定版】』の記事も参考にしてください。

ケイミューやニチハ製品の価格と特徴を比較

国内の外壁材シェアを二分する大手メーカー、ケイミュー(KMEW)とニチハも、それぞれ魅力的なシーリングレス製品を展開しています。それぞれの特徴とコスト感を現場目線で比較してみましょう。

ニチハ「Fu-ge(フュージェ)」シリーズ

「四方合いじゃくり」の代表格として知名度が高いシリーズです。左右だけでなく上下の継ぎ目も目立ちにくいのが最大の特徴です。標準的な「Fu-ge」と、より高耐久な「Fu-geプレミアム」があります。

(参考:Fu-ge(フュージェ)|外壁材商品検索|ニチハ

【Fu-geの注意点】

専用部材の使用や、メーカーが認定した登録施工店による施工が推奨されるなど、施工品質の管理が厳しい製品です。その分、施工単価は高めに見積もられることが多いです。

ケイミュー「レジェール」等の高機能シリーズ

ケイミューは、深い彫りと本物の石のような素材感を追求した製品が多く、デザイン性を重視する方に人気です。特に「光セラ」という光触媒コーティングと組み合わせることで、汚れを雨で洗い流す機能を持たせています。

(参考:次世代外装パネル レジェール|ケイミュー

レジェールの注意点】

こちらも重量があり、施工には高い技術が必要です。また、光セラのグレードによっては初期投資がかなり大きくなります。

リクシルの外壁や後付けリフォームの注意点

リクシル(旭トステム外装)の「ガーディナルSmart」なども、シーリングレス工法の先駆けとして非常に人気があります。しかし、リフォームでこれらの製品を「後付け(重ね張り・カバー工法)」する場合、特に注意が必要です。

既存の外壁の上から新しいサイディングを張るカバー工法は、廃材が出ずコストを抑えられるメリットがあります。

しかし、窯業系のコーキングレスサイディングは、厚みがあり(16mm〜21mmなど)、重量も重い製品が多いため、古い家屋の柱や基礎、構造体に過度な負担をかけてしまう可能性があります。

耐震性を第一に考えると、重い窯業系よりも軽量な金属系サイディングが有利ですが、前述の通り金属系には遮音性や凹みやすさといったデメリットもあります。

建物の構造診断をしっかり行った上で選定しないと、外壁だけ新しくなっても、家自体の寿命を縮めかねません。

DIYは危険?ブログやレビューの失敗談

最近はYouTubeなどの動画サイトで本格的なリフォーム動画を見る機会も増え、「材料さえネットで買えば、自分でも安く施工できるのでは?」とDIYに挑戦される方が増えています。

しかし、断言させてください。

こと「コーキングレスサイディング」のDIY施工に関しては、プロの私から見ても絶対におすすめできません。

内装の壁紙や棚の取り付けとは異なり、外壁は「雨風から家を守る」という機能の根幹に関わる部分です。実際に、ネット上のブログやDIYレビューには、安易に手を出してしまったがゆえの悲惨な失敗談が数多く報告されています。

よくある失敗談:ブログやSNSでの悲鳴

DIYチャレンジャーたちが直面したトラブルの代表例をいくつかご紹介します。これらは決して施工者の不器用さが原因ではなく、工法そのものの特異性に起因するものです。

  • 「実(さね)が全く嵌まらない」
    コーキングレス特有の四方合いじゃくりは、パズルのように精密な噛み合わせが必要です。人力で押し込んでも入らず、ゴムハンマーで無理に叩いた結果、大切な実の部分がバキッと割れて使い物にならなくなった事例。
  • 「張り進めるうちにズレが拡大した」
    1段目は良くても、積み上げていくうちにわずかな水平のズレが蓄積され、最終的に上部の板が全く入らなくなったり、大きな隙間が空いてしまったりして、全て剥がしてやり直す羽目になった事例。
  • 「専用工具がなくて詰んだ」
    専用の留め付け金具やスターター金具を取り付けるための特殊な治具や工具が必要だと施工中に気づき、作業が中断してしまった事例。

プロでも難しい理由:下地精度の壁

コーキングレス工法が難しい最大の理由は、サイディングを張る前の「下地(胴縁)」の精度にあります。

通常、木造住宅の壁面は完全な平面ではありません。プロの職人は、数ミリ単位のパッキン(スペーサー)を駆使して、下地の凹凸(不陸:ふりく)を完璧に平らに調整してからサイディングを張ります。

この「不陸調整」が甘いと、硬いサイディングの実同士が噛み合わず、浮いてしまったり、施工後に歪みによる割れが発生したりします。これはDIYレベルで対応できる技術ではありません。

最も恐ろしい「雨仕舞い」と保証のリスク

さらに深刻なのは、目に見えない部分でのリスクです。外壁工事で最も重要なのは、仕上げの板を張ることではなく、その下にある「雨仕舞い(あまじまい)」です。

特に窓周りや換気扇などの貫通部は、透湿防水シートの重ね順序や、防水テープの圧着方法を一つでも間違えると、確実に雨漏りします。

コーキングレスサイディングは継ぎ目からの浸水リスクを構造的に許容する工法であるため、この「二次防水(防水シートの施工)」の不備は、即座に壁内腐食やシロアリ被害に直結します。

(参考:日本透湿防水シート協会 共通施工仕様書|日本透湿防水シート協会

メーカー保証も対象外に

多くの外壁材メーカーは、認定施工店以外による施工や、DIYによる施工を製品保証の対象外としています。

「数万円の施工費を浮かせようとして、数年後に数百万円の雨漏り修繕費がかかる」という最悪のケースを避けるためにも、外壁という家の「殻」を守る工事だけは、実績のあるプロにお任せいただくことを強くおすすめします。

DIYでできる範囲と、プロに任すべき範囲の境界線については、『外壁のコーキングをDIYで!増し打ちのやり方とできない条件をプロが解説』の記事でも詳しく解説しています。

メンテナンスで見る塗り替え費用の真実

「コーキングレスサイディングはメンテナンスフリーだから、将来お金がかからない」

営業担当者からそう聞いて安心されている方は非常に多いのですが、現場を知る私から申し上げると、これは大きな誤解です。正確には「シーリング(コーキング)の打ち替え頻度は減るが、外壁塗装が不要になるわけではない」というのが真実です。

実は、コーキングレスサイディングの塗り替え(再塗装)は、一般的なサイディングよりも施工難易度が高く、場合によっては塗装費用が割高になるという、あまり知られていないデメリットがあります。

ここでは、なぜ費用が高くなるのか、その技術的な理由を解説します。

「30年耐久」の落とし穴と美観の維持

多くのメーカーが「30年耐久」「変色・褪色保証」などを謳っていますが、これはあくまで「著しい変色や基材の破損」に対する保証であり、「30年間、新築時のようにピカピカで汚れがつかない」ことを約束するものではありません。

どんなに高機能な外壁材であっても、紫外線や雨風にさらされれば、経年劣化で以下のような症状が必ず発生します。

  • 表面の塗膜劣化による色あせ
  • 排気ガスや埃による汚れの付着
  • 日当たりの悪い面でのコケや藻の発生
  • 手で触ると白い粉がつくチョーキング現象(白亜化)

これらを放置すれば美観を損なうだけでなく、基材そのものを傷める原因となります。そのため、色あせやチョーキング、汚れなどの劣化サインが見え始めた段階で「塗り替え」を検討する必要があります。

製品によっては「塗膜10年保証品は10〜15年」「塗膜15年保証品は15〜20年」など、メーカーがメンテナンスの目安を示している場合もありますので、確認しておくと良いでしょう。

継ぎ目の「毛細管現象」が引き起こす仕上がり不良

コーキングレスサイディングを塗装する際、現場で最も職人を悩ませるのが、あの特徴的な「継ぎ目(合いじゃくり部分)」の処理です。目地がないため、ローラーで一気に塗れると思われがちですが、実は逆です。

サイディング同士が密着している微細な隙間に、塗料が「毛細管現象」によって勝手に吸い込まれてしまいます。この状態で塗料が乾燥すると、どうなるでしょうか。

塗膜の破断(バリ)の発生

サイディングは気温の変化によってわずかに伸縮します。隙間に入り込んで固まった塗料(塗膜)は、この動きに耐えきれず、バリバリと汚く割れてしまいます。

その結果、継ぎ目のラインに沿ってギザギザとした汚い跡ができたり、逆に中途半端に埋まって黒い線が浮き出たりして、せっかくの美しい外観が台無しになってしまうのです。

「縁切り」作業による手間の増大とコストアップ

この「塗膜の割れ」を防ぎ、新築時のような美しい継ぎ目を再現するためには、非常に繊細な作業が求められます。

具体的には、塗装後に隙間に入り込んだ塗膜を、カッターや専用工具を使って一つひとつ手作業で切っていく「縁切り(えんぎり)」という工程、もしくは隙間に塗料が溜まらないように刷毛で拾っていく特殊な塗り方が必要になります。

家一軒分の無数にある継ぎ目に対してこの作業を行うのは、途方もない時間と労力がかかります。一般的なサイディング塗装と、コーキングレスの塗装工程を比較してみましょう。

工程一般的なサイディングコーキングレスサイディング
目地処理シーリング打ち替え
(専門職人が実施)
基本的に不要
(※窓周り等は必要)
塗装作業ローラーで効率よく塗装可能縁切り等の細かな手作業が必要
塗料だまりの除去に時間がかかる
費用傾向標準的手間賃(人工代)が加算され割高になる傾向

「シーリング代が浮くから安くなる」と思いきや、この「手作業の手間賃」が上乗せされるため、トータルのメンテナンス費用は期待したほど安くならない、あるいは逆に高くなるケースがあるのです。

プロからのアドバイス:早めのクリア塗装がお得

色あせが進行して「色をつける塗装(塗りつぶし)」が必要になると、上記のような継ぎ目の問題が発生します。

そのため、今のデザイン(柄)をそのまま活かせる無色透明の「クリア塗装」ができる段階(新築から10年〜15年以内、チョーキングが出る前)で早めにメンテナンスを行うのが、最もリスクが少なく、費用対効果の高い方法と言えます。

コーキングレスサイディングのデメリットまとめ

ここまで、現場担当者の視点から少々厳しい現実もお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

コーキングレスサイディングは、確かに継ぎ目のない圧倒的な美観と、素材そのものの高い耐久性を兼ね備えた、現代建築技術の結晶とも言える素晴らしい建材です。

私自身、施工後の仕上がりを見て「やはり美しいな」と感嘆することも多々あります。

しかし、ここまで解説してきた通り、決して「メンテナンスフリーの魔法の壁」ではありません。

地震時の揺れに対する構造的なリスク、万が一の破損時に発生する高額な補修費用、そして窓周りなどの防水管理といったデメリットは、カタログの小さな文字や営業トークの裏側に隠れがちです。

最終的にこの外壁材を採用するかどうかは、以下の基準で判断することをおすすめします。

コーキングレスサイディングが「向いている人」と「慎重に検討すべき人」を分けたチェックリスト。「デザイン優先」か「コスト効率・耐震性優先」かで比較されている。

コーキングレスサイディングが向いている方

  • とにかく外観の美しさ、高級感、デザイン性を最優先したい
  • 初期費用(イニシャルコスト)が高くなっても構わない
  • 将来のリフォーム費用も余裕を持って準備できる
  • 信頼できる熟練の施工店に依頼できる環境がある

慎重に検討すべき、または別の選択肢が良い方

  • できるだけ建築コストやリフォーム費用を抑えたい
  • 地震に対する建物の安全性(揺れの逃げやすさ)を重視したい
  • 「メンテナンスフリー」という言葉に過度な期待をしている
  • 近隣の騒音や雨音が気になる環境に住んでいる(金属系の場合)

「高耐久シーリング」という現実的で賢い選択肢

高耐久シーリングを使用したサイディングの拡大写真。耐震性とコスト
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

もし、「予算は抑えたいけれど、メンテナンスの手間も減らしたい」というご要望であれば、無理にコーキングレスにする必要はありません。

現在のスタンダードな選択肢として、「通常のサイディング」に「高耐久シーリング」を組み合わせる方法が、コストパフォーマンスと安全性のバランスにおいて非常に優れています。

例えば、オート化学工業の「オートンイクシード」などの高耐久シーリング材は、従来品よりも長期の耐久性を持つとされています。

また、メーカー純正の高耐久シーリング(ニチハ「プラチナシール」等)も同様に性能が向上しています。

もちろん、具体的な耐用年数は施工条件や環境によって変動するため、定期的な点検は欠かせませんが、従来の「10年で打ち替え」という常識を覆すほどの性能を持っていることは確かです。

これなら、初期費用を大幅に抑えつつ、メンテナンスサイクルを長くし、かつ地震時にはシーリングがクッションとなって建物を守るという「安心感」も確保できます。

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